奥尻島を襲った大地震による津波で家族を失った10歳の花は、遠い親戚と名乗る男・腐野淳悟に引き取られることになった。あまりの喪失感で堰を切ったように泣く花に、淳悟は「俺は、おまえのもんだ」と手を握る。孤独な魂が共鳴するように、ふたりはお互いの手を握り続けた。彼らの生活をずっと見守っていた町の名士・大塩は、高校生になった花と淳悟のただならぬ関係に気づく。そのことを花に問い詰めた大塩は、ある日忽然と姿を消し、発見されたときには流氷の上で凍った状態。花と淳悟は人知れず暗い北の海から東京へ逃げた。ふたりだけの秘密を守るために、お互いを庇い合い暴走していく淳悟と花を待ち受けるものは―。
熊切和嘉