【美的アジア】韓国の重鎮イ・スンジェ氏に訊く。「先生、本当の愛ってなんですか?」

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『拝啓、愛しています』 -(C) Next Entertainment World All rights reserved
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チャン・グンソク、ソン・スンホン、パク・シフ、チャン・ドンゴン…数々の韓国人気俳優たちと共演し、彼らから「ソンセンニム(=先生)」と慕われている、韓国芸能界の重鎮イ・スンジェ氏。御年77歳になったいまも尚、精力的にドラマに映画と大活躍していらっしゃるソンセンニムの最新主演映画『拝啓、愛しています』が12月22日(土)より公開されます。

主要キャストの平均年齢が70歳の「おじいちゃん、おばあちゃん」が主役でありながら、人生の黄昏時に出会った愛する人を想う気持ちや、友情の温かさなど、“人生で大切なものは何か?”を問いかけた本作は、シネマカフェ読者にこそ見て欲しい作品間違いなしです。ほろっと涙した後、なぜか優しい微笑みが浮かんでしまう…そんな本作の魅力や“愛”についてを、イ・スンジェ先生がたっぷりと語ってくれました。恋愛相談(?)みたいなインタビュー。“愛”に迷う女子、必読です!

『拝啓、愛しています』は人気漫画家カン・プルの原作により最初はミュージカル化され、その人気により映画化された作品。妻に先立たれ牛乳配達をしながら引退生活を送っているマンソクが、毎朝出会う身寄りのない女性・イップンと交流を深める中で、認知症の妻を献身的に介護するグンボンとも友情を交わしていく…というストーリー。

「原作漫画は読んでなかったんですが、シナリオをもらったときにちょうど舞台公演中だったので観に行ったんです。 舞台よりむしろ映画向きの話で、映画の方がより多くのことを描き出すことができると確信しました。笑いあり、涙ありの力にあふれるシナリオを読んだ段階で、とても満足しました。ハードなバイオレンス作品が多い韓国映画界で、久々に人情に訴える温かい映画ができそうだと思いましたね」。
 
イ・スンジェ氏が演じたマンソクは、典型的な韓国の頑固親父だが、イップンを不器用に構う姿や、喜ぶ姿はまるで恋を始めたばかりの少年のよう。とっても“かわいいおじいちゃん”ですよね?

「マンソクは、いままで私が作り出したことのない新しいキャラクターではあったけど、とても共感できてなじみやすい役でした。しかしながら、韓国の映画やドラマではあまり描かれたことのない“恋する老人”の役だから、どう表現すべきかは悩みました。無愛想で口がキツく、自分の気持ちなんか素直に表現したこともないけど、心は誰よりも温かい典型的な韓国のおっさんが、年を取って独りになって、再び恋したときの感情は一体どんなものかを理解しようと努力しました。不器用だが情が厚いという点や、繊細さも気のきいたことの一つも言えない無愛想で大きなガキ大将のようでいて、人間くさい情があるあたり、マンソクの内面は私と似ていると思いましたね(笑)」。

しかし、長年の俳優人生の中で“役との類似点は見つけない”というのがイ・スンジェ流演技論なんだとか。

「私が演じるキャラクターが私とまったく似ていなくても、きちんと分析すればその人物に十分に同化できると思っています。演技するときは常に私という個人をいったん全部捨て、積極的にその役に寄り添うようにしているんです。そもそも俳優というのは、自身が持つ固定観念や既存のイメージに固執してはいけないのではないかと思っていて。自我を完全に破り捨てることができなければ、演じるキャラクターに肉薄できず、どこかに自分の地の部分が出てきてしまうから。たとえば、演じる者に“私はスターなのに”とか、“私が最高の俳優なのに”という意識があれば、どん底に落ちなければならないような役を演じているときにも、つい自分がスターであるという意識が邪魔をして、役柄になりきることはできないでしょう? 俳優なら誰でもさまざまなイメージを作り出し、それを表現することに快感を得るはず。パターン化した広告のように、同じ演技を繰り返すことぐらいつまらないことはないですよ」。
 
そんな新たに誕生したマンソクというキャラクターは、「大切な人を大切にしようとする素直な思い」や、「人を愛する気持ちはいくつになっても輝かしいものだ」ということを教えてくれます。現代の日本女性、そして韓国の女性たちも、キャリアを重ねて「結婚しない」と考える人が増えてきたり、恋愛をインスタントに考える人が少なくない昨今、スンジェ氏は女性たちにこう言います。

「大人になれば誰もが1度は真剣な恋をすると思うけど、“真実の愛には条件などない”ことを忘れてはいけません。初めて誰かを好きになったときのことを思い出して観てください。果たしてそこには現実的な条件をつけたり、利害を計算したりすることなどあったでしょうか…。何もなくても、ただ会えば嬉しいし、楽しかったのが恋ではありませんでしたか? これこそが愛の純粋性だと思います。初めからステータスや経済力など、現実的な条件を考慮するのは愛でなく単なるビジネスです。私が思う愛とは“何も計算せず、見返りも求めずに、ひたすら与えるもの”。誰かのために、何の目的や意図もなしに自分の全てを捧げることこそ、純粋な愛だと信じています。そして、愛は生涯いつでも生まれる感情です。絶対に急がないでください。誰かを愛することを諦めることもしないでください。あなたの人生で経験した愛がどれくらい良いものであったかによって、あなたの人生が変わるということを信じてください」。

そして最後に、本作の核心でもあり、スンジェ氏が人生の大先輩として“人生を豊かにするためにしておくべきこと”を私たちにアドバイスしてくれました。
「人生で最も重要なのは愛です。言い換えると、この愛を通じて人間は育まれ、豊かになっていきます。特に女性の場合は初めて出会った男性がどんな人だったかにより、人生の座標が変わるものです。もちろん愛が成就しないこともあります。 しかし、たとえその愛にくじけたとしても、永遠に大事に思えるように人を愛してみてください。万が一、相手のために自分から身を引くようなことがあるのなら、それこそ最高の愛であり、永遠に記憶される愛でしょう。その愛が必ずしも異性間の愛である必要はありません。家族愛だったり、同僚愛だったり、すべての愛はあなたを豊かにするものです。 愛というのは誰でも経験する感情ですが、その愛を美しい愛として記憶するためには、打算があってはいけないのです。完全な愛を望むなら、与えることで終わらせましょう。たとえ相手が自分を愛さなくても愛し続けてください」。

《text:Tomomi Kimura》
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