【インタビュー】『渇き。』小松菜奈 カメラの前の恍惚と喜び

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小松菜奈『渇き。』/Photo:Naoki Kurozu
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ミステリアスな顔立ちの美少女が、カメラのシャッターが切られるたびに、まるで突風でパラパラと本がめくれるかのようにめまぐるしく表情を変えていく。ツンとすました顔を見せたかと思うと、次の瞬間、子どものように満面の笑みを浮かべる。長い手足をひらひらと動かしながら飄々と身をひるがえしていく様は、紙のように軽く、薄っぺらく、それなのに、その奥にドロドロとした熱いものが隠されているような気もする。

未知数――映画の中の彼女を見て、インタビューで話を聞いてもなお、正直、彼女の全体像が見えてこない。それでいて…いや、だからこそ、スクリーンでもっと見てみたいという思いに駆られる。不思議な中毒性を持った少女。中島哲也監督が最新映画『渇き。』のヒロインに小松菜奈を選んだ理由が分かった気がする。

原作は2004年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞の深町秋生の小説「果てしなき渇き」(宝島社刊)。成績優秀で優しくて、みんなが憧れる美しい女子高生・藤島加奈子が突然、失踪する…。元刑事の父親は、離婚した妻に懇願されて娘を探すが、その過程で愛する娘の予想だにしなかった真の姿を見聞きすることになる。藤島加奈子とはいったい、何者で、何が彼女をこんな風にしたのか――?

モデルとして活動し、ミュージックビデオやショートフィルムへの参加はあるが、長編映画への出演はこれが初めて。まずはオーディションから始まった。

「オーディションを受けることになって、まずは原作を読んでみたんですが、まあ、すごい内容だな…と(笑)。こういうお話を読んだのも初めてで、『え? これ映画にできるの?』と思いつつ、中島監督が怖いという噂は聞いてましたので、『オーディションから怒鳴られるかも』とビクビクしながら行きました(笑)」。

オーディションは2次まで。自己紹介に面談、ペアでの演技では「相手の女の子と爆笑したり、髪を掴み合いながら悪口を言ったり」と様々なシチュエーションを実験。ちなみに、中島監督と顔を合わせたのもこのオーディションが初めて。

「正直、手応えなんて全然なくて、周りはみんな、演技が出来る子たちばかりで、自分だけ出来な過ぎて、その場にいるのがつらかったです。だから、決まったときはものすごくビックリしました」。

その後、クランクインまでの間にほぼ演技経験ゼロの彼女のために演技レッスンのプログラムが組まれた。一方で、加奈子像に関しては彼女も、中島監督もハッキリと固めることなく現場で少しずつ作り上げていった。

「自分でいろいろ考えてもなかなか答えが出なくて、逆に『こういう子』と決めつけずに演じた方がいいのかなと思いました。中島監督も『何考えてるのか、オレもよく分からん』って(笑)。ワンシーンずつ監督から『もっとこうじゃないか?』と言われながら作っていったんですが、撮影が進む中で少しずつですが自分でも『加奈子ってこういう子なのかな?』と考えられるようになってきました。改めて、完成した映画を観て感じたのは、加奈子は一人だけ違う世界にいるということ。浮いて見えるんだけど、周りを惹きつけてしまう――そんな不思議な力を持っている子なんですね」。

先ほども少し触れたが、オーディションの段階で、中島監督に関する噂は耳にしていたという。絶対に役者を褒めない、俳優を「ヘタクソ!」と怒鳴る…などなど、“鬼才”というよりも“鬼そのもの”とも言えるような様々な噂がすでに都市伝説化されているが…。

「撮影が終わってからも、周りの人に『大丈夫だった?』とよく聞かれます(笑)。撮影でも、最初の頃は実際に『ヘタクソ!』って怒鳴られましたよ。ただ、監督はすごく気を遣って下さります。私が初めての経験で演技が嫌いにならないようにと、すごく話しかけてくれたり…。あと、ガチャガチャが趣味らしいです(笑)。リハーサルのときに急に『はい』ってガチャガチャで出たストラップをくれました。『こういうの好きなんだ!?』と思って、こっちからもいろいろ聞きました。『普段、電車に乗ったりするんですか?』とか。オーラがすごいんで目立たないのかな? と思って(笑)。疑問に思ったことは全部尋ねましたよ」。

そう。この18歳の少女は意外と図太い。口では「緊張した」「不安だった」「怖かった」とネガティブな言葉を連発するものの、決して物怖じしない。そして何より…負けず嫌いだ。

「プレッシャーはありましたし、『明日の撮影、大丈夫かな?』と考えて眠れない日もありましたよ。なかなかOKが出ずに、ずっと『ダメ! ダメ! ダメ!』ばかりのときは足がすくみました。そのときは、私ひとりがつらいように思えて…でも、出来上がった映画を観たら『ほかの方も絶対につらかったろうな』と思いました(苦笑)。自分は甘かったです。でも、逃げたいとは思わなかったし、ただ『どうすればいいのか?』とひたすら必死でした。負けず嫌いというのは、その通りだと思います。監督が怖いって噂を聞いてドキドキしてるんですが、その一方で『何を言われても負けたくない!』という気持ちで現場に入ってました。ただ、演じているときはまた違う気持ちというか――うまく言えないんですが、ものすごく緊張しているけど、本番になるとカメラの前に立って“加奈子”になるのが楽しくなってきました」。

撮影は3か月に及んだが、全てが終わって初めて、自分が役を演じ、作品の世界に入り込んでいたこと、そしてその日々が終わったということに気づかされた。

「いろんなことがあって、終わる瞬間は『あぁ、終わるんだ? 終わりというのが必ずあるものなんだなぁ』と思いました、あって当たり前なんですけど(笑)。『本当に終わるのか…』という気持ちと、『やっと終わる!』という気持ちが混ざって、なんだかこれまで詰まっていたものがすっと抜けたような気がして、監督が抱きしめてくれた瞬間に、ものすごく泣いてしまいました。その後、役を引きずったり、日常生活に支障が出るようなことはなかったですが、それでもクランクアップ後にちゃんと息ができるようになった気がして『終わったんだな』と実感しました」。

女優としてスタートラインに立ち、いままさに映画の公開に伴って多くの人々が女優・小松菜奈を認識しようとしている。この先、“重荷”ともなりかねない加奈子という強烈すぎるヒロインのイメージと共に。彼女は、こちらのそんな言葉に対し、静かに笑みを浮かべてこう語る。

「加奈子とは全く違う役も演じてみたいって、この作品を終えて、強く思いました」。

まだまだ、カメラの前で見せたことのない表情がたくさんあるようだ。
《photo / text:Naoki Kurozu》

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