妻になんて言おう。最初によぎったのはそんな想いだった。三村修治。職業、バラエティ番組の放送作家。12本ものレギュラーを抱え、このところ忙し過ぎるとは思っていた。感じた異変。検査を受けて下されたのは驚くべき診断だった。すい臓がん。しかも末期。余命6か月。1日でも長く延命し家族と静かに過ごす。それこそが正しい最期の過ごし方。だが。どうも面白くない。放送作家として修治は、いままでずっと世の中の色々なことを好奇心で『楽しい』に変えて来た。そんな思いから、あれこれ企画を練り始める。家族に遺せる『最期の企画』。現在、妻・彩子は専業主婦。まだ小学生の息子、陽一郎を抱え苦労するだろう。そして気丈そうに見えてもろいところがある。何とかして笑顔にしてあげられないか?見かけたのは結婚相談所の看板。振り返る花嫁。そうだ。修治は思いつく。自分がいなくなっても、妻が前向いて進めるように。『妻の結婚相手を探そう!』
三宅喜重