『シルク・ドゥ・ソレイユ3D』エリカ・リンツ 痛みも恐怖も超えるステージへの誇り

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『シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語』エリカ・リンツ/photo:Naoki Kurozu
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  • 『シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語』 -(C) 2011 Cirque du Soleil Burlesco LLC. All Rights Reserved.
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1億人超。1984年の創立以来、世界中で行われてきた「シルク・ドゥ・ソレイユ」の公演に足を運んだ人々の数である。まさに世界最大のエンターテイメント集団と呼ぶにふさわしいシルクの魅力を深く掘り下げると同時に、より多くの人に伝えるべく誕生した映画『シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語』がまもなく公開となる。『タイタニック』『アバター』の巨匠ジェームズ・キャメロン監督とのコラボレーションによって、単なるドキュメンタリーとして彼らのパフォーマンスをカメラで捉えるのではなく、全く新しいラブストーリーとして作り上げられた本作。主演を務めたエリカ・リンツは「シルクに10年ほど在籍していたけど、完成した映画を観て初めて知って驚いたことや魔法のように感じられる瞬間があった」と語る。この映画ならではの知られざるシルクの魅力とは? さらにシルクのメンバーたちは日々どのような努力を重ね、どんな思いでパフォーマンスに臨んでいるのか? エリカに話を聞いた。

「ステージでのショーでは一番遠いところで100フィート(約30メートル)ほど離れたお客さんに演技を届けなければいけない。そうすると例えば、『うん、聞こえたよ』ということを表現するにも顔、足、頭とまさに全身を使って動作をしないといけないわけで、常に過大な表現をしているんです」と通常のシルクの公演での表現について語るエリカ。映画と普段のステージでの最も大きな違いはこの表現の露出の大きさだった。
「映画、特に3Dでジェームズ・キャメロンが持って来た細部まで映し出せるカメラを前に演技するときは、すごく抑えて演技しないといけなかったので、感情さえも内面に留めて表現しないといけませんでした。それはすごいチャレンジで、最初は大変でした」。

彼女が演じたのは、主人公・ミア。ふと立ち寄ったサーカスで出会った青年を追いかけ、めくるめく不思議な世界を旅するが、通常のシルクの公演と同様、セリフは一切なし。カメラの前で普段よりも動きを抑えながらも、言葉を使わず身体一つでミアの内面を表現しなくてはいけなかったというわけだ。演じる上でエリカはミアに過去の自分を重ねたという。
「部分的にですが、ミアは私と似ているところがあります。彼女の存在を映画の中でひとりの女性として生かすために、私自身がシルクに入りたての頃にどんな気持ちでいたかというのを思い出しながら演じていました。初めてシルクを見たときどんなに感激し、それはどれほど素晴らしい経験だったか? 当時に戻ってその驚きの気持ちを思い出そうとしました」。

そして何と言っても最大の見どころは肉体を駆使したアクロバティックなパフォーマンス。エリカもクライマックスで青年役のイゴール・ザリポフと華麗なエアリアル・ストラップ・バレエを披露しており、2人のパフォーマンスそれ自体がこの映画の軸となる“愛”を体現しているとも言えるほど圧倒的なエネルギーと感情にあふれている。

どのようにしてこうしたアクロバティックな技術を習得していくのか? 月並みな質問だが、どうやって恐怖を克服していくのか? 彼女の答えは「何年にもわたるトレーニングの積み重ね」だった。
「スキルを習うときはだいたい最初の6日間くらいは空中ではなく地面でのトレーニングからを始めます。それから2フィート(約60センチ)の高さで100回くらい練習したら、次は10フィート(約3メートル)まで上げる。そうやって積み重ねて、ステージで演技をする頃には2フィートでも40フィートでも差を感じないようになっています。それからパートナーとの信頼関係もなくてはならないものです。イゴールとは(デュエットで)一緒にパフォーマンスをしたことはありませんでしたが、彼のことは友人として知っていたし、彼に対する周囲の高い評価もよく知っていて強い信頼がありました。もう一つ言えるのは、互いに自分たちがしていることが大好きだということ。そうしたパートナーに対する感情がパフォーマンスを通じて伝わると思います。これまで友情や尊敬の念を持って彼に接していましたが、それをこの物語の中ではロマンティックな感情として表現しました」。

幼少の頃から体操に親しみ、ミュージカルなどにも出演してきたエリカがシルクに入団したのは高校を卒業した19歳のとき。それから10年の歳月が流れたが、今回の映画に出演したことで改めてシルクの魅力、その存在の大きさを再認識したという。
「映画には私の知っている何百人もの人たちが出てきます。私たちは世界中から集まってシルク・ドゥ・ソレイユを作っていますが、(公演の本拠地の)ラスベガスには私たちの家族が住んでるわけではありません。シルクのメンバーこそが本当の意味で“家族”なんです。この映画のおかげで“魔法”がもう一度蘇ったような気持ちになりました。この映画は最も美しい記念アルバムのような存在であり、かけがえのないものです」。

彼女の発する言葉の一つ一つからシルク・ドゥ・ソレイユの一員として名を連ねることへの誇り、そしてプロフェッショナルとしての高い意識が伺える。
「私たちが毎晩パフォーマンスを披露するその瞬間が、見ていただくみなさんにとって特別で最高の時間でなくてはいけません。結婚記念日で足を運んだカップルもいるかもしれないし、お金を貯めて来てくださった家族もいるかもしれない。その全ての観客にとって最高のショーを見せなくてはいけないのですが、毎晩のようにパフォーマンスを行なう中で当然、調子の出ないときもあれば悲しい気持ちのときもあります。でもステージに上がる前には全てを忘れて、規律をもって演技しないといけません。ステージは聖域なんです」。

何より彼女自身が演じることを楽しんでいる。鍛え上げられた美しい肉体に話が及ぶと「私は完璧な例とは言えないわ。太りそうな食べものやビールも大好きだし、ジムでのトレーニングは嫌いなんです」と笑いつつ「でも…」と続ける。
「常に新しいものを学びたいという気持ちを欠かしたことはないです。痛いことも汗をかくこともケガをするかもしれないという恐怖も『絶対にこれをできるようになりたい』という気持ちの前では、たいした問題じゃありません。常にチャレンジする気持ちを持ち続けています」。

取材の前日には歌舞伎を鑑賞したというエリカ。興奮した面持ちで感想を語る姿を見て、彼女が本作の主役に抜擢された理由、そしてシルク・ドゥ・ソレイユが30年近くにわたり常に斬新なアイディアで人々を魅了し続けてきた理由が分かったような気がした。



特集:芸術の秋、『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』でワンランク上の素敵ガール
http://www.cinemacafe.net/ad/cirque
《photo / text:Naoki Kurozu》

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