※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【MOVIEブログ】2015年カンヌ映画祭予習(上)

ブログの更新が止まっている! いかんですね。目前に迫ってきたカンヌ映画祭では、今年もがんばって日記をアップしていきたいと思っています。ということで、その肩慣らしとして、カンヌ予習ブログを書いてみる!

最新ニュース スクープ
注目記事
THE OFFICIAL SELECTION
THE OFFICIAL SELECTION
  • THE OFFICIAL SELECTION
ブログの更新が止まっている! いかんですね。目前に迫ってきたカンヌ映画祭では、今年もがんばって日記をアップしていきたいと思っています。ということで、その肩慣らしとして、カンヌ予習ブログを書いてみる!

今年のカンヌ映画祭は、5月13日が初日で、24日まで。オープニング作品がフランスのエマニュエル・ベルコ監督の『Standing Tall』(英題)。女性監督によるオープニング作品はカンヌ史上2度目ということで、少しだけ話題になりましたね。そんなことはともかく、ベルコ監督は2013年のベルリン映画祭のコンペに出品されたカトリーヌ・ドヌーヴ主演の前作『Elle s’en va』(原題)がとても良くて、こんなにいいドヌーヴは久しぶりだなあ、と思ったのをよく覚えています。

今回の作品も主演がドヌーヴ。彼女としても前作でベルコ監督との仕事に手応えを感じたのでしょうね。そして共演に大注目のサラ・フォレスティエなので、ますます作品への期待が高まります。とはいえ、ベルコ監督はコンペに入りたかったのだろうなあ。今年はフランス映画が(まあ毎年そうだけど)多いので、オープニング作品でガマンしてくれ、と言われたのかな。いや、全くの想像ですけどね。

あ、以下、このカンヌ予習ブログで僕が書くことは、全て僕の勝手な想像や妄想に基づくもので、カンヌ映画祭内部に知り合いはいるけれど、そういう筋からの情報は一切ない(本当に知らないです)ことを、改めてではありますが、断っておきますね。でも、映画祭運営に携わっている身だからこそ想像できる部分もあるかもしれず、事実は知らないけど、そんなに的外れでもないんじゃないかなあと思ったりもしていますが。

さて、今年のカンヌのコンペ。ズバリ、今年のカンヌは変わった、あるいは変わろうとしている、ということがビシバシ伝わってくるラインアップです。こういう風に思うなんて、ここ数年無かったです。コンペの顔ぶれを見て、「ああ、また大御所オールスターそろい踏みだなあ」と、すこし揶揄するニュアンスを含めつつ、それでもずらり並んだスター監督の名前を眺めて興奮する、ということが長年カンヌでは続いていました。

それが、今年は違う。もちろん、スター監督はたくさんいるのだけど、初コンペだろうと思われる監督が4~5人いる(ごめんなさい、きちんと確認していないので、印象です)。そして、いままでならコンペに入って当然、と思われる監督が、コンペ以外の部門に回っている(か、カンヌ全体に選ばれていない)。これは、選定サイドが、明らかに意図的にカンヌの空気の入れ替えを図っているはずであり、大歓迎すべきことであると僕は思っています。

一応、コンペティションの作品を確認しておきましょう。面倒なので、タイトルは全部英語タイトルで統一します。日本未紹介の監督で、読み方に自信が無い場合はアルファベットのままにしてあります。

ジャック・オーディアール監督(フランス)『DHEEPAN 』
ステファン・ブリゼ監督(フランス)『THE MEASURE OF A MAN 』
ヴァレリー・ドンゼリ監督(フランス)『MARGUERITE & JULIEN』
マイケル・フランコ監督(メキシコ)『CHRONIC』
マッテオ・ガローネ監督(イタリア)『TALE OF TALES』
トッド・ヘインズ監督(アメリカ)『CAROL』
ホウ・シャオシェン監督(台湾)『THE ASSASSIN』
ジャ・ジャンクー監督(中国)『MOUNTAINS MAY DEPART』
是枝裕和監督『海街diary』
Justin KURZEL監督(オーストラリア)『MACBETH』
Yorgos LANTHIMOS監督(ギリシャ)『LOBSTER』
MAIWENN 監督(フランス)『MON ROI』
ナンニ・モレッティ監督(イタリア)『MY MOTHER』
Laszlo NEMES監督(ハンガリー)『SON OF SAUL』
ギヨーム・ニクルー監督(フランス)『VALLEY OF LOVE』
パオロ・ソレンティーノ監督(イタリア)『YOUTH』
Joachim TRIER監督(デンマーク)『LOUDER THAN BOMBS 』
ガス・ヴァン・サント監督(アメリカ)『THE SEA OF TREES』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(カナダ)『SICARIO』

