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【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭 Day10

26日、金曜日。順調に6時半起床、朝食を頂いて外へ。爽やかに青空が広がり最高に気持ちがいい。カンヌもいよいよ終盤とはいえ、まだまだ上映はあるので、気を引き締めながらメイン会場に向かう。

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26日、金曜日。順調に6時半起床、朝食を頂いて外へ。爽やかに青空が広がり最高に気持ちがいい。カンヌもいよいよ終盤とはいえ、まだまだ上映はあるので、気を引き締めながらメイン会場に向かう。

本日はコンペ上映からのスタートで、8時半からファティ・アキン監督新作『Into the Fade』。ダイアン・クルーガー扮する妻が、突如身に降りかかる不幸と戦う物語。娯楽映画の体裁で、いや娯楽映画が悪いわけではもちろんないけれど、ほかのコンペ作品が(評価は割れるにしても)何とか芸術的な高みを目指そうとしているものばかりである中で、本作はいかにも刺激に欠ける。

あれ、ファティ・アキンってこんなもんだったのか? と今年のカンヌのコンペで初めての失望を覚えてしまった。もっとも、異なる時と場所で見ていたら普通に喜んでいた可能性もあるので、何とも微妙なところではあるけれど。カンヌのコンペという場所がいかに異常で特殊なのかということなのかもしれない…。

というのも、昨日僕が見て普通に感銘を受けたコンペ作『Rodin』の評判が、どうにも芳しくないみたいだ。そうなのか? カンヌの波に溺れて自分の判断力が鈍っているのか、少し自信を無くして深く考えてみる。いや、悩んでもしょうがない。ドワイヨンは響いたし、ファティ・アキンは響かなかった。いまのところはそれで良しとしよう。

次の予定まで時間が空いたので、いったんホテルに戻り、ミーティングで溜まった資料を抱えてマーケット会場に行き、国際宅配便で日本に送る手続きを済ませる。マーケット会場はもはや無人で、一足早く祭りの後を思わせて寂しい。閑散とした喫茶スペースでコーヒーを飲みながら鑑賞ノートをせっせと書く。

13時に上映に戻り、コンペの追加上映でロシアの『A Gentle Creature』へ。監督はウクライナ出身のセルゲイ・ロズニツァ。服役中の夫に送った荷物が届かず戻ってきてしまうので、直接渡すべく刑務所に赴く妻が経験する不条理な旅を描く物語。ロシアのディープな暗部を執拗にさらけ出す展開で、カフカやドストエフスキーを彷彿とさせる文学的な香りも豊かなのだけど、これはかなりの難解作だった。一部とても腹立たしい箇所があったので、上映直後の感想は最低だったのだけど、少し時間を置いて考えてみると違う思いも湧いてくる気もする。よって、評価は保留。

続けて16時半から「ある視点」部門でブルガリアの『Directions』。タクシー・ドライバーもの(『ナイト・オン・ザ・プラネット』的な)で、ソフィアの町を流す数々のタクシーと乗客のドラマを描き、現在のブルガリアが抱える闇を照らし出す作品。それほどサプライズは無いけれど、まずまず堅調な仕上がりか。

上映終わり、「監督週間」の会場に移動し、19時から同部門のクロージング・セレモニーを見てみる。発表された作品賞の『The Rider』を見逃しているので、地団駄を踏む…。

セレモニーに続いて、「監督週間」のクロージング作品的位置付けの『Patti Cake$』(写真)の上映。サンダンス映画祭で話題になったアメリカ映画で、数年前の『セッション』がそうであったように、「監督週間」は最後に痛快なアメリカ映画を持ってくるのが慣例化しているみたいだ。

そしてその痛快さは今年も裏切られることが無かった!『Patti Cake$』は、ニュージャージーでくすぶる20代前半の少し(というかかなり)太めの女性がラッパーを目指して奮闘する物語。まさに「サイタマノラッパー・ニュージャージー編」だ。夢と挫折と救いと希望とが(いい意味で)教科書通りに展開し、とても気持ちがいい。上映後には割れんばかりの大喝采。サイコー。

本日最後は22時半から「監督週間」のマーケット試写でコロンビアの『The Dragon Defense』。チェスをモチーフに、くたびれた中年男性たちの姿を愛おしく描き、好感の持てる小品。

ホテルに戻り、買ってあった(賞味期限が2日過ぎていた…)にんじんサラダを食べ、いささか手抜き(ごめんなさい)で短めなブログを書き、そろそろ2時。ダウンです。
《矢田部吉彦》

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