【美的アジア】『すれ違いのダイアリーズ』監督、自然の生々しさを体験…「寂しさや孤独を表現したい」

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『すれ違いのダイアリーズ』 (C)2014 GMM Tai Hub Co., Ltd.
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山奥の湖に浮かぶ水上学校を舞台に、教師として働き始めた青年が前任の女性教師の日記を見つけ、やがて会ったことのない彼女に思いを募らせる恋模様を描いたタイ映画『すれ違いのダイアリーズ』が現在公開中。SNSでどこでもすぐに“繋がれる”現代において、「日記」という古典的なアイテムが、どうしてこんなにも素敵な恋の架け橋となったのか。プロモーションで来日していたニティワット・タラトーン監督に撮影現場の裏話や、タイの女性の現状などをお聞きしました。


――この作品は水上学校で実際に教師をしているサーマート先生の実話がベースになっているそうですね。

監督:サーマート先生はすごく優しくて真面目で、教育機会の少ない水上で生活している子供たちに熱心に勉強を教えようと取り組んでいる方なんです。でもサーマート先生ももともとは自分自身を水上学校に捧げるつもりはなかったみたいなんです。実際に子供たちに会い、彼らに知識を与えてくれる人間がいないという事実を知った時に、もっと真剣に向き合ってみようと思ったんですね。その部分が映画を作る時のインスピレーションになっています。

――劇中のソーン先生とサーマート先生は似ている部分があるのですか?

監督:やる気や真剣さに関してはソックリだと思います。ただソーン先生を作る段階で滑稽な部分や面白い部分を入れてキャラクターとしての色彩を出しています。


――ソーン先生役のビー(スクリット・ウィセートケーオ)さんがとても純朴で、笑顔がすごく印象的です。彼はタイでは大スター。日本でいう松本潤さん、木村拓哉さんのような存在だそうですね。この作品の中ではスターというよりすごい純朴青年ですよね。

監督:ビーさんはスーパースターですけど、実際は地方出身の方なんです。結構普通の方なんです(笑)。だけど彼には「何かを成し遂げるためのやる気や真剣さ」がすごくある。そういう意味ではサーマート先生とビーさんが似ている部分があるんじゃないかなと思います。そういう部分を彼の瞳の中に感じたので、彼にこの映画で演じてもらえないかと誘ったんです。


――実際、一緒に仕事をしてみていかがでしたか?

監督:スーパースターめいて振る舞うことが全然なくて、すごい純朴で、友達と喋っているような感じの人ですね。ビーさんってすごい明るい方だから子供たちともすぐ上手くやれるんです。実際のサーマート先生は滑稽な人ではないんですけど、ビーさん自身のキャラクターがソーン先生のキャラクターに合わさって、ああいう映画の中のソーン先生が生まれたんじゃないかなと思います。


――水上学校のロケーションがとても素晴らしかったですが、撮影そのものはとても苦労されたんじゃないでしょうか。

監督:水上学校はサーマート先生が教えていた学校をモデルにしてかなりいろんな部分を似せて作りました。実際に水もなければ電気もないし、携帯の電波も入らないようなところ(笑)。撮影チームがトイレに行きたい、となると、一回船に乗って岸まで戻らなくちゃいけないというレベルです(笑)。実際の映画の中で描かれているような生活を、撮影隊も経験していたと思ってくれればいいです(笑)。


――撮影中の食事などはどうされていたのですか?

監督:学校のセット以外に湖に浮かぶ建物をもう一つ作って、そこに全部物を置いて、そっちでご飯を食べたりしていました。そもそもなんでわざわざそんなに遠いところに行かなきゃいけなかったのかというと、やっぱり何も周りに無いところにどうしても行きたかったんです。そのことによって自然の生々しさや寂しさ、孤独というのをきちんと表して、お客さんに伝わるようにしたかったんです。だからわざわざ遠いところに行ったのです。


――物がない、という状況の中で一番の苦労はどんなところでしたか?

監督:現代人である私たちにとって一番問題があったのは携帯の電波が届かないというところです(笑)。これは映画の話とも繋がっていて、今の時代って携帯がちゃんと通っていると、自分の知りたいことがその場ですぐアクセスできるし、誰かと喋りたいと思ったらその場ですぐ喋ることができますよね。でも撮影中は携帯の電波が通っていなかったので、一度撮影場所に行ってしまったら朝から晩までチームだけでずっといなきゃいけなくなるんです。嫌でも自分と向き合う時間になりました。そういう意味ではサーマート先生や、映画の中のソーン先生やエーン先生と同じような状態になっていたと思います。ある種、映画のテーマにも近いんですが、自分の「誰かを思う気持ち」というものを精一杯使うことができた期間だったかなと思っています。


――水上学校というのも日本にはあまり馴染みがありませんが、先生が子どもに料理を振る舞ったり、一緒に寝泊まりとかもしているんですか。

監督:水上学校って私が知っている限りでもタイでは一校しかないんですけど、結構特殊なんです。町中の学校に行くのにすごく時間がかかる漁師の子どもたちなどが月曜日の朝にお父さんとお母さんに学校に送り届けられると次に迎えに来るのが金曜日の午後なんです。だから5日間は先生と一緒、付きっきりなんですね。だから先生が親代わり、すべての面倒を見てあげる。ご飯を作ってあげたり、一緒に寝るとかそういったことをしてあげるんです。


――教師である前に、母親や父親だなという印象を作品を見てすごく受けました。エーン先生は肝っ玉母ちゃんみたいな感じで、ソーン先生は新米パパみたいで(笑)。タイの女性の社会での立ち位置というのはどうなのでしょうか。

監督:タイでは昔は女性は家を守るべきという考え方がありましたが、今は関係なくなってきています。優秀な女性は認められるようになってきていますね。ジェンダー差、性差は実際の社会においてあまりないと感じます。そういう意味でエーン先生は自分に自信がある女性の代表みたいなところがありますよね。自分の信じたことをやる、自分が正しいと思ったことをやってみる。自分の正しさを証明するところがある。戦っていくわけです。


――ラストシーンについて、監督はエーン先生とソーン先生のその後をどう予想されますか?

監督:実はあんまり答えたくはないんですけど(笑)。できれば観た人に考えてほしい。この映画のメッセージとしてそもそも、「考え方の似ている人たち同士が恋に落ちる」というのがあるんです。会ったことがないのにお互いを励まし合って、お互いの考えが繋がっていく。このふたりが恋に落ちた時に実際にどうなっていくのかというのを観た人に考えてほしいなと思います。出会ったことのないふたりが恋に落ちるってファンタジーなんですよ。ファンタジー過ぎるんです。だけど実際にお互いに愛することができるのか、あるいはそれが駄目だったならどうして駄目なのかということを、観客のみなさんが考えてもらうよう余白を作っているんです。そういうふうに余白の部分をお客さんに考えてもらえたら、と思います。
《text:Tomomi Kimura》

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