歌う映画vol.2 歌う歓びをあなたにも

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『歓喜の歌』
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昨年末、生の「第九」の迫力に歓喜し、涙した私。今年の年末には、アレを実際に歌いたいと周囲に触れ回っています。そんな私、必見の映画を見つけて早速観てまいりました。

その名もズバリ『歓喜の歌』。歓喜の歌といえば、第九の最終楽章で合唱される、あのあまりにも有名な歌のことですね。シラーの歌詞とベートーヴェンのメロディが相まって…。ああ、考えるだけでも涙が出ます。第九とは、まるでベートーヴェンの人生そのもの。苦難を思わせる暗く重い旋律で始まりますが、それをなんとか乗り超えて最後には歓喜が突き抜ける。そのさまがなんとも感動的なのです。

でも、映画の方はさほどシリアスな物語ではありません。舞台はとある地方都市、みたま町。ある年末、町の文化会館でひと騒動持ち上がります。暮れも押し迫った12月30日、職員たちはある重大な過失に気がついてしまうのです。それは、“みたま町コーラスガールズ”と“みたまレディースコーラス”、2つのママさんコーラスのコンサートをダブルブッキングしてしまったという事実。そして、それが大トラブルに発展するのです。

当事者たちにとっては大変なことでしょうが、誰かの命に関わることではないがゆえに、その混乱ぶりがおかしいの何の。なんと言ったって、元は立川志の輔の創作落語。そのせいか、主演の小林薫の演技はちょっと大げさ気味ですが、それが案外ちょうどいい。安田成美、由紀さおり、根岸季衣ら、そのほかの人々のとぼけっぷりもなんとも心地よいのです。

笑いどころ満載の本作。ですが、ラストの合唱は素晴らしい。ベートーヴェンの人生を思えば、本作に登場するトラブルなどごくごく軽いものではあるけれど、人生の中で起きるいろいろなトラブルを最終的には味方につけて、しっかり歩んでいく人間たちの姿は美しいもの。そんな基本的な人間の逞しい精神こそ、第九の、そしてベートーヴェンの魂と重なるのです。

ちなみに、この物語は「第九」の歓喜の歌が登場するだけあって、年末の日本が舞台になっています。春に公開されるのは時期はずれではと思うかもしれませんが、年末に第九を演奏するというお約束があるのは、日本だけ。そもそも、1947年に、日本交響楽団(元・N響)が、12月に立て続けに3回の第九演奏を行い、好評だったことがきっかけとか。

私は落ち込んだときにはいつでも第九を聴きたい人。この伝統のせいで、年末以外には、日本で生の第九がほとんど聴けなくなっているのが恨めしや。年末だろうと、春だろうと、夏だろうとかまわない! いい曲はいつ聴いてもいいものだし、面白い映画はいつ観ても面白いもの。というわけで、この映画の舞台が年末であってもかまうことなし。日常の雑事に疲れたらぜひ、いつでも観てほしい1作なのです。

《text:June Makiguchi》

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