江戸後期、北の小国、海坂。不幸な結婚生活に耐えながら暮らす野江(田中麗奈)は、叔母の墓参りの帰り、山道に咲く山桜を見つける。その美しさに惹かれ、薄紅色の花に手を伸ばすが、思いのほか高くて届かない…。すると、野江の背中に「手折ってしんぜよう」という男の声が響く。たった一度の出会いが、2人の男女の運命を揺るがしていく――。藤沢周平の短編小説を映画化した、本格時代劇。
篠原哲雄
数ある映画のジャンルの中でも、日本固有のものとしていまも昔も人々の心をつかんで離さない時代劇。今年は特に、人気の俳優をキャストに配して様々な時代背景を舞台にした時代劇の話題作が目白押しとなっている。衣裳に小道具に作法に…と現代劇とは異なる多くの要素を必要とする時代劇の中で今回、“ちょんまげ”をピックアップ! 巷では某誌の発案をきっかけにいま“まげメン”——すなわち、ちょんまげを結ったイケメン男性を指す言葉まで存在するとのことですが、読者の投票を基にした「ちょんまげが最も似合う俳優ランキング」を大発表!
没後10年を経たいまでも高い人気を誇る藤沢周平の時代小説。中でも珠玉の名作と名高い短編「山桜」(新潮文庫「時雨みち」に所収)が映画化され、5月31日(土)に初日を迎えた。江戸後期の庄内・海坂藩を舞台に、嫁ぎ先になじめず辛い思いをしている女性・野江と、正義感と誠実さにあふれる武士・手塚弥一郎がたどる“幸せへのまわり道”を描いた『山桜』の初日舞台挨拶が行われ、野江役の田中麗奈、弥一郎役の東山紀之、そして篠原哲雄監督が登壇した。