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『しあわせのパン』原田知世 「自分を見つめなおす、そのためにこの映画に出会った」

「ただお芝居をして作品に参加するだけではなく、自分の人生を見つめ直して、自分が抱いていたものを確認する──そのために私はこの映画に出会ったんじゃないか、そう思えて仕方ないんですよね」。やさしい物腰で、透明感ある声で、映画『しあわせのパン』が運んできた“しあわせ”を丁寧に語り出す女優・原田知世。40代を迎えてもなお、可憐な、可愛いという言葉を添えたくなる、女性も憧れる素敵な女性だ。彼女が主人公・りえさんを通じて感じたもの、伝えたいもの、また彼女自身の結婚観や幸せの感じ方には“しあわせ”がたくさん詰まっていて、話を聞けば聞くほど好きになってしまう。原田さんが纏う“しあわせ”力を紐解いてみた。

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『しあわせのパン』 原田知世 photo:Yoshio Kumagai
『しあわせのパン』 原田知世 photo:Yoshio Kumagai
  • 『しあわせのパン』 原田知世 photo:Yoshio Kumagai
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「ただお芝居をして作品に参加するだけではなく、自分の人生を見つめ直して、自分が抱いていたものを確認する──そのために私はこの映画に出会ったんじゃないか、そう思えて仕方ないんですよね」。やさしい物腰で、透明感ある声で、映画『しあわせのパン』が運んできた“しあわせ”を丁寧に語り出す女優・原田知世。40代を迎えてもなお、可憐な、可愛いという言葉を添えたくなる、女性も憧れる素敵な女性だ。彼女が主人公・りえさんを通じて感じたもの、伝えたいもの、また彼女自身の結婚観や幸せの感じ方には“しあわせ”がたくさん詰まっていて、話を聞けば聞くほど好きになってしまう。原田さんが纏う“しあわせ”力を紐解いてみた。

映画の舞台は、北海道の洞爺湖のほとりにある小さな町・月浦。そこでパンカフェ“マーニ”を営むりえさん(原田知世)と水縞くん(大泉洋)、カフェを訪れる人たち、彼らの心温まるドラマが描かれる。中心となるりえさんと水縞くんは、理想のパートナー像として観客のハートをギュッとつかむだろう。原田さんも「こんな旦那さま、本当にいるのかしら? って思うほど、水縞くんは素敵。彼の深い愛に心打たれました」と微笑みながら、その素敵な理由を語る。

「私の演じたりえさんは、とても繊細な気持ちを持っている女性。子供から大人へ成長する過程の多感な時期に、いろいろなことを敏感に感じていたんじゃないかなと思うんです。月浦へ行く前は、東京で仕事をしていたけれど、決して器用でもなくて。多分、自分が大事にしているものを何年も使うような人なんでしょうね。だから、あるひとつの出来事で心が折れたのではなく、いろいろなことが重なって、子供の頃から追い求めていたマーニ(絵本に登場する男の子)、私のマーニはどこにもいないんだ…と、孤独を抱えるようになってしまうんです」。

そんな彼女に「月浦で暮らそう」と、すっと手を差し伸べるのが水縞くんだ。彼の愛は無償の愛だと原田さんは言う。「無償の愛って親子の間ではあっても、夫婦の間ではなかなか難しいものですよね。でも、りえさんにとって水縞くんは運命の人で、水縞くんにとってもりえさんは運命の人。特に水縞くんはりえさんを愛することが、ひとつの使命と言えるほどの深い愛を持っているんです。本当に理想の男性。実際はなかなかいないですけどね(笑)」。さらに、撮影後に監督(三島有紀子)自ら書き下ろした同名小説を映画鑑賞後に読むことで、「そこには、水縞くんがどういう気持ちでりえさんを見つめていたのかが書かれていて、涙が止まらなかった…。もしも水縞くんが自分の旦那さんだったら、一生大切にしようって思いました」と声をふるわせる。

