【MOVIE BLOG】8末の叫び(とつぶやき)

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チェン・カイコー監督
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ブログ更新が止まって1か月、今年も夏を1秒も経験しないまま、夏が終わっていく…。

毎年この時期に書くブログは、大抵は泣き言か愚痴ばかりになってしまい、とは言って他に書くこともないので、だったら書かない方がいいや、ということになってしまいがちであります。

1日とは言わないから、いや、半日とも言わないから、せめて5時間でいいから夏休みがあったらどんなに素敵だろうと思いながら、東京国際映画祭の上映候補作品DVDと格闘する日々が、かれこれ2か月以上続いています。

おかげさまで、今年の東京国際映画祭への応募総数は過去最高数を更新していて、今年はおそらく検討作品が1,400本くらいになりそう。2年前が900本くらいだから、ここ数年で激増していることになりますね。しかし、スタッフの数は横ばいなので、一人当たりの鑑賞時間量だけが増えていく、というなかなかしびれる展開です。

ところで、先日、僕の同僚の映画祭スタッフが、ある会合で日本の某映画監督と一緒になったとき、監督から「でも応募作品なんてちゃんと見ていないんでしょう?」と言われたそうな。

一部ではそう思われているのかもしれませんね。どうしてそういう考えが広がるのか、うまく想像はできないのですが、たまに同様の発言を耳にすることがあります。

が、見てます。本当に。自分で言うのもなんですが、誰も言ってくれないので言いますと、本当に命削る思いで見ています。1本の映画作りに投入されたエネルギーに対抗できるようでなければいけないくらいの自覚と気合いを込めて、数時間寝ている以外の全ての時間を利用して、見ています。具体的に言えば、土日は朝5時から23時半まで見ています。平日は7時半に見始めてから会議などの日中業務を挟み、深夜1時くらいまで見ています。人付き合いも一切絶って…、はい、しつこいですね。

もちろん、僕ひとりで見ているわけでは全くなくて、多くの選定メンバーと手分けをするのですが、1作品に対し、少なくとも2人の人間の眼は通したい。単純計算として、1,400本の映画があったとして、1本2時間として2,800時間。2人が見るとして5,600時間。1日に18時間見るとして(無理だけど)18で割ると、311日分。

概算がかなり乱暴ではありますが、ともかくぶっとおしでも約10か月分の労働時間を、2~3か月でこなすには、一体何人でどう分担すればいいのか。なかなかラクではないです。それでも、選定スタッフの壮絶と呼んでも過言ではない不休の頑張りで、1作品最低2人の目標はクリアし、作品によっては4~5人の眼を通して評価の精度を上げようとしています。

僕はここ半年で700本くらいの映画を見ていますが、好きなことを仕事にしている幸せはあるとは言え、さすがに人間としてまともな事態ではないかもしれないと思ったりします。が、別に誰かに強制されているわけでもないので(いや、必要には迫られているけど、強制はされていない、というか、自分が広く募集をかけた結果なので単なる自業自得だ)、結局は好きでやっているのですけれど、それでも、そのくらい自分を追い込まないと作っている人に迫れないのではないかと勝手に思ったりもしています。いや、でも本当に正気を保つのに苦労するときはありますが。

というわけで、結局は毎夏恒例の「大変自慢」になってしまって情けないですが、上記の某映画監督には声を大にして誠意を伝えたく、届かないとしてもこのブログで遠吠えしてみる次第であります。

もちろん、何度か書いてきましたが、目標はいかに多くの作品を見るかではなく、いかに良い作品を見つけるかなので、数百本見たからってそれがどうした、という話ではあります。それでも、多く見続けることが出来ることも作品選定業務には確実に必要なスキル(というか体質)なわけで、まあそれは僕にも少しは備わっているらしいです。

では、最も肝心な、良い作品を見分けて、映画祭で紹介するスキルについてはどうか。僕は現在のポジションに就いて7年目ですが(映画祭業務自体は12年目になりました)これはもう、何年やっても(備わっているのか)分からないし、慣れることもないです。

映画祭の作品選定には、様々な変数が介在するので(ワールドプレミアが欲しいとか、有名監督作品が欲しいとか、世界の各地域から広く作品を揃えたいとか、新しい才能を紹介したいとか、なるべく幅広いジャンルを入れてみたいとか、多くの人に喜んでもらえる作品が欲しいとか、一部のコアなファンに評価される通好みの作品を入れたいとか、etc etc…)、それらの欲望や煩悩やジレンマやエゴや政治をひっくるめて考慮した上で最終的に「クオリティーの高い新作を揃える」という作業が出来ているのかどうか。現在8割ほど埋まってきたラインアップ表を凝視しながら、正しい選択をしているのかが全く分からなくなって呆然としながらパニックに襲われる、ここ数日。いや、もう最後は自分を信じるしか無いのですが、それができるなら苦労などしないわけで…。

あれ?結局弱音を吐いている?

失礼しました。そんなDVDマラソン、泣いても笑っても、今年もそろそろゴールが見えてきました。後はもう天命を待つ、ということにしましょう。今は早く社会復帰したい!

(写真は、今年の東京国際映画祭のコンペティション部門の審査員長が決定したチェン・カイコー監督!)
《矢田部吉彦》

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