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俳優やプロデューサーとして大活躍、進化し続けるビビアン・スーの現在地

昨年末、約20年ぶりに日本の歌番組に登場して話題になったビビアン・スー。台湾で俳優、歌手としてマルチに活躍し、今やそのエンターテインメント界に確固たる地位を築いている。主演映画『ママボーイ』が日本公開を迎えるにあたり、彼女のキャリアを振り返ってみたい。

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『ママボーイ』(C)2022 Filmagic Pictures Co.
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  • Netflixシリーズ「華燈初上 -夜を生きる女たち-」独占配信中
  • ビビアン・スー Photo by Feng Li/Getty Images

昨年末、約20年ぶりにユニット「ブラックビスケッツ」を再結成し、日本の歌番組に登場して話題になったビビアン・スー。1990年代後半に日本のバラエティ番組で活躍していた彼女をリアルタイムで見ていた視聴者からは、当時を懐かしむと同時に、あの頃と変わらないキュートさに驚く声がSNSにあふれた。

弾ける笑顔でキレのいいパフォーマンスを見せたビビアンも、今やアラフィフの大人の女性。日本で姿を見なくなっていた間も、台湾で俳優、歌手としてマルチに活躍し、今や台湾のエンターテインメント界に確固たる地位を築いている。そんな彼女の主演映画『ママボーイ』が日本公開を迎えるにあたり、これまでのキャリアを振り返ってみたい。


日本でのブレイクがキャリアの転機に


台湾の原住民タイヤル族の母親と、客家人の父親の間に生まれたビビアン。幼い時に両親が離婚し、母親のもとで姉弟と育つ。10代の頃から一家の大黒柱として働いてきた苦労人だ。

14歳で芸能界入り。アイドルグループ「少女隊」のメンバーとして活動するが、決して順調な滑り出しとは言えなかった。その後、ヌード写真集やセクシー路線の映画に出演して人気を博すも、方向性に悩んだ彼女は、活動の場を日本に移すことにする。

その後の日本での活躍はご存じのとおり。バラエティ番組に出演し、まだおぼつかない日本語で芸人たちのつっこみを切り返し、懸命に笑いを取ったり、さまざまな無茶ぶり企画に取り組んだりと、そのひたむきで天真爛漫なキャラクターが大人気に。番組内で南原清隆、天野ひろゆきとユニット「ブラックビスケッツ」を結成し、発売したシングル「STAMINA」「Timing」が大ヒット。紅白歌合戦にも出場し、その人気は台湾にも伝わった。


歌手、俳優として台湾でマルチに活躍


「ブラビ」の楽曲が台湾でも大ヒットし、「日本で成功したタレント」として台湾でも人気に火がついたビビアンは、2003年前後から再び活動の軸を台湾に戻す。

ビビアン・スー Photo by Feng Li/Getty Images

台湾に戻ってからは、歌手活動のほか俳優としても活躍。東京国際映画祭でも上映された映画『靴に恋する人魚』(2005)や『ジュリエット』(2010)など数々の映画やドラマに出演。また、アジア中で絶大な人気を誇るシンガーソングライターのジェイ・チョウ(周杰倫)ら人気ミュージシャンの楽曲で作詞を担当するなど、多彩な活躍を見せる。

そして2014年、シンガポールの海上物流会社マルコ・ポーロ・マリーンのCEOショーン・リー氏と結婚。体調が安定せず、4か月以上もベッドの上で寝たきりで過ごすというつらい妊娠期を乗り越え、40歳で息子ダルトン君を出産する。

中華圏のスターの中には、実業家と結婚すると公の場から遠のいていく女性が多いが、ビビアンは子育てをしながらシンガポールと台湾を行き来し、ワーカホリックに働き続けた。「女性は経済的に自立しているべき」という考えを現地メディアのインタビューで語っているビビアン。お金に苦労した少女時代の経験が、現状に安心するということをさせないのだろう。そのメンタルの強さは、2016年に夫の会社が経営難に陥り、倒産の危機に面した時も発揮され、ビビアンはポジティブ思考で夫を支えて夫婦でピンチを乗り切っている。


女性たちにエールを送る作品をサポート


近年、最も順調なのが俳優としてのキャリアかもしれない。

2018年には、台湾の大ヒットホラー『紅い服の少女』の外伝として作られた『人面魚 THE DEVIL FISH』に主演。精神を病み、さらに悪霊に取り憑かれてしまうという難しい役に挑み、台北映画祭の主演女優賞にノミネートされた。そして2020年、同年の台湾映画最大のヒット作となった『弱くて強い女たち』(Netflix配信中)には、メインキャストのひとりとして出演。さらにプロデューサーとしても名を連ねている。

