広末涼子インタビュー 30代を迎え感じる変化「殻を破ってひと皮むけました」

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『桜、ふたたびの加奈子』広末涼子/Photo:Naoki Kurozu
  • 『桜、ふたたびの加奈子』広末涼子/Photo:Naoki Kurozu
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「私、あんな顔で泣いたことってないかもしれません」――。スクリーンの中に初めて目にする自分を発見し、広末涼子は驚きと感動を覚えたという。まもなく公開される映画『桜、ふたたびの加奈子』で彼女が演じたのは、幼い娘を事故で亡くした母親・容子。娘が新しい命として生まれ変わることを信じる彼女が喪失と向き合い、ある“奇跡”を経て再生していくさまを描き出す。娘の死という母親にとって最も大きな悲しみを広末さんはどのように表現し、最後に訪れる希望へと歩みを進めていったのだろうか?

娘の交通事故による死に始まり、その喪失を埋めることができない容子の前をいくつもの季節が通り過ぎる。当然、広末さんが表現する悲しみも通り一遍のものではない。死の直後には娘から目を離した自分を責め、あるときは彼女にしか見えない娘の姿を視界にとらえて娘の好物だったオムライスを食卓に並べ続け、またあるときは偶然知り合った若い妊婦から生まれた新たな命に娘を重ね合せて胸を痛める。

「撮影の前からある種の“覚悟”は必要だなと思ってはいましたが、やっぱり撮影中はつらかったです。24時間の中で、自分でいるよりも役でいる方が長い日もありましたから、そこから抜け出せないのも仕方がないと思いながらの撮影でした。この役を演じる上で必要なことなのだと自分に言い聞かせつつも、ずっとつらかったです…」。

他人の感情を自分のものとして受け止めてしまうのは「もはや、ほとんど職業病ですね(笑)」と語る広末さん。「普段、日常の中で出会った人に自分を置き換えたり、ニュースを見ながら涙を流してしまったり。他人の人生を自分とリンクさせてしまうことは多いです。演じる役となるとなおさらです」と明かす。そうやって役柄に感情を引き込まれること自体、彼女にとって珍しいことではなく、それを受け止めるだけの冷静さも備えている。だからこそ、冒頭に挙げた涙のシーンに収められた、これまで見たこともない自身の表情は広末さんに新鮮な驚きをもたらした。

「これまで、お芝居で泣いたり怒ったりするとき、表情を崩し過ぎると注意されることがありました。だから、ある程度抑えないといけないと思い、自然とストッパーをかけていたと思います。仕上がった作品を観たときに、あのシーンはその限界を超えて振り切れていたんだなと感じました」。

それはラスト近くのクライマックス・シーンであり、本作が描く“奇跡”の核となる場面。その涙には悲しみだけでなく、希望や容子の願いもが込められている。そこで砂織(※娘の死後に容子が知りあう女性)が容子に掛けるあるひと言に広末さんは「救われた」と明かす。

「(相手が)どういうお芝居をされるのか、私には想像ができなかったんです。あのほんのひと言に救われて、『母親ってすごいな』と思いました。母親というのは自分の子どものことや自分自身の不安や怒りや恐怖だけでなく、同じように相手の気持ちに立つことができる存在なんですね。役を演じていると、どうしても自分の役のことしか考えられない部分があるのですが、対峙する人にこんなに大きなことを教えてもらえるものなのかと思いました」。

32歳となった広末涼子の“いま”を語る上で欠かすことができないのが、昨年公開された『鍵泥棒のメソッド』。本作とは180度タイプの異なる笑いに満ちた作品の中で、ニコリともしない女性編集者の役を好演し、コメディエンヌとしての才能を開花させた。10代の頃から当たり前のように主演をこなしてきたが、30代を迎えての“変化”を敏感に感じている。

「やはり役の幅が広がったのは実感しています。10代、20代の頃は真っ直ぐ素直に役に向かっていけばよかった部分も多かったのですが、最近は“経験”を表現しないといけないことが増えました。今回の子どもの死もまさにそうですが、余計に演じることへの責任を感じて、メッセージを伝える立場にいられることがありがたいとも思います。それがやりがいでもありますし、女優という仕事が本当に好きなんだなと感じます」。

『鍵泥棒のメソッド』の内田けんじ監督然り、そして本作の栗村実監督然り。自身ですらも気づいていない、心の奥に内包された感情や表情を掘り起こすクリエイターとの出会いが、女優にとっていかに重要かということに改めて気づかされる。

「この数年で、殻を破ってひと皮むけるような経験をさせていただいている気がしますが、自分がそうしていると言うよりもそういう機会を与えていただいているんですよね。約17年お芝居をさせていただいていますが、ここへきて初めて経験することがたくさんあります(笑)。緊張したり、悩んだりしながら模索するのですが、この仕事を続ける限り、そういうことの連続なんだろうと思うとワクワクします!」。

いまだからこそ「広末涼子をああしよう、こうしよう」と手ぐすね引いて待っているクリエイターたちが数多くいるに違いない。新しい作品ごとにこれまでにない表情をさらけ出し、観る者を動揺させてほしい。
《photo / text:Naoki Kurozu》

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