よほど映画に詳しい人でなければ、名前を見てもすぐに誰だか分からない監督が、5人くらいはいるのではないかな。こんなこと、本当にカンヌのコンペでは久しくなかったことです。

で、そんな「無名」(じゃないんだけどね、本当は)の監督作品をチェックしていきたいのですが、中でも僕がとても楽しみなのが、ギリシャのYorgos Lanthimos監督による『The Lobster』。

海老ですよ、エビ。なんちゅうタイトル。が、これがまさしくLanthimos監督らしい。前作の『Alps』(11)は、人を喰った様なシュールなユーモアが秀逸で、ちょっとロイ・アンダーソン的というか、全く独自の世界観を構築するタイプの監督です(アルプスの次はエビかよ、っていうところで既に面白い)。今作はコリン・ファレル、レア・セドゥ、レイチェル・ワイズ、ジョン・C・ライリーなどの大物俳優を起用しており、どんな作品になるのか想像もつきません。ともかく、内容については一切知らないで見た方がいいことは100%確実なので、僕も上映日まで情報をシャットアウトするつもりです。

正真正銘の初監督作品が、ハンガリーのLaszio Nemes監督の『Son of Saul』。僕もこの監督の名前は知らないです。あのグザヴィエ・ドランでさえ、コンペに入るまで5本を要したのに(それを5年で達成したということが彼の異次元の天才性なわけだけど)、1本目がカンヌのコンペに入るとは、一体Laszio Nemesとは何者なのか。これは本当に注目でしょう。彼の存在こそが、今年のカンヌの変化へのチャレンジを象徴していると言えます。

『Macbeth』でコンペ入りしたオーストラリア人のジャスティン・カーゼル監督は、前作『Snowtown』が2011年のカンヌの批評家週間に出品されて、国際映画批評家連盟賞を受賞していましたね。僕は後になってDVDで見たのだけど、ちょっとよく覚えていないのだな…。確か、シリアルキラーが家庭に入ってきてしまう話だったはずで、ジャンルものではないのだけど、暴力をふんだんに盛り込んだインディー色の強いルックだったような気がする。それが今回はマイケル・ファズベンダーにマクベスを演じさせるということで、いやあ、どのように化けているのか、楽しみ。

デンマークのJoachim Trierも、日本ではまだ無名と言っていいかな。2011年の『Oslo, 31.August』がカンヌの「ある視点」部門に入り、それが2本目の長編作品だったので、今回3本目となる『Louder Than Bombs』でコンペ入り。同じトリアーである、ラース・フォンと同様に、かなりヘヴィーなパンチを繰り出してくる監督な印象があります。さて、今作はどうか。

メキシコのマイケル・フランコ監督は、前作の『父の秘密』が日本でも昨年末に一般公開されたので、知っている人は知っているでしょう。カンヌでは、2009年の処女作『Daniel & Ana』が「監督週間」に出品され、既に衝撃を与えていました。『父の秘密』は陰惨ないじめにあってしまう娘とその父の話で、『Daniel & Ana』では強制的にセックスをさせられる姉弟の話でした。かなりしんどくコントロヴァーシャルな内容を取り上げる監督と言っていいでしょう。今作『Chronic』がどういう内容なのか、僕は情報を入れないようにしていますが、スウィートなものであるはずがなく、覚悟して臨む必要がありそうです。

