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【MOVIEブログ】2015東京国際映画祭 Day9

30日、金曜日。今日も5時間寝たのでスッキリ。外へ出ると快晴。本当に今年は天気に恵まれて、ゲストにとっても我々にとっても素晴らしい年になった! 映画祭も、今日が実質最終日。いざ、ラストスパートへ。

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『走れ、絶望に追いつかれない速さで』 【MOVIEブログ】2015東京国際映画祭 Day9
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30日、金曜日。今日も5時間寝たのでスッキリ。外へ出ると快晴。本当に今年は天気に恵まれて、ゲストにとっても我々にとっても素晴らしい年になった! 映画祭も、今日が実質最終日。いざ、ラストスパートへ。

事務局に向かうべく六本木ヒルズの中をゆらゆらと歩いていると、松江哲明監督にばったり出会う。今年はお会いしないなあ、とちょうど残念に思っていたところなので、嬉しい。少しだけ立ち話して、お互い近況報告。落ち着いたらまたゆっくり飲みましょう。

11時過ぎに事務局に到着して、重要メールをチェックして、あっという間にお弁当タイム。金兵衛のお弁当。美味! それからしばし集中して、パソコンを叩く。12時45分に劇場へ。

13時から、『FOUJITA』の2度目Q&A。今年の映画祭で感動的に嬉しかったことはいくつもあるけれど、その中で最高の出来事のひとつが、小栗監督のお人柄に触れることができたこと。近寄りがたい芸術家のイメージを作品から勝手に抱いていたのだけれど、観客からの質問への回答はユーモアと機知に富んでおり、ステージを降りても変わらぬ気さくさで接して下さる。

Q&Aの中身は、フジタの生涯の色々なエピソードをあえて削ぎ落としていったという脚本作りの過程について、キャスティングについて、中谷美紀さんが素晴らしい女優であり、そして彼女に「あなたはキツネだよ」と言ったことについて、加瀬亮さんの完全主義者ぶり、そして映画の極めて重要な部分を担う長ゼリフを完璧にこなしたその才能について、フジタの疎開先を抽象的な日本の村という設定にした理由について、そして、フジタと西洋絵画との出会いが、現代の日本と西洋文化との接触において持ちうる意味について…。Q&Aを切り上げるのが、これほど無念なことはないくらい、充実の内容。

帰り際、先日のQ&Aで「現代映画における近代的自我への過剰な重視に対する警鐘」について発言されており、その指摘について刺激を受けていた僕は、今度この点ついてじっくりお話しをお伺いしたい、と別れ際に話しかけてみた。小栗監督は僕に正対してくれて、再会を約束して下さった。感無量。

事務局に戻り、2個目のお弁当。幸せだけど、瞬時に後悔。2個目を食べて、体が重くなってしまった…。バカだ。

15時に、アリーナに移動し、ウエダアツシ監督の『桜の雨』のイベントを見に行く。六本木ヒルズのアリーナのスペースには、「東京映画食堂」と銘打った有名シェフによるスペシャルなキッチンカーが並んでいる。本日まで、アリーナを覗きに行く時間が全くなかったので、楽しみにしていたにも関わらず、「東京映画食堂」のメニューを試せないまま。もっとも、事務局の美味しい弁当を一日5個食べているので、そもそも不可能なのだけど…。

それにしても、アリーナに行ってみると、あまりの天気の気持ちよさにうっとりする。5分くらい至福のリラックスタイムを過ごし、そして、出演者とともにアリーナに登壇した、映画祭事務局とも縁の深いウエダアツシ監督の雄姿を拝み、そのまま劇場へ。

15時半から、『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』の2度目のQ&A。ロドリゴ・プラ監督と、プロデューサーのサンディーニさん。タイトルの意味について、証言の集積で成り立つ変形フラッシュバック映画の構成と、その意図について。そして、巨大企業や官僚主義に対する庶民の抵抗の物語について。さらには、サッカーの実況が持つ補足的な意味について。この作品は、話を聞けば聞くほど、細部へのこだわりに興味が沸き、もう一度見たくなる。配給会社さんの英断に期待!

Q&A終わり、ロビーに出ると、旧知の面々に会う。モンスターが面白かった! という話の後に、昨夜の『ルクリ』が長いQ&Aを含めて最高だった、とのコメントをもらう。長いQ&Aについてはともかく、『ルクリ』が絶賛されるのはとても嬉しい。監督に対する僕の関心の深さが客席から見ていてバレバレだったらしく、普段と同じ姿勢でいたつもりの僕としては反省しきり。

16時半に事務局に戻り、1時間半ほどクロージングセレモニーの準備作業。

18時に劇場に行き、18時20分からスプラッシュ部門の『走れ、絶望に追いつかれない速さで』の上映前舞台挨拶。とても楽しみにしていた中川龍太郎監督のトークが、ようやく巡ってきた! 登壇は、中川監督と、太賀さん、小林竜樹さん、プロデューサーの木ノ内輝さん。監督の実体験をベースにした青春ドラマの誕生のいきさつを、太賀さんと小林さんに語ってもらう。本作で素晴らしい演技を見せる太賀さん、その太賀さんの向こうを張る小林さん。若いのに落ち着いて素敵な二人のとなりに、明るく元気な監督のコントラストが楽しい。ヘヴィーな内容を含むドラマだけれど、若く才能溢れる青年たちで壇上が輝く!