りえさんの気持ちを深く理解し、どこまでも寄り添うことができたのは、「一生大切にしたくなる」理想の男性・水縞くんを演じた大泉さんの存在も大きかった。「すごく勘が鋭くて、頭の回転が早くて、一瞬で多くのことを本能的につかみとることのできる人。後半、水縞夫妻が向き合って芝居をするシーンがあるのですが、セリフがほとんどないんですね。けれど、いま2人の心がつながったね、つながったよね、という瞬間があったりして。監督の指示で、りえさんの心が陰る芝居をしたときも、大泉さんは瞬時にその陰りを察知して水縞くんの芝居に取り入れていましたから」。相手を常に見つめていないとできない演技、まさに自然体の演技だ。夫婦でありながらも丁寧語という一見違和感のありそうな会話も、りえさんと水縞くんだと違和感ではなく相手を尊重する証、大切に思う証として映し出される。

「月浦で感じたもの、いただいたものがそのまま栄養になって、映画に注がれている気がします。私も大泉さんも、あの場所だから演じられた表情があると思うんです」。月浦の自然あふれる環境、月浦の美しい景色、それらの不思議な力も役作りの核となった。「同じ景色なのに、光によって時間帯によって景色が変わっていくんです。そういう中にいると、ふだん使っていない動物の本能というか、眠っていた感覚が研ぎ澄まされて、小さな変化に気づけるようになるんですよね。心静かに自分を見つめることもできた。肩の力を抜いて、いま起きていることをしっかり見て感じることが、芝居につながると思えたんです」。

月浦での感覚はやはりその土地だからこその感覚であり、撮影後、慌ただしい街・東京へ戻ってきた原田さんの心は、しばらく「ざわざわしていた」と表現する。

「月浦に心を置き忘れてきたんじゃないかしら? と思うほどの脱力感があって、“社会復帰”するのが大変でした。しばらくして、東京でこの作品に関わった方たちと会ったとき、みんなもざわざわしていたって言うので、私だけじゃなかったんだと(笑)。東京にいると、いくつもの仕事や物事を同時にこなさなくてはならなくて、目の前のことに集中しているようであっても、頭の中では同時進行でいくつも考えごとをしている。おまけにあふれんばかりの情報が次々と入ってきますからね。けれど、月浦ではじっくりと腰を据えて映画のことだけを考えていた。だから、みんなの顔がものすごくやわらかだったんです。東京に戻ってきたら、都会の顔に戻っていましたけど(笑)」。

そのやわらかな表情を失わないためにも、一日に1度、ほんの少しのリフレッシュ時間を持つことが大切だという原田さん。そう、映画の中でりえさんが、ゆったりとコーヒーを淹れるときのように…。「慌てないでじっくりコーヒーを淹れるだけで、味も気分も違ってくるもの。この映画はそういう大切な時間を思い出させてくれる映画でもあるんです。映画を観て、泣きました…という声をいただくのですが、その涙は、頑張っている人が、そっと温かな毛布にくるまれる感覚というか、優しいものに触れたときの涙。決して悲しい涙ではないんですよね」。

もちろん、優しい涙が流れるのは、りえさんを演じているのが、素敵に年齢を重ねている原田さんだからこそ。彼女の滲み出るしあわせ感が自然と共感へとつながるのだろう。彼女の歩んできた道、そこにも運命の出会いはあった。

「もともと結婚願望はそれほど強くなくて、30代後半になっても、自分が結婚するとは思っていなかったんです。それが、彼(エドツワキ氏)と出会って、この人となら一緒にいたい…と自然に思えた。だから、出会って半年でしたが、自分の直感を信じて(2005年5月に)結婚しました。この映画にも老夫婦が出てきますが、あの夫婦のように、この人と年を重ねていきたい、そう思える相手じゃないと。恋愛感情はずっと熱いままではいられないし、結婚した後の方がずっとずっと長いですからね(笑)。一緒にいて楽しいと思える人、無理をせず自然体でいられる人、それが私にとっての理想のパートナーです」。やさしさや透明感だけではない、原田さんのこの凜とした生き方、そこに私たちは惹かれるのだろう。これからもずっと──。


Hairmake:Moe Kogure(+nine)/Stylist:Junko Okamoto(Afelia)
《photo:Yoshio Kumagai / text:Rie Shintani》

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