モニカ・ベルッチが主演した『ストーン・カウンシル』(05)が日本でも公開されているフランスの中堅監督ギヨーム・ニクルーも、コンペは初めて。どころか、ひょっとしてカンヌ自体が初めての参加ではないかな? とはいえ、現在絶好調なので、初カンヌで初コンペということに驚きはないです(最初は驚いたけど)。2013年の『La religieuse』はベルリンのコンペに出品された秀作だったし、特に2014年の『The Kidnapping of Michel Houellbecq』が秀逸で、作家のミシェル・ウェルベックが失踪した実際の事件を、彼が誘拐されたのではないかという仮説のもとに本人に主演させて映画を作るという、破天荒な面白さを持つ傑作だったのです。ということで、ジェローム・ドパルデューとイザベル・ユペールを迎えた最新作『VALLEY OF LOVE』で、いよいよ満を持してのカンヌのコンペ。これは本当に楽しみ。

以上が、カンヌのコンペとしては新鮮な顔ぶれですね。彼らを、お馴染みのビッグネームが迎え撃つわけですが、今年は何と言ってもイタリア勢が強い!

イタリアの常連組が今年のカンヌに集中するということは前からうわさされていましたが、やはり、モレッティ、ソレンティーノ、ガローネの3人が入ってきましたね。いやあ、これはしびれる。3本ともヨダレが垂れるほど見たいけれど、その中でも特に楽しみなのがソレンティーノの『YOUTH』。主演にマイケル・ケイン、共演にハーヴェイ・カイテル。予告映像を見たけれど(本当はなるべく見たくないのだけど、仕事上そうも言ってはいられない)、これは本当に良さそう。

5本入っているフランス映画の中では、ジャック・オーディアールは絶対に手堅い作品を作ってくるので、ハズレということはありえない。オーディアール、デプレシャン、ケシシュ、が現在のフランスを代表するビッグ3だと僕は思っているのだけれど、今年はデプレシャンが「監督週間」に回ったことで(まさに驚愕、後述)、オーディアールへの期待も高まるというものです。

フランス勢の中ではMAIWENN (マイウェン、でいいのかな)監督作品が楽しみ。警察内部を見事な集団劇として見せた『Polisse』で2011年のカンヌで審査員特別賞を受賞してから、4年。今作『Mon Roi』は一組の夫婦の長年に渡る愛憎の行方を描くドラマ(たぶん)で、ショートクリップを見た限りでは、かなり見応えのあるものになっている。夫がヴァンサン・カッセルで、妻がエマニュエル・ベルコ(=オープニング作品の監督ね)。マイウェンは役者の演出がとても上手いので、群像劇から一転した今回の設定にどう取り組んでいるのか楽しみ。

フランスの女性監督ではヴァレリー・ドンゼリもいる。監督長編2本目の『私たちの宣戦布告』が2011年のカンヌの「批評家週間」に出品された際に、「ドンゼリの作品がいいらしいよ」といううわさが駆け巡ったのをよく覚えています。「批評家週間」だと、コンペに比べて見た人が少ないので、うわさばかりが聞こえてきてヤキモキしたものですが、後で見てなるほどこれは素晴らしいと感激したものでした。さて、今作『MARGUERITE & JULIEN』はいかに。あ、書いていて気付いたけど、彼女もカンヌのコンペは初めてかな。

そしてアメリカからは、トッド・ヘインズとガス・ヴァン・サント。アジアからは、ホウ・シャオシェンとジャ・ジャンクーと、コレエダ。んー、強力だ。

ということで、「コンペ初参加組」「イタリア勢」「フランス勢」「アメリカ勢」「アジア勢」。とっても乱暴だけど、今年のカンヌのコンペはこのようにグループ分けが可能ですね。

そして、今年、カンヌ前哨戦のニュースで最も映画ファンを騒がせたのが、グザヴィエ・ドランの審査員選出でしょう。百戦錬磨のコーエン兄弟審査員長は、とてもバランスの取れた判断をする気がします。エンターテイメントもアート系も手掛けるコーエン兄弟は、いい意味で大方の予想に反しないまっとうな受賞結果をもたらすのではないかと、僕は思います。そこに、ドランがどのように割って入るか! 絶対に妥協しないでしょうからね、ドランは。果たして、クロージングは荒れるのか?
《矢田部吉彦》

関連記事

特集

【注目の記事】[PR]

特集

page top