スクリーンを移動し、19時15分から、コンペの『カランダールの雪』の2度目のQ&A。ムスタファ・カラ監督、初回のQ&Aよりリラックスしている様子で、Q&Aは終始和やかな雰囲気で推移して楽しい。作品は観客に大いに支持されていることが客席から伝わってくる。主役のお父さんの身勝手振りに腹立たしさを覚える人もいるみたいだけれど、それを含めても、圧倒的な自然の力と映像の力、そして終盤の鮮やかな展開に感動することを止めることは出来ない。

ああ、これを書いている現在、4時半。もうちょっと無理かも。あとは箇条書きで! 充実のトーク続きなので、無念なのだけど!

20時から、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』の上映後Q&A司会。中川龍太郎監督とのQ&A。昨年、初めて中川監督とトークをしたとき、その元気さと爽やかな礼儀正しさが、才能ある映画青年のそれとは少し異質なことにとても感銘を受けた。『走れ』の映画祭出品が決まった時から、このトークを楽しみにしていたのだ。

やはり、面白い。30分では到底足りない。自伝的映画という切り札を切ってしまったことについてどう思うか、と聞かれ、全く切り札を切ったつもりはないです、ときっぱり言いかえす活きの良さ。アニメを超える日本映画を作って天下を取る(とは言っていなかったけど)と、明るく言い放てるのは、才能だ。僕は中川監督にその才能があると本気で信じ始めているし、天下を取るのもあながち大言壮語とも思えない。本当に今後が楽しみなのだ。

太賀さんが、牛鍋朝食を食べるシーンのあまりの素晴らしさの秘密について、セリフが少なく感じられる理由について、誕生はパブリックであり死はプライベートであるという認識について、自殺という行為の背景は決して知りえないことについて、自殺の前に明るい行動を取りえるかについて、邦題と英題について、そして、亡くなった友人の為に作り始めたこの映画が、実は自分が現状を乗り越えるために、自分の為に作っていくこととなったことに対する、一種忸怩たる思いについて。ここでもまた、興味の尽きることのない濃いQ&A。素晴らしい。

そして、たくさん書きたいけど時間と気力が尽きてきた! ああ、今度トークの感想を書きなおしたい。そして、中川龍太郎と、渡辺紘文、というふたりの才能を比べる文章も書いてみたい…。(写真は、中川監督と、素晴らしい英語通訳の後藤太郎さん)

21時から22時まで、クロージングの準備業務の続き。

22時から、スプラッシュ部門の『アレノ』のQ&A司会。越川道夫監督とのQ&A。プロデューサーから監督となったいきさつについて、山田真歩さんを迎えることになったいきさつについて、そして渋川清彦さんについても。僕からは、本作のヒロインの山田さんがファム・ファタルなのかどうかという質問をしてみる。監督の答えを僕なりに要約して書いてみると、本作は物語映画ではなく、従ってメロドラマではなく、つまりはファム・ファタルではないだろう、とのことで、その考え方はとても面白い。僕は、『アレノ』からは、犯罪の香りが漂う、いわゆるフィルム・ノワールや、シャブロルの作品を連想してしまうのだけど、実は越川監督が意識している監督がいるとしたら、それはジャック・リヴェットだということ。なるほど!

かなり壇上の会話がマニアックになってしまい、これではまずいのかな、と客席にもっと軽い質問でもいいのですよと促してみるものの、会場内にシネフィル的談義にシラケている気配は全くない。そうか、越川映画の客層はシネフィルということでよかったのか!?

ひとつの落としどころに向って感情を誘導する物語映画を、越川監督はファシズム映画と呼び、そういう映画は見るのも、作るのも怖いのだと語る。ああ、この言い方は面白い。もっと突っ込んで掘り下げたいと思うものの、30分では如何ともしがたい。今度もっとゆっくりトークがしたい! 映画の様々な業務に関わってきている中で、越川さんは監督業を特別視しているわけではないと語る。その一方で、それでもモノ作りは好きなので、やっぱり今後も監督はやると思いますよ、とのこと。とても今後を楽しみにしつつ、『アレノ』が劇場公開されたら見に行こう!

23時から、今回の東京国際映画祭、最後のコンペ上映、そして最後のQ&A司会。『家族の映画』。とてもとても不思議な内容を持つこの作品のQ&Aの内容については、出来れば明日書く!

深夜の作業が続き、ブログを書き始めたのが3時半、そろそろ5時。上映的には実質最終日だったけれども、クロージングという大きなイベントが待っている明日に備えて寝なくては!
《矢田部吉彦》

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