音信不通だった父親の死の知らせを受けた娘3人と、飲食店を経営して彼女たちをひとりで育て上げた母親。自分たちを捨てた父親の葬儀のために集まった母娘の前に、父親の晩年に寄り添った女性が現れて…というストーリー。ビビアンは美容外科医として成功した次女を演じ、その自然体の演技が絶賛された。

監督から脚本を渡されたのは、ビビアンが幼い頃に家を出た父親を亡くしてほどないタイミングだった。偶然にも、彼女の父親のそばにも晩年付き添っていた伴侶がいたといい、劇中に描かれる父親の不在が母娘に及ぼす影響にいたく共感したビビアンは、出演を快諾したばかりか、制作費の一部を出資することを決めたという。

彼女が協力を惜しまないのは、本作のように女性たちの生き方をテーマにした作品だ。

Netflixシリーズ「華燈初上 -夜を生きる女たち-」独占配信中

2021年には、1980年代の台湾の日本人向けスナックを舞台に繰り広げられるホステスたちの人間ドラマを描き、高く評価されたサスペンスドラマ「華燈初上 -夜を生きる女たち-」(Netflix配信中)にゲスト出演。三部構成のうちの第二部で、主人公が経営するスナックの前任ママ役を演じた。本作はビビアンの親友でもある俳優ルビー・リンのプロデュース作。短い出演シーンながら、華やかな美貌で場面を制する見事なママぶりで、親友の勝負作に花を添えた。

現在、「#MeToo」の波が再び押し寄せ、さまざまなセクハラ疑惑が明るみに出て揺れに揺れている台湾の芸能界。ビビアンもDV被害者救援のチャリティ・アンバサダーを務めるなど、弱い立場にある女性たちにエールを送る活動に力を入れているが、それも若い頃の苦労を考えると自然な成り行きに見える。


俳優として円熟味を増す


そして、最新主演作が映画『ママボーイ』だ。本作では、30歳で恋愛経験ゼロの主人公が恋い焦がれる大人の女性を好演した。相手役は、『あの頃、君を追いかけた』(2011)で一躍人気者になり、昨年『黒の教育』で監督デビューを果たしたクー・チェンドン。監督は『台北の朝、僕は恋をする』などのアーヴィン・チェン。

熱帯魚店で働くシャオホンは、過保護な母親とふたり暮らし。ある日、“童貞卒業”を急かす従兄に連れられて売春をあっ旋するホテルに行ったシャオホンは、女性たちの元締め的存在であるララ(ビビアン)に出会い、心引かれる。足繁くホテルに通うようになったシャオホンだったが、やがて母親の知るところとなり…。

ララとビビアンの共通点は、「自立した女性であり、自分で愛を選び取る権利を持っていること」と台湾メディアのインタビューで語っているビビアン。ただ大きく違うのは、「その日暮らしのララと違い、自分は目標に向かって計画を立て、新しいことを学び続けるタイプ」という点だそう。

彼女のキャリアをたどってみると、“進化”が重要なテーマであることに気づく。

2020年には世新大学の上海学院でMBAを取得。その際、テーマにしたのは、なんと“自分”。インターネット時代に芸能人はどう方向転換を図るべきか、自分を例に考察したもの。これには台湾でも「自分をテーマに論文?」と賛否両論巻き起こったが、常に自分をアップデートしなければという、それほど強い思いが彼女の中にあるのだろう。波瀾万丈の半生をポジティブに歩んでこられたのは、現状にとどまることを許さない自分への厳しさと、笑顔の下に隠されたたゆまぬ努力がベースにあるから。そんな経験の数々が、いい具合にその顔に刻まれ、唯一無二の美しさを形作っているのだと思う。

今月3日には東京都内でファンミーティングを開催したビビアン。これからは日本でも、進化を続けるその姿をもっと頻繁に見せてほしい。

《新田理恵》

趣味と仕事が完全一致 新田理恵

大学卒業後、北京で経済情報誌の編集部に勤務。帰国後、日中友好関係の団体職員などを経てフリーのライターに。映画、女性のライフスタイルなどについて取材・執筆するほか、中国ドラマ本等への寄稿、字幕翻訳(中国語→日本語)のお仕事も。映画、ドラマは古今東西どんな作品でも見ます。

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