【シネマモード】美しき映像交響曲…『グランドフィナーレ』

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『グランドフィナーレ』(C)2015 INDIGO FILM, BARBARY FILMS, PATHE PRODUCTION, FRANCE 2 CINEMA, NUMBER 9 FILMS, C -FILMS, FILM4
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圧倒的な映像体験とでも言いましょうか。パオロ・ソレンティーノの新作『グランドフィナーレ』は、これまでの作品同様にとても美しいものでした。

それは、映像自体の美しさと、それを高める音楽との調和がもたらす世界観が生む魔法のような124分。“21世紀の映像の魔術師”とも呼ばれる監督ですが、決して高尚なだけではなく、俗っぽい話が生みだす親しみやすい雰囲気もすべてまとめて、ソレンティーノ・ワールドに集約されているのです。悲喜こもごもの人間模様が混在しながらも、この映画がうっとりするような美しさを誇っているのは、ソレンティーノという監督が、人とは、人生とは、世界とは、美しいものだと捉えているからなのかなと思ったりして。

本作の主人公フレッドは、引退を決め、アルプスの高級リゾートに長期滞在している元作曲家にして指揮者。80歳になった今、かつての情熱はすっかり消え去り、おだやかな日々を送っています。そんな彼の元に、英国女王陛下から勲章の授与と、夫であるフィリップ殿下の誕生祝賀会への出演依頼が舞い込むのです。依頼内容は、フレッドが作曲し不朽の名作と謳われる「シンプル・ソング」を、BBC交響楽団とスミ・ジョーの競演で演奏したいので指揮してほしいというもの。ところが、この名誉あるオファーをフレッドは即座に断ります。自分は引退したからと。でも固辞の裏には、もっと大きな秘密があったのです。

セレブリティが集う高級リゾートが舞台なだけに、非日常ともいえる日常の様子は、とてもゴージャス。英国紳士のフレッドは常にジャケットを着用しているし、日替わりでフレンチから鮨まで、世界中の美味が供されるディナータイムは皆正装。スタイリッシュなアッパークラスたちのバカンスを覗き見られるのも魅力です。

でも、それは本作の魅力のほんの一部。コマ切れのようにも思えるエピソードが、小気味良く綴られていくのですが、それは夢のようでも現(うつつ)のようでもあり、時に区別がつきにくいことも。とはいえ、そんなディテールの積み重ねも、すべて最後に来る“グランドフィナーレ”へと向けたもの。そこには、クラシック音楽の影響を強く感じずにはいられません。

強く音楽と結ばれた者が、職業としての音楽家を引退したからといって、心の中の音楽を消し去るなんてできるはずもありません。フレッドは、カウベルをつけた牛たちをオーケストラに見立てて指揮してみたり、飴の紙をこすりあわせてメロディを奏でてみたりと、どこまでいっても音楽家。そんな彼が、人生の結論へと向かうべく葛藤する様を描いた本作は、音楽的でないはずがありません。

例えるなら、本作は交響曲。交響曲は原則として4つの楽章から構成されますが、そこには速さや趣の違った楽章が用意されています。最初は華やかに始まり、次はゆっくり、3番目は終わりへと向けて勢いを取り戻し、最終楽章で大団円、つまりクライマックスを迎えるというのが定番のパターン。いわば、起承転結があるのです。素晴らしい交響曲は、ひとつの曲の中で、愛や苦悩、生命や宇宙を表現し、それらを密かに表現する主題と呼ばれるメロディが、それぞれの楽章の中で生まれては消え、融合しながら、最後にはひとつの結論へと集約されていきます。その展開が、まさに本作の主人公が劇中で経験する、愛と葛藤、悲喜こもごも、そしてそれらを経て答えを導き出す様と見事に呼応するのです。

そんなことを考えつつ観ていたら、迎えるグランドフィナーレがいったいどんなものなのか、どきどきせずにはいられませんでした。それはまるで、大迫力のシンフォニーを聞いているときのあの高揚感そのもの。ぜひスクリーンで観て、その大団円に浸って欲しい一作です。
《text:June Makiguchi》

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