ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔⺟の影響から、芸術に親しむ⽇々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩した叔⺟は強制⼊院の果て、安楽死政策によって命を奪われる。終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーと恋に落ちる。元ナチ⾼官の彼⼥の⽗親こそが叔⺟を死へと追い込んだ張本⼈なのだが、誰もその残酷な運命に気付かぬまま⼆⼈は結婚する。やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと⻄ドイツへと逃亡する。晴れて美術学校で創作に没頭するが、教授から作品を全否定され、もがき苦しむ。だが、魂に刻む叔⺟の⾔葉「真実はすべて美しい」を信じ続けたクルトは、ついに⾃分だけの表現⽅法を発⾒し新作を完成させる。それは、罪深い過去を隠し続けた義⽗を震え上がらせる作品でもあった―。
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク