【インタビュー】“のだめ”“朝ドラ”ブレイクに溺れない、玉木宏「30」の本音

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『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』玉木宏/photo:Hayato Ishii
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  • 『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』玉木宏/photo:Hayato Ishii
  • 『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(C) 2016 映画「星籠の海」製作委員会
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  • 『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(C) 2016 映画「星籠の海」製作委員会
  • 『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』玉木宏/photo:Hayato Ishii
  • 玉木宏/『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(C) 2016 映画「星籠の海」製作委員会
代表作は俳優にとって、一つのステータス。その反面、そこで演じた役柄は強烈なイメージとして付きまとい、足かせとなる場合がある。20代で得た当たり役「のだめカンタービレ」は、俳優・玉木宏(36)にとって“諸刃の剣”だった。だが、玉木さんはその剣を器用に握りしめて10年ほど歩んだ結果、記録的視聴率の朝ドラ「あさが来た」に出会う。ところが当の本人は、その成功にも安住しない。「ここで満足したら成長は止まる。違うことに進まなければいけない。過去に自分が作り上げてきたものを壊していく作業をしていきたい」とストイックだ。しかし厳しい言葉とは裏腹に、表情は至って穏やか。その理由は“30”という数字にあった。

「のだめ」ブーム真っただ中の20代、すべての環境がガラッと変わった。「様々な仕事が同時進行的に重なった時期。体は休みたがっているけれど、頭に入れていかなければいけない状態で、ジャンジャン新しい仕事も入ってきて、追いつかないけれど追いつくしかない。正直『うわー!』となったこともあります」。ブレイクの裏には知られざる苦悩があった。しかも2000年代は、玉木さんと同年代の若手俳優が乱立した“若手戦国時代”。「同年代のライバルが多く、我先に! と少ないパイの取り合い。20代は焦りばかりでした」とふり返る。

心境の変化は30代突入を期に訪れる。「30」という年齢を分水嶺として、玉木さんと並走していた同年代の俳優たちが、それぞれの道を歩み出した。俳優を辞める者もいれば、自らのポジションを確立する者も…。玉木さん自身、30歳を起点に俳優を辞めていた可能性もあったという。それを引き留めたのは、この仕事が持つ“答えなき答えを追求する”面白さだった。「芝居には明確な答えがない分、奥が深い。これが数学のように単純明快に一つの答えが出てしまうような仕事だったら、僕自身もすぐに辞めていたかもしれない」。

焦りは薄まった。しかしその分、俳優としての自分を客観的に見つめることが増えた。“答えなき答えを追求する”面白さは、実は迷宮と表裏一体。30代後半になると、難しさを感じることも多くなった。「幼少期に思い描いていた夢のステージにいまの自分がいるかというと、そうは思えない。テレビや映画に出演させていただいているけれど、出たら終わりの世界ではない。演技をして結果を残さなければいけないし、責任も生まれる。煌びやかに見える一方で、経験すればするほど難しさも増える。大袈裟かもしれないけれど、アスリートの世界に近いものがある」と笑う。

その迷宮を抜け出す答えはまだ見えないが、前進するしかないことだけは分かる。「仕事を自分で選り好みしていないからこそ、これまでも色々なものに触れられて、吸収してきた。30代はこれから迎える40代、50代の基盤になるもの。20代以上に大事な時期。朝ドラの好調はとても嬉しいけれど、ここで満足してしまったら、成長は止まる。過去に自分が作り上げてきたものを壊していく作業をしていきたい」と後退は厳禁だ。

プライベート面の充実も、これまで以上に視野に入れている。「朝ドラでは父親役をやって、おじいちゃんにまでなったけれど、父親を演じるときは、自分自身父親である方が芝居に説得力が生まれるはず。朝ドラのように、家族皆が隠し事なく様々な話をして、最期は家族全員に看取られるという姿には憧れます。そういった経験は、実際に家庭を持たなければ実感できないことですから」といつかの未来に思いを馳せる。

新たな境地に立った玉木さんが「いまの年齢だからこそ、演じさせていただくことに意味がある」と思いを込めるのは、6月4日(土)公開の主演映画『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』。IQ300超の天才脳科学者の御手洗潔役で「衣装合わせでは僕の意見を尊重してもらえました。外出時の衣裳は黒では重い気がしたので、御手洗潔のキャラクター性を壊さないように、ビビットなカラーは外してアースカラーを取り入れた」とこだわった。原作者・島田荘司もそのトレースぶりを絶賛。玉木さんは「和泉聖治監督も島田荘司さんも信頼してくれるからこそ、それがプレッシャーにもなった。でもお二人が喜んでくれるので、それを信じて演じ切ろうと思った」と控えめだが、作品を躍進させる原動力は“座長・玉木”の存在にあることは間違いない。
《text/photo:Hayato Ishii》

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