【インタビュー】『抱きしめたい』北川景子 人見知りのヒロインと王子様の幸せな距離感

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北川景子『抱きしめたい -真実の物語-』/PHOTO:Naoki Kurozu
  • 北川景子『抱きしめたい -真実の物語-』/PHOTO:Naoki Kurozu
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スクリーンの中の北川景子が泣く。嗚咽や慟哭といったレベルではない。獣が吠えるかのように顔を歪めて泣き叫ぶ。北川景子がこんな表情をさらけ出していいのか? こちらが心配になってしまうくらいの振り切った姿を見せる。これだけの難しい役柄、しかも数年前まで生きていた実在の人物を演じる上での覚悟は? そんな問いに彼女は、全てを包み込むような柔らかい笑みを浮かべこう語る。

「覚悟やプレッシャーよりも、私はこの役を演じられて嬉しいという気持ちの方がずっと大きかったです」。

映画『抱きしめたい -真実の物語-』で北川さんは交通事故による半身不随と記憶障害を抱えたヒロイン・つかさを演じている。覚悟ではなく嬉しさ、プレッシャーではなく責任――まさに実在したつかささんが持っていたのと同じ前向きさと強さが北川さんをこの難役へと向かわせた。

ドキュメンタリー番組「記憶障害の花嫁 -最期のほほえみ-」として放送もされた実話を映画化した本作。北川景子と錦戸亮を主演に迎え、北海道・網走を舞台に障害を抱えながらも強く生きるつかさとタクシードライバーの雅己の出会いと結婚、2人が残した命の軌跡を描き出す。

元のドキュメンタリーを見たことはなかったという北川さんだが、本作の企画書と共に映像を見て、つかささんの魅力に惹きつけられ、出演したいという気持ちが一気に強くなったという。

「すごく笑顔が素敵な方だなという印象が伝わってきましたし、こういう方を演じられる喜びが何より大きかったです。断ったらほかの方が演じることになるわけで、自分にこの役をいただけたというのが嬉しかった」。

冒頭に挙げたのは、高校時代の事故直後の病院でのシーン。当初、つかさは母親を認識できずに泣き叫ぶ。そして、その後もつらいリハビリの日々が続く。

「つかささんとお母さんが取り組んだ実話だから――」。

自分がスクリーンでどのように見えるか? などという意識ではなく、実際のシーンだからこそ大切に演じなければという責任感。北川さんの胸にあったのはそれだけだった。

「ここは映画を観る人に責任を持って、これだけの苦労がつかささんとお母さんにはあったんだと伝えなくちゃいけない。身が引き締まる思いはありました。でも、それをつらいと思ったりプレッシャーに感じることはなかったです。最初にいただいたドキュメンタリー番組とそれ以外に3つほどの番組の中に、実際の事故直後にお母さんが撮った集中治療室のつかささんの様子や事故後に初めて話したときなどの映像があったので、それを自分のタブレット端末に落として、撮影の合間もずっと見ていました」。

現場の様子について、まず漏れ伝わってくるのが塩田明彦監督による独特の演出。基本的にテストなしでいきなり本番の一発勝負で、しかもほとんど1シーン1カット! この演出がメリーゴーランドでのキスなど見せ場となる“イベント”的シーンにもごく自然なリアリティを植え付けた。

「スタッフさんは大変だったと思いますが、役者にとってはすごくやりやすかったです。例えば洗濯物を投げ込むシーンがありますが、これをいくつかの角度で数回やるとなると『最初に赤いタオルを投げて次にTシャツを…』と繋がりを考えないといけない。そうすると1回目は感情を高めて自然にできたのに、2回目以降は自分でやったことなのに何でこんなにできないの? と思うくらい難しい(苦笑)。特に重要なシーンほどそうなんですが、そうしたことを考えずに思い切りやれましたね」。

塩田監督が口癖のように毎回言っていたのが、「いま、初めてその言葉を2人が口にしたように言って下さい」ということ。当然のことではあるが、難しい。

「本当に毎回言っていました。『初めて抱き上げたようなぎこちないままでいい』。メリーゴーランドのキスシーンも『失敗したらしたでそれが本当なんだからそれでいい。そのまま自然に』と。そう言われて気持ちが軽くなりました」。

そして監督の演出と共に、やはり今回の北川さんの演技を語る上で欠かすことができないのが、相手役の錦戸さんの存在。監督の意図通り、自然な2人の距離感、徐々に強まっていく互いを想う気持ちが映像からは伝わってくるが、撮影の裏では何とも涙ぐましい(?)努力が…。そもそも、北川さんも錦戸さんも“超”が付くほどの人見知りである。

「そうなんです。この仕事が長くなって改善はされていますが…。女子校育ちなので、特に年の近い異性にどう接していいのか分からないんです(苦笑)。どう呼んでいいのかも…共学の人ってすぐ『おう、景子!』とか呼んでくる感じがありますが、そういうとき、何でいきなり下の名前で呼ばれたのか分からなかったり(笑)。共学の子にとっては異性と食事に行ったりするのが当たり前でも、私や女子校の友達は『あの2人、うまくいっているんだ!』とか思ってたり(笑)。根本的に、距離の取り方が分からないんですよ!

