【MOVIEブログ】この秋の日本映画

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『怒り』(C)2016 映画「怒り」製作委員会
  • 『怒り』(C)2016 映画「怒り」製作委員会
  • 『淵に立つ』- (C) 2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMA
  • 『オーバー・フェンス』(C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会
  • 『永い言い訳』(C)2016「永い言い訳」製作委員会
久々の投稿となってしまいました。

2016年も残り2か月余りとなりましたが、
今年は日本映画が豊作の年だと感じています。
特にこの秋、面白い日本映画を立て続けに観ましたので、
その中から4本をご紹介したいと思います。
どの映画もまだ公開中ですので、観ていない方はぜひ劇場で!


『怒り』
人間は弱い。これを徹底的に突きつけられて心を抉られた。人を信じること。信じたくても信じられないこと。東京、千葉、沖縄。3つの土地の力がみなぎる強烈なカットの連なり。本作は編集がとても効果的で、3つの物語が細かくランダムにつながってリズムを生み、やがて大きな1つの波のように観客に迫ってくる。宮崎あおいの繊細さ、広瀬すずの勇気、妻夫木聡の情けなさ、綾野剛の優しさ、森山未来の獣性、松山ケンイチの不透明さ、見事なまでに“普通”の父親だった渡辺謙。主役クラスの彼らの演技がとにかく圧巻で、役者の力が、原作を超えるほどまでに映画を高めたと言っていいだろう。登場人物たちの弱さが自分の弱さと共鳴して、とにかく涙が止まらなかった。

『淵に立つ』
こんなに怖ろしい映画は久々に観た。夫婦と一人娘の三人家族。とある平凡な家庭に謎の男が現れ、不穏な物語が動き始める。日常に突如紛れ込んでくる異質な存在。浅野忠信演じる、この男の正体がしだいに明らかになり、幸せな家族の形が揺らぎ始めていく。いや、この家族はもともと壊れかけていたのかもしれない。“家族とは不条理なもの”と語る深田監督の鋭いまなざし。家族や夫婦だからこそ言えない過去。秘密。本音。自分の心の奥底に秘めたグレーでいびつな感情を共有して生きるか、胸にしまったまま生きるか。家族や夫婦でもすべてを理解し合えるわけがない。そんな“人間らしさ”が凝縮した本作は震えるほど面白い。たびたび画面に登場する赤色。異質な存在を表す、この鮮烈な「赤」が脳裏にこびりついている。

『オーバー・フェンス』
蒼井優演じる“聡”という男みたいな名前のヒロインが、どうにもとっつきにくい性格の強烈なキャラクターで、オダギリジョー演じる主人公と共に彼女に翻弄されながら映画を見進めていく。「もう嫌だ」「めんどくさい女だな」と敬遠しながらも、同時に彼女のことがほっとけなくなる。蒼井優の演技は花火のように激しくて、儚くて。彼女のダンスに応えて男が一緒に踊る場面があまりに微笑ましく、このシーンだけでもう映画自体が愛おしくなっていた。人生悪くないかもと思わせてくれる爽やかな結末も心地良い。

『永い言い訳』
本木雅弘演じる主人公の作家は自分自身を最低な人間だと自覚している。世間からの評判や周囲の目を気にして、虚勢を張っている弱い人間だ。誰も愛することができず、誰からも愛されない。そんな寂しい男が、妻の死を経て、幼い2人の“他人の”子どもたちと触れ合うことで、少しずつ変わっていく。子どもとはいえ、久々に他人から必要とされて、あらためて人生を見つめ直す主人公。大人になるにつれて他者との関係を築くことが億劫になってきた自分には、とても刺さる映画だった。人間の愚かさと弱さを包み隠さずまっすぐに捉える監督の視線は意地悪だけど、やさしい。


その他、1年を振り返ると、ほんと好きな映画が多かったです。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』『64-ロクヨン-前編/後編』『FAKE』『ヒメアノ~ル』『団地』『シン・ゴジラ』『だれかの木琴』などなど。空前の大ヒットとなった『君の名は。』も面白かったし、『セトウツミ』(自分の宣伝作品ですが)ももちろん最高ですし。これから公開の『アズミ・ハルコは行方不明』『この世界の片隅に』『溺れるナイフ』なども楽しみ。今年の邦画はベストテン10本に絞るのが大変そうです。
《text:Shinpei Oguchi》

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