「環境を変えることによって、いろんなことが見えてくる」ナンシー・マイヤーズ監督『ホリデイ』インタビュー
「今すぐ、この環境から離れて気分転換がしたい」。仕事での失敗や愛する人との別れ、そして失恋など、誰もが一度は、こう考えたことがあるのではないだろうか? 『ハート・オブ・ウーマン』('00)、『恋愛適齢期』('03)のナンシー・マイヤーズ監督最新作『ホリデイ』は、恋に破れた女性たちが環境を変えることで、新しい恋を見つける大人のロマンスを描いた作品だ。
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「環境を変える」と言っても、なかなか難しいもの。本作でキャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレットが演じた女性たちは“ホーム・エクスチェンジ”という方法で全く新しい環境を手に入れる。この方法、マイヤーズ監督が実際に自分の休暇プランを考えていた時に思いついたそうだ。
「娘たちとのフランス旅行のプランを考えている時だったのよ。映画の中でキャメロンがやっているのと同じように、家を借りようと思って“バケーション・レンタル”って検索したら“ホーム・エクスチェンジ”というのが出てきたわ。最初は“エクスチェンジ(交換する)”というのはあまり頭になくて、とにかくいろんな家を見て、『いいじゃない!』ってやっていたんだけど、さすがに交換するのは…と思って私自身はやらなかったわ」。しかし、この体験が新しい映画の脚本を書くきっかけとなった。
「こういうホーム・エクスチェンジというのが他にもあるのかと思って“ホーム・スワップ”とか、いろいろ検索してみたのよ。とにかく世界中にいろんな家があるということが分かったわ。ちょうど映画の脚本を書き始めようとしていたところなんで、これはすごい面白いアイディアだと思ったの」
『プライベート・ベンジャミン』や『赤ちゃんはトップレディがお好き』など、マイヤーズ監督の書く脚本には、こうした“環境を変える”というシチュエーションが多い。
「そういう発想は常に持っているの。環境を変えることによって、いろんなことが見えてきたりすると思うのよね。私自身は子供がいるので、パッと環境を変えるようなことはなかなかできないのが残念だけど。でも今回、初めて日本に来て、いろんなものを見ることが出来たわ。ずっと同じ環境にいるのは退屈よね。新しいところに行くことによって、いろいろ学べる、自分も成長できると思うのよ」
と同時に、コメディの脚本を書く時のルールとしても“環境を変える”のは有効だと言う。
「例えば魚を、住み慣れた水から出してしまう。そうすると面白いシチュエーションが生まれるのよ。今回も、背の高いキャメロンをあんな小さな天井の低い家に入れてしまったわ。そういう不慣れな環境に置くことによって、いろんなおかしい事態が生まれるでしょ?」
そうなのだ。マイヤーズ監督は、シチュエーションだけでなくキャストについても、これまでのイメージを覆すようなキャスティングを実現させた。
「予想がついてしまうキャスティングは全然面白くないでしょ? 多くの人に観てもらうためにも、驚く要素をいろいろ入れたいもの。ジュード(・ロウ)は悪役とか暗い役が多い。でも彼はとても良い人だし、こういうラブコメもやってみたら似合うでしょ? キャメロンもああいうビジネス・ウーマン役はこれまでに、あまりなかったと思うのよね。ケイトは『タイタニック』とかいろんな作品で強い女性を演じているから、もっと弱々しい女性にしたの。それにジャック(・ブラック)! 実生活のロマンスってジュードよりも、ジャックの方がリアリティあるでしょ?」。なんとも心憎い配役だ。
最後に、次回作の構想について聞いてみた。
「まだ決まってないの。撮影が終わって、6〜8ヶ月の間は次の作品のことは考えないで過ごすのよ。その間に何かに触発されて、アイディアが浮かぶことが多いの。またインターネットで何か探した方がいいかしら?」