戦争という名の殺し合いのどこに正当性があるのか? 特攻隊員を演じた筒井道隆が語る

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『俺は、君のためにこそ死ににいく』 筒井道隆 photo by HIRAROCK
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先ごろ都民の圧倒的支持を受け、見事再選を果たした石原都知事。多忙を極める石原氏が、自ら脚本を執筆し、製作総指揮を務め上げた本作『俺は、君のためにこそ死ににいく』がいよいよ公開される。特攻隊として短い命を大空に散らした青年たち。そんな彼らを温かく実母のように見守り続けた1人の女性——鳥濱トメ。この実在した女性を物語の主軸に置き、数人の特攻兵たちのそれぞれの生き様を、美しくも残酷に描く本作は、決して単なる“美談”ではない。

そんな特攻兵の1人、田端紘一を鮮烈に演じた筒井道隆だが、実は「最初、“戦争映画”って聞いた時点では嫌だな〜と思ったんです…(笑)」と言うから意外だ。しかし単なる“戦争モノ”に括れない脚本の奥深さに感動し、出演を決めたとか。

「戦争映画に抵抗がある理由は、簡単に言うと、今の日本には戦争がないってことと、人が人を殺すのを見せて何の意味があるんだろう? っていう単純な疑問があるからです。極論ですけど、映画は楽しいものだけでいいって思ってるから。でも脚本を読ませてもらって、すごく感動したんです。何回読み直しても、胸にくるものがあった。それで、こんな考えの自分がこの映画に出させてもらう意味や、今のこの平和な時代だからこそ描けるものもあるんじゃないか? と考えさせられて」。

撮影は現在“特攻の聖地”と言われる、知覧で行われた。撮影が始まっても尚、筒井は当時の時代背景を調べることに余念がなかった。
「もともとそんなに知識が豊富な方ではなかったので、当時の資料や写真集を読みあさりました。あえて、全然関係ないことも調べたりしましたよ。例えば、彼らが乗っていた飛行機。あの飛行機の機体にはどんな物質が使われていたのかとか、どういう仕組みで動いているのかとか。あとは、あの時代にはどんな歌が流行っていたのかとか、流行していた言葉は何か? とか。そういう一見、どうでもいい知識を増やしていきたかったんです。だって、彼らも普通の男の子たちだったはずだから…。怖い上官がいないところでは普通に会話してただろうし、冗談も言ったはず。絶対、言ってますよね(笑)! 変に“選ばれし者たち!”とかじゃなく、ごくごく普通の青年たちだったと思うんです。そこを一番大事にしながら演じました。人間の本質や生き様は、今もこの当時も基本的に変わらないと僕は思います。それは撮影しながらも感じてたので、現場ではできる限り楽しく過ごそうと努力しました。現場はこういう作品だから、いつも和気あいあいという風でもなかったですけど、僕は“戦争映画”ってことに支配されたくなかったので、なるべくフラットな状態でいるようにしてましたね」。

「でもそんな普通の彼らが、たまたまこの時代に生まれて、たまたま友達が普通に死んでいく。それは本当にどうしようもなく悲しいし、腹立たしい」と怒りを隠さない。

「(特攻という)独特の高揚感にごまかされたら、ダメなんですよ。とにかく平たく言うと戦争なんて殺し合いなんですから、それのどこに正当性があるんだって話なんですよ」。穏やかな口調の中に、時折驚くほどの熱さを噴出させる筒井さん。「死ぬのは簡単だ」と言ってのける田端とダブる面を感じずにはいられないが…。
「田端は時代背景をよく理解していたと思う。この時代に命取りになるようなことをあえて“言う”ってことに、ある意味、命を賭けてますよね。反面、すごく冷静な男だとも思います」。

反戦への思いがひしひしと伝わってくる本作だが「確かにメッセージ性は強い作品ですが、僕からあえて“ここを観てほしい!”とかって言うことはありません。観てくれた人が、何かを感じてくれればそれでいいです」とニコリ。その清々しい笑顔は、俳優としての確かな自信と手ごたえを、十分に感じさせてくれるものだった。

《text:Kaoru Endo / photo:HIRAROCK》

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