でも今回に限っては、プロデューサーから『錦戸は北川の上を行く人見知りだから、お前から話しかけないと一生話せない』って言われて、初日から話しかけたんです。でも、距離の取り方が分からなくて、最初は車で2人きりのシーンだったんですが『関ジャニ∞って忙しいんですか?』とか『歌う方ってあまりお酒は飲まれないんですか?』とか…絶対に錦戸さんは『こいつ、芸能レポーターか?』って思っていたと思います(笑)。その日の撮影が終わったとき『前回の映画の現場で共演した女優さんと話した全ての会話の量を今日一日で超えました』って言われましたから(笑)」。

こうしてコミュニケーションを図る一方で「関ジャニ∞のことはたくさん聞いたけど(笑)、お芝居について話をしたことは一切なかった」とも。つまり、テストなし一発本番の現場で、相手がどんな芝居を見せるのか全く予想もつかないまま、演技に臨んだということだ。

「ただ、自然と息が合っただけ」。

錦戸さんとの会話のシーンを北川さんはそう表現する。

「脚本のセリフはシンプルで短いからすぐに終わるんですが、監督はカットを掛けずに回し続けるんです。『このセリフが終わったら2人は話し続けないのか? いや、続けるはずだ。だから会話を続けて』って。だから台本よりもずっと長い時間をその場で生まれた言葉で話し続けているんですが、そういうカットばかりが実際に映画で使われてるんです。そういう時、『こういう言葉ってつかさっぽい』と思っても、あまりに突拍子のないことを言うと返しづらいかもしれないと無難な言葉にしてしまうものなんですが、今回はそういう計算の部分が全く要らなかった。何を言っても錦戸さんなら受け止めてくれるし返してくれる。会った瞬間からそう思えたし信じ合えたんでしょうね」。

このインタビューが行われたのは、2013年12月下旬の年の瀬。2013年は北川さんにとって芸能界にデビューして節目の10年目であり、『謎解きはディナーのあとで』『ルームメイト』、連続ドラマでも「独身貴族」と主演およびヒロイン役が続いた1年となった。主演作品が増えるというのは、それだけ彼女が多くの人を惹きつける“華”を持っているということの証左でもあるが、北川さんは冷静に自らの立ち位置を見つめている。

「語弊があるかもしれませんが、主演というのは周りをお芝居のできる役者さんで固めていただくことで、一番上手でなくても成立してしまう立場なんだと思います。一番上手でなくてもカット数は一番多く、一番魅力的な撮り方をしてもらえる役。だから主演をいただけるのはすごくありがたいことだし、恵まれた立場にあるという感謝の思いと素直に嬉しい気持ちでいっぱいなんですが、自分が脇を固め、主演を輝かせる役柄もできるようにならなくちゃいけないという思いも強く持っています」。

11年目を「改めてスタートラインに立つ気持ちで迎えたい」という北川さん。「この10年は慌ただしく、基礎を固めることであっという間に過ぎた感じ。この10年で培ってきたことを土台に邁進したい」と思いを新たにする。本作を始め、今年も複数の映画が公開を控えるが、映画へのこんな強い思いも…。

「デビュー作の『美少女戦士セーラームーン』はドラマでしたが、その後、お芝居をしたいと思っていろんなドラマを受けたけど全然受からず、最初に受かったのが森田芳光監督の映画『間宮兄弟』だったんです。そこで『映画っていいな』と思えたし、森田監督にも『女優、やめないでくださいね』と言っていただけた。また森田監督とお会いしたいという思いで映画にたくさん出てきたんです。映画は『この作品が観たい』『この女優が見たい』と思ってチケットを買った方が劇場まで足を運んでくださるので、その責任を感じながら芝居をするという意味でハードルが高い分、やりがいを感じます。だから好きなのかな(笑)? 映画の現場に戻ると安心するところがあります」。

これからの10年でまだまだ表に出していない、一癖も二癖もある表情を見せてくれそうだ。
《photo / text:Naoki Kurozu》

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