謎の男が女子高生3人を拉致する冒頭に始まり、M.ナイト・シャマランらしい怒涛の展開へと進む『スプリット』。その脚本を「とにかく面白かった」と絶賛するジェームズ・マカヴォイは、すぐさまシャマラン監督の“共犯者”になることを選択した。「『どうなるんだろう?』と思いながら読んだし、演じる僕がそう思うくらいだから、観客もそう感じるだろうと思った。怖いけど、どこか愉快。その組み合わせからして奇妙だ。でも、僕は奇妙なものが好きだから(笑)。チャレンジングな役だとも思ったしね」。「チャレンジングな役」と言うのも納得。マカヴォイ演じる謎の男の正体は、20を超える複数の人格から成り立っている。「1つの役を演じるのだって作品によっては準備に時間がかかるものなのに、いくつもの役を演じなくてはならないなんて」とため息をついてみせるものの、その表情はどこか楽しげだ。「準備も撮影も通常の数倍になるってこと。撮影が深夜まで及ぶこともあったよ。でも、心から楽しめた。やらなくちゃいけないことは山ほどあったけど、充実していたんだ」。撮影が行われた場所はシャマラン監督のホームグラウンド、フィラデルフィア。「撮影で初めて訪れたのだけど、大好きな街になった」と目を輝かせる。「ただし、撮影中に街を楽しむことはできなかった。何役も演じてつらかったのは、そこぐらいかな。例えば『X-MEN』のような作品だとキャストも多いし、その分オフの時間もあるから、(撮影地の)モントリオールは僕の庭になった(笑)。いつでも案内してあげられるよ。でも、『スプリット』の撮影中はチーズステーキを食べたくらい。忙しくても、名物は食べなくちゃね。ナイトはフィラデルフィア・ボーイだから街のことを何でも知っているし、街の人たちも彼を知っている。ただ、残念ながら作品の中にもフィラデルフィアらしさはあまり出ていない。僕が少女たちを地下に監禁するからなんだけど(笑)」。とは言え、「撮影後にも何度か訪れたんだ。追加撮影があったし、プライベートでも行った。そのときはイタリアンマーケットに何度も足を運んだし、レストランやバーにもだいぶ詳しくなったよ。美味しい店を見つけるのは得意なんだ」とのこと。さすがは「訪れる先々を楽しみ尽くすタイプ」を自称するマカヴォイ。今回の来日時も、渋谷のんべい横丁やロボットレストランを訪れた写真をSNSにアップし、日本マスターぶりを見せていた。「特にナイトライフを楽しんだから(笑)。明治神宮や皇居など、文化的な場所にもちゃんと行ったよ。明るい時間にね。原宿にある“デウス・エクス・マキナ”のカフェにも行ったのだけど、店内にいる人は全員クールでファッショナブルだった。日本の人って何でみんなおしゃれなの? と思ったね」。
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