【シネマモード】VIVA! 秋のヨーロッパ映画!

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『プチ・ニコラ』 -(C)2009 Fidelite Films - IMAV Editions - Wild Bunch - M6 Films - Mandarin Films - Scope Pictures - Fidelite Studios
  • 『プチ・ニコラ』 -(C)2009 Fidelite Films - IMAV Editions - Wild Bunch - M6 Films - Mandarin Films - Scope Pictures - Fidelite Studios
  • 『プチ・ニコラ』 -(C)2009 Fidelite Films - IMAV Editions - Wild Bunch - M6 Films - Mandarin Films - Scope Pictures - Fidelite Studios
  • 『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語』 -(C) 2009Ascension Film Kortex Acajou Films
  • 『ミックマック』 - 2009 (C) EPITHETE FILMS -TAPIOCA FILMS -WARNER BROS. PICTURES -FRANCE 2 CINEMA -FRANCE 3 CINEMA
勝手なお話で恐縮ですが、9月は私にとってヨーロッパ月間です。1週間フランス出張にでかけ、間髪あけずにオーストリア・ドイツ・チェコ巡りのちょっと遅い夏季休暇を2週間。そんなわけで、頭の中もすっかり欧州風。コラムも、この秋に気になるヨーロッパ映画を特集することにしました。といっても、並べてみたら全部がフランス作品に。さすがは文化・芸術の国ですね。

まずは、『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督最新作『ミックマック』。タイトルになっているのは、“いたずら”という意味を持つ言葉。主人公は、父を戦争で亡くし、自分はある発砲事件で被弾し、頭に流れ弾が残ったままになってしまったビデオ・レンタルショップの店員・バジル。怪我をきっかけに全てを失ってしまった彼が出会うのが、廃品を回収してはユニークなモノに改造していく創造性豊かな人々です。そんな暮らしの中で、バジルはふとしたことからある目的を見出すのですが…。その目的を達成するために繰り出されるのが愉快ないたずらの数々というわけです。平和を願うピュアな心と、『アメリ』で見せた遊びゴゴロがたくさん詰まったこの作品。物語はシンプルなのですが、ディテールと小道具・大道具、独特の映像美という映画言語を巧みに使用して、作品を大きく大きく膨らませていくのです。特に面白いのが、相変わらずキャラが激しく立った面白顔の登場人物と、奇妙な改造品の数々。温かみがあって、どこか懐かしい美術や色彩にもジュネらしさがいっぱい。舞台は現代のパリですが、『アメリ』、『ロング・エンゲージメント』でアカデミー賞ノミネート、セザール賞受賞を果たしている美術監督アリーヌ・ボネットと共に、実にヨーロッパらしいレトロテイストの作品を創り上げてくれました。

実は、『ミックマック』のように、ちょっとした計画を実行しようとするあるグループを描いているのが、同じフランス作品の『プチ・ニコラ』。この作品に登場するのは、打って変わってとてもかわいい小学生たち。主人公は優しいパパとママと暮らしているニコラです。両親に愛されて幸せに暮らしているニコラですが、想像力が少々豊か過ぎ。母親が妊娠したと思い込み、弟ができることの恐怖におののきます。そこで仲間たちとある計画を練り、実行しようと試みるのです。繰り広げるのは、的外れな計画に、ピントのずれた行動ばかり。その様子はキュートで滑稽。シャツにニットのベスト、そして半ズボンのいたずらっ子たちが、スクリーン狭しと暴れまわるのです。原作はフランスで50年間愛されてきたというルネ・ゴシニ作、ジャン=ジャック・サンペが描く国民的絵本「プチ・ニコラ」。子供らしい空想力と純真さにあふれた世界観に思わずにっこりしてしまいます。さらに、ニコラの視点で描写される大人たちのユニークなこと。絵本が原作だから子供向け映画などと決めつけないで、おしゃれでユーモアあふれる『プチ・ニコラ』の世界を存分に味わってみてください。

