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巨匠S・スピルバーグ監督インタビュー 『戦火の馬』に仕掛けた映画の“魔力”

1982年にイギリスから生まれた名作小説「War Horse」。第一次世界大戦中のイギリスとフランスを舞台に、希望を信じて生き抜く人間たちの姿を、一頭の美しい馬の目線を通して描いた感動作として多くの人々に愛され、2007年に上演された舞台は英国演劇界の最高賞にあたるトニー賞5部門に輝いた名作である。そんなイギリスが誇る名作に心奪われた男、言わずと知れたハリウッド映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグがこの作品と出会ってからわずか7か月で撮影に入ったという渾身の一作『戦火の馬』。巨匠スピルバーグはこの物語に何を見出し、その感動をいかにして伝えたかったのか? 少年のように情熱を注ぐ監督に話を聞いた。

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『戦火の馬』スティーヴン・スピルバーグ
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  • 『戦火の馬』 -(C) Dream Works Ⅱ Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
1982年にイギリスから生まれた名作小説「War Horse」。第一次世界大戦中のイギリスとフランスを舞台に、希望を信じて生き抜く人間たちの姿を、一頭の美しい馬の目線を通して描いた感動作として多くの人々に愛され、2007年に上演された舞台は英国演劇界の最高賞にあたるトニー賞5部門に輝いた名作である。そんなイギリスが誇る名作に心奪われた男、言わずと知れたハリウッド映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグがこの作品と出会ってからわずか7か月で撮影に入ったという渾身の一作『戦火の馬』。巨匠スピルバーグはこの物語に何を見出し、その感動をいかにして伝えたかったのか? 少年のように情熱を注ぐ監督に話を聞いた。

『未知との遭遇』('77)に『インディ・ジョーンズ』シリーズ、さらに奇才J.J.エイブラムスとタッグを組んだ『SUPER 8/スーパーエイト』('11)など、遊び心あふれる冒険活劇を数多く送り出し、映画ファンをワクワクさせてきたスピルバーグ監督。その一方で、『シンドラーのリスト』('93)や『プライベート・ライアン』('98)など、「戦争」を通しての人間ドラマを描き続けてきた。そんな彼が本作で描きたかったこととは?
『戦火の馬』は“勇気”について多くを語っているんだ。少年(アルバート)の勇気は、彼自身のためだけでなく親友である愛馬・ジョーイのために、耐えて乗り越えて求めていたことを成し得る。また、本作では驚異的な動物の勇気と不屈の精神も描かれている。この勇気というテーマは、マイケル・モーパーゴの小説にも、舞台版にも、そしてリー・ホールとリチャード・カーティスが書いた(本作の)映画脚本にも一貫して描かれているよ。これが映画『戦火の馬』の1コマ1コマに流れている潜在意識的なテーマだと、僕は思っているんだ」。

本作の大きな見どころとなるのが、雄大な自然を捉えた圧倒的な映像美。SF作品を得意とするスピルバーグ監督だが、本作ではほとんどCG技術を使わず、ありのままの自然の景色をカメラに収めている。その苦労の甲斐あってか、監督の予想を遥かに超える映像が生み出された。
「自然をありのまま描くために、太陽や正しい形をした雲を待ったんだ。僕が映画撮影において、ここまで太陽を待ったのはずいぶん久しぶりだよ(笑)。(『大いなる遺産』で知られる巨匠)デヴィッド・リーン監督は太陽が出てくるまでいくらでも待ったと(撮影監督の)ヤヌス・カミンスキーは言うんだけど、リーン監督は1本の映画に130日をかける余裕があった。それに対し、僕らは64日間しかない。ただ、自然光を使うべきだというヤヌスの主張を尊重したおかげで、目覚ましい効果を得たと思う。エンディングでは美しい太陽が出てくる。あれは撮影最後の3日間に素晴らしい夕陽に恵まれて、フィルターで強調してはいるけれど、本物の夕焼けをそのまま描いている。アルバートとジョーイにとっての新たな希望や約束の象徴として描いたつもりだよ」。

御歳65。人生の半分以上を映画に捧げ、ハリウッド映画の歴史そのものを象徴するスピルバーグ監督。本作は先日発表された第84回アカデミー賞にはノミネートされるも、惜しくも受賞ならずとなったが、同賞で快挙を果たしたモノクロ・サイレント映画『アーティスト』然り、マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』然り、古き良き時代の映画への“オマージュ”に光が当たっていた。本作で映し出される雄大な景色にもその精神が見て取れるのだが、監督の真意のほどは?
「少なくとも僕自身は意識的にはやっていないよ。この作品を手がけるにあたり、僕が唯一意図したのは、それぞれの土地をキャラクターとして描くことだった。風景をキャラクターとして描くことにしたため、アップよりもワイドショットを多用して観客に好きな箇所に注目してもらうようにしたんだ。こういう手法を多用していたのは、1930年代と40年代の映画ではジョン・フォード(『荒野の決闘』)。50年代には黒澤明(『七人の侍』)やハワード・ホークス(『紳士は金髪がお好き』)といった監督がやっていたものだよ。彼らは目の前にあるロケーションやスペースを最大限に利用して、撮影環境そのものをキャラクターにしたんだ。ただ、そういう手法を採用することによって、オマージュなんじゃないか? という解釈が出てくることは想像できた。でも、この作品は、ジョン・フォードやほかのどの監督へのオマージュでもないんだ。もしオマージュが存在するとすれば、それは馬のジョーイに対してであり、動物である彼がいかに様々な人間の人生を変えていくかという点だけに焦点を当てたつもりだよ」。

スピルバーグ監督がオマージュを捧げたというジョーイ役の馬の演技にもぜひ注目してほしい本作。最後に、そのジョーイと新星ジェレミー・アーヴァィンが見事に演じた少年・アルバートが生み出した“魔力”について語ってくれた。
「第一次世界大戦で馬のジョーイが役畜(軍事に使用される動物)として従軍するため戦争に送り出され、(アルバートと)離れ離れになる頃には、本物の感情のこもった共同関係が彼らの間に築かれていたんだ。だからこそ観客はその時点で、いつか必ず再会する運命の日がやってくるだろうと確信できる。そして、少年と馬にその運命の日が訪れる。そこがこの映画のちょっとした“魔力”のようなものになっているんだ」。
《シネマカフェ編集部》

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