泣けないからこそ胸に迫る。ホスピスを受ける癌患者を演じた津田寛治が新作を語る

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津田寛治 photo:HIRAROCK
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戦場カメラマンとして活躍するも、癌に冒され余命半年を宣告された上野和馬。和馬は最期に故郷・久留米に戻ることを願い、妻・由紀子も仕事を辞め共に久留米にやってくる。ホスピスを受ける患者、そして看病する家族の姿が淡々と、しかし温かく大きな感情の起伏を伴って描かれる『Watch with Me 〜卒業写真〜』。本作で主人公・和馬を演じた津田寛治に話を聞いた。

確かなリアリティを持って、死に直面した男を演じるというのは難しかったのでは、と思うのだが、撮影前の役作りの中心は別のところにあった。
「癌のことを調べてそういうドキュメントも観ましたが、撮影前に監督に『癌患者である前にカメラマンでいてくれ』と強く言われたんです。和馬のような戦場カメラマンというのは生に対する執着がものすごく強いそうなんです。戦場では死んでいく人間をたくさん見ることになる。だから、生と死を常に意識しているし、他の人以上に生きるための欲望が強い。だから、そこの部分を作ってほしいと言われました。それを聞いてから、カメラを買ったり、いろいろ調べたりしました。でも、その時点では監督のその言葉の本当の意味がよく分からなかったんです」。

確かに、映画にはカメラマンである和馬の姿は出てこない。それは、あくまでも設定だが…。
「でも撮影が始まると、気持ちがカメラマンでいることよりも、癌患者の方にものすごく引っ張られるんですよ。俳優業をやっていれば、ただでさえ重い役ですから、どう演じようかと考えなくても、そっちの方に気持ちがいってしまう。しかも監督は、現場に入ったら、カメラマンのことはさておき、病状が悪くなっていくリアリティをかなりつけてくださった。もっと呼吸はこうしてくれ、ああしてくれ、って。撮影前はカメラマンでいてくれ、入ってからは癌患者であることを事細かに演出されるんですよ。だから本当にどんどん癌患者に引っ張られるんですね。その逆の力としてカメラマンというか、そっちをしっかり作ってから入らないと引っ張られ過ぎちゃう、そういう意味だったんだな、と感じました」。

妻・由紀子を演じたのは刑事ドラマでも共演している羽田美智子。ドラマとは正反対のテーマを持つ作品だが大きな苦労もなく「相手が羽田さんで良かった」という津田さん。
「監督は、そのドラマをまるで見たことがなかったらしくて、本当に偶然だったんですよね。刑事ドラマの雰囲気が出ちゃうんじゃないかと心配になりましたが、監督は『僕にとっての羽田さんは映画女優としての羽田さんだから大丈夫』って。確かに、本当に羽田さんなくしてはありえない映画になりました。だって羽田さんじゃなきゃ、あの夫婦感はまずありえないですよ。連ドラの現場でも僕ら2人は“天然部”って言われているくらい(笑)。一緒にいてすごく楽なんですよね。だから、夫婦として演じるためのスタートラインがかなり高かった。作り上げなきゃならないものが初めから出来ていたので、そこからお互いにホスピスを受けるという状況に向き合えました」。

“生と死”を描いているが、今流行りの“泣ける映画”とは少し違う本作。確かに死に直面したカメラマン・和馬と、和馬を看病する妻の姿は胸に迫るものがあるが、ボロボロと泣いてしまうというよりも、むしろ泣くことが出来ない、そうした重みのある作品だ。
「そう言っていただけると嬉しいです。試写などで、『泣きました』って言っていただくんですけど、狙いはそこじゃないんですよね。本当に作っている段階から、お涙頂戴にしたくないというのがあったので、涙が出ない分、心に残ってもらえれば本望ですね」。

《photo:Hirarock》

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