「色」で観る『ルビー・スパークス』 恋が変える、カレを取り巻く世界の色々

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『ルビー・スパークス』 -(C) 2012 Twentieth Century Fox
  • 『ルビー・スパークス』 -(C) 2012 Twentieth Century Fox
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劇中に登場する衣裳といえば、時代を反映したり、キャラクターたちの性格、育ち、ライフスタイルや経済状況、そして心理、感情、心の変化までを映し出したりする、鏡とも言える存在です。つまり、どんな映画にとってもファッションとは、昔から切っても切り離せないもの。ですが、数ある作品の中でも、特にその重要性が極めて高いものがあります。ちょっと不思議なファンタジック・ラブストーリー『ルビー・スパークス』もその一つ。本作は、若くしてベストセラー作家になったものの、もう10年も第2段が書けずに悩んでいるカルヴィンと、彼が書いた小説のヒロインで、現実世界に飛び出してきたキュートなルビーとの恋物語。ストーリーが進むにつれて起こるカルヴィンの変化が、彼を取り巻く世界に加わっていく色によって表現されているのですが、その色の源が「服」なのです。

登場人物の内的な変化に応じて、着る服や身に着けるものの色が変わっていくというのは、映像作品にはよく用いられる手段。ですが、今回はちょっと違います。というのも、変わっていくのは彼の色ではありません。作品に色を添えていくのは、恋のお相手・ルビーが着る服。ルビーの出現で無味乾燥なカルヴィンの日々が鮮やかに人間らしさを増していく、その象徴としてルビーの服の色が効果的に使われているのです。

父親を亡くした直後に、恋人に振られるというダブルショックの影響もあり、人生に幻滅気味のカルヴィンは、ルビーが現れるまで愛犬と地味に暮らしていました。その家というのが、全てが真っ白なミニマルなもの。ロサンゼルスを一望できる豪邸で、スタイリッシュには違いありませんが温かみは一切し。さらに、彼が着る服といえば、白、ベージュ、カーキといったもので、組み合わせのせいかどこか地味な印象です。そんなカルヴィンにとっては、ルビーが現れてからの日々はバラ色です。偶然なのか、ルビーが好む色もまさにバラ色。赤はもちろん、黄色、紫、ブルーと鮮やかで華やかなものばかり。自信を持てず、若いにもかかわらず全くはつらつとしたところがない彼の心に色を添えていく、絵の具のような存在がルビーというわけなのです。

最初、ルビーが姿を現す前、彼女は「赤」として表現されています。本人登場の序章としてまず、赤いブラジャー、赤いサンダルが部屋に出現するのです。さらに、登場シーンでは、ボーイフレンド・シャツ(いわゆるカレのぶかぶかシャツを彼女が着るというやつです)、に身を包んだルビーがシリアルを食べているのですが、その食器が赤いボウル。これはきっと、カルヴィンが作家の割に、女性については晩生で、女性といえばこんな感じという固定観念しか持っていなかったことの表れかもしれません。何しろ、彼女は彼が考え出した女性なのですから。

ところが、ルビーが単に自分の創造物ではなく、自分の意思を持った女性として生き始めると、赤だけでなく青など別の色が彼女のワードローブに加わり始め、やがてそれらが組み合わされるようになってきます。それは、始めは誰かとイメージ先行で付き合っていても、やがてその人について知っていくうちに、さらに多面的な魅力に触れていくものだというメタファーなのかもしれません。

とはいえ、そんな見方をしなくても、色をたくさん取り入れたルビーのファッションは、実にキュート。数年前に流行し、その魅力に多くの人が気づかされたカラー・ブロッキング的なコーディネートがいっぱい。鮮やかなブルーのワンピースにパープルのカラータイツだったり、ブルーのカーディガンに赤のカラーデニムだったり、イエローのカーディガンに白のインナー、デニムのショーツに、赤のタイツだったり。常にカラフルなアイテムを身に着けているルビーですが、カルヴィンの母親に会いに行くときだけは、少女っぽい白いレースのワンピースを着ています。これは、女性なら誰でも感じる「好きな人の家族に自分を受け入れてほしい」という願望の表れでしょうか。

このように、カルヴィン、ルビーの世界を、雄弁に表現している色の世界。風変わりでチャーミングでちょっと切ない2人の恋物語を楽しんだら、ぜひ2回目の鑑賞では、彼らの「色」をじっくり観察してみてはいかがですか?



シネクイント webチケット購入:http://www.cinemacafe.net/ticket/
《text:June Makiguchi》

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