実は、昨年からフランスでは、本作公開にあわせて、様々な記念アイテムが発売されたそう。「プチ・バトー」からはニコラが劇中で着ていたパジャマや子供たちが身体測定の際に着ていたブリーフが、「ベルナルド」からはリモージュ焼きのテーブルウエアが、「クレールフォンテーヌ」からは筆記道具やペーパーのバッグが、それぞれキュートなニコラの絵つきで、日本でも発売されています。さすがはフランス。劇中の子供たちや、インテリア、大人のファッションもとびきり素敵。舞台となった1960年代のテイストは、きっと観る人の目も心もワクワクさせてくれるはずです。

ところで、この作品の中で気になったことがもうひとつ。それは朝食のシーンです。実は、つい数日前にフランス出張から帰ってきたのですが、そのときに体験したフランスの一般的な朝食というものをここでも見ることができました。宿泊は、大きなホテルではなく“Chambre d'hotes”(シャンブルドット)が多かったのですが、これは一般家庭の一部などをゲストルームにしている家庭的な宿のこと。イギリスならばB&Bといった感じの宿泊施設で、たいていは朝食がついています。そこで出されるのは、表面がぱりぱりのバゲットとコンフィチュールにカフェオレ、たまにフランスの一般家庭ではごちそうだというクロワッサンがついていることも…というメニュー。こう書くと随分質素な感じもしますが、パンがとても美味しいので、マダムお手製のフレッシュなコンフィチュール、香ばしいコーヒーがあればもうそれだけで大変豊かな朝の食事となるのです。ニコラの家の食卓にも、まさに私が体験した、そんな典型的な朝のメニューが乗っていました。大手のホテルでは、朝食と言えばビュッフェ形式で、目移りするほどのメニューが供されるところもありますが、美味しいパンがあったので今回はそれだけでも十分幸せでした。さすがは、パンを主食としている国。私たちの国にやってきた旅行者も、日本での炊きたての朝ごはんに、こんな幸せを感じてくれていたら嬉しいなと思います。

さて、最後にご紹介するのもフランス映画。『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語』です。至極のワインを造るために人生をかける葡萄農夫のソブランと、彼をとりまく女性たち、そして彼にワイン造りの真髄を伝える天使の物語です。ワイン造りとは、自然を相手にするとても過酷な仕事です。まじめにコツコツと働かなければ、素晴らしい実りは期待できません。でも、この仕事の最も過酷な部分は、まじめに働いたとしても良い結果が得られるとは限らないということです。労働は、良質なワインができる可能性を高めることでしかありません。あとは、天気や運といった人間では手の出せない部分の比重がとても大きいのです。今回のフランス出張では、映画の舞台となったブルゴーニュ地方のワイン産地をめぐってきたのですが、そのことを生産者たちの口からも直接知らされました。毎日のようにお天気を気にし、自分たちがぶどうのためにできることを常に考えています。もちろん、どうしようもできないことについても。人間ができることと、自然にしかできないことの積み重ねによって生まれるワイン。だからこそ、この作品にはそんな神秘的な部分を象徴するかのように、天使が登場するのではないでしょうか。

天使・ザスを演じるのは、ギャスパー・ウリエル。美しすぎる天使に、うっとりしつつも、このロマンティックで神秘な存在こそが、フランスにおけるワイン造りの奇跡を体現しているのではないかと気づいた私。生産者たちは、自分の努力だけでは偉大なワインができないことを知っています。気候、テロワール、そして人間。それらが上手く関わることでしか、偉大なワインは生まれない。そして、その組み合わせを考えることができるのは神のみ。何百年も続くワイン造りの中で、彼らには自然や偶然に謙虚になることを学んでいるような気さえしました。ワイン造りに奇跡は欠かせないのだと。そんなちょっとロマンティックな発想が、ワインを、そしてフランスを特別なものにしているような気がするのですが、いかがでしょう。『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語』を観ると、そんな気がしてくるはずですよ。

ヨーロッパ映画と称しておきながら、結局はフランス一色になってしまった今回のコラムですが、それぞれに特徴のある作品のラインナップになりました。偶然ではありますが、フランス映画の懐の広さを感じる、ちょうど良い機会になってくれれば幸いです。

《text:cinemacafe.net》

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