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日本公開は無理?キム・ギドクが福島原発事故を描いた問題作『STOP』ゆうばりで大反響!

韓国の鬼才キム・ギドクが2月28日、福島の原発事故をテーマに描いた問題作『STOP』を引っさげ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2016」に来場! 上映後に観客との質疑応答に応じ、作品への思いを口にした。

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キム・ギドク「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2016」
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韓国の鬼才キム・ギドクが2月28日、福島の原発事故をテーマに描いた問題作『STOP』を引っさげ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2016」に来場! 上映後に観客との質疑応答に応じ、作品への思いを口にした。

当初、ギドク監督の来場は予定されていなかったが、日本を舞台にした本作が初めて日本で上映される機会ということもあって急遽、来日が決定。本作のプロデューサーを務め、出演もしているアレン・アイと共に上映後の舞台挨拶に登壇した。ちなみに、ギドク監督のゆうばり映画祭参加は、2005年の『サマリア』上映以来11年ぶりとなる。

映画『STOP』は、おそらく日本では公開自体が難しいのでは? と思われるほどの“問題作”。原発5キロ圏内に暮らしていた夫婦が、東日本大震災の発生で避難を余儀なくされるが、地震発生時、妻はちょうど妊娠初期だったことから、奇形児が生まれるのでは? という恐怖が彼らを蝕んでいき、やがて予想外の展開を迎えることに…。

福島と東京を舞台にし、東日本大震災やその後の原発に関することを題材としつつも、フィクションを織り交ぜており、政府関係者と思しき人間が夫婦の前に突然現れて人工中絶を迫ったり、福島の立ち入り禁止区域に忍び込んだ夫が、そこで生活する妊婦と出会い、彼女の出産を目撃するなど、過激な描写が多数、盛り込まれている。

ギドク監督は「韓国の監督が福島の映画を撮って申し訳ありません」と頭を下げるが、一方で「原発や福島の問題は日本だけでなく世界中、地球の問題。いま、原発が増えており、現在は500基に満たないくらいですが、10年後には1,000基を超えると言われている。特に中国の東海岸で建設が進んでおり、ここで事故があれば韓国や日本にも影響がある」と警告を発する。

今回、日本人の俳優20名ほどを起用する一方で、撮影、録音、照明などをギドク監督一人でこなしている。この点について「福島の原発事故を扱うのは難しい作業になるとは思ってましたが、実際に、日本人の俳優さんを何人かキャスティングしようとして断られてしまいました。これは、スタッフ探しも難航すると思い、ひとりでやることに決めました」と経緯を明かした。その上で、アレン・アイをはじめ、出演を決断した日本人俳優たちに対し「その情熱と賢明な姿に感激を覚えました」と感謝を口にした。

あと十数日であの「3.11」からちょうど5年を迎えるが、監督は「こういう映画を見せることで、薄まっていた悲しみや痛みを引っ張り出して、傷に塩をすり込んでしまったのではないか…?」と日本人の前での上映への葛藤、不安を口にする。だが「人間には神が与えた“忘却”という恵みがあります。肉親の死を忘れることなどよくない記憶を忘れるという忘却もありますが、一方で、問題があることを知りながら忘れるという危険な忘却もあります。忘れることで楽になるのではなく、苦しくても環境を変えていく努力が必要なのではないでしょうか?」と訴えた。

本作の脚本は、原発事故の発生後2か月ほどの段階で執筆を始めたそうで、2014年の秋に撮影が行われた。そのプロセスでチェルノブイリの原発事故の資料を集めたとのこと。「センシティブな問題であるとはわかっていますが、これは我々の世代だけでなく次の世代にかかわる問題であり、未来に残してはいけない。そんな思いで妊婦を主題に置くことを決めました」と明かした。

映画の中には、震災から7年後という設定で、通常の人間の何千倍も聴覚が発達した人間が登場するが、ここにも監督のメッセージが。「原発に関しては賛成、反対どちらの意見も存在しますが、政府は反対派の声を聞きません。聞かないといけないものを聞こうとしない――それこそが障害ではないのか? というメッセージです」と語った。

日本での配給会社や劇場探しは難航しそうだが、韓国でも同じよう。「韓国政府は原発推進派であり、輸出さえしています。そんな国にとって、この作品は好ましくありません」と苦笑する。

日本の主要ないくつかの映画祭に出品を打診したものの、断られたようで「このゆうばり映画祭で上映できたことを驚きをもって受け止めていると同時に感謝します」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。日本で今後、いつ見られるかわからない貴重な上映の機会とあって、日曜の夜の上映にもかかわらず、多くの観客が会場に足を運び、質疑応答でも次々と手があがっていた。
《シネマカフェ編集部》

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