享保15年。藩の不正を訴え出たために時の権力に負け藩を離れた男、瓜生新兵衛。追放後、連れ添い続けた妻の篠が病に倒れ死を迎えようとした折、最期の願いを新兵衛に託す。「藩に戻りて、榊原采女様を助けてほしい」と。新兵衛にとって采女は、かつては良き友であり良きライバルであり、また篠を巡る恋敵でもあった。そして新兵衛の藩追放に関わる、大きな因縁を持つ2人であった。妻の最期の願いを叶えるため、新兵衛は過去の藩の不正事件の真相と、その裏に隠された妻・篠の本当の気持ちを突き止めようと奔走する。篠の妹、坂下里美とその弟・坂下藤吾は、戻ってきた新兵衛に戸惑いながらも、亡くなった篠を一筋に想いやる姿や、侍としての不正を正そうとする凛とした生き方にいつしか惹かれていく。そして、ある確証を得た新兵衛は、かつての親友の采女と対峙する。そこで過去の事件の真相や妻が遺した願いの苦しく切なくも愛に溢れた本当の想いを知ることになっていく――。
木村大作