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『ヒミズ』染谷将太×二階堂ふみインタビュー 重なり合う若き魂、互いをどう見てる?

2人が醸し出しているのは“独特の存在感”なんていう生やさしいシロモノではない。異彩、違和感…いや異物感? 10代にして染谷将太と二階堂ふみは、ほかの同世代の俳優たちにはない、形容しがたい“何か”を身にまとっている。そしてそれは映画『ヒミズ』において、鬼才・園子温の手を介して化学変化を遂げ、衝撃と共に観る者の心を貫く。彼らの叫びは、言葉にならない魂の咆哮は、痛みはどのように生まれたのか? 2人に話を聞いた。

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『ヒミズ』染谷将太&二階堂ふみ photo:Naoki Kurozu
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2人が醸し出しているのは“独特の存在感”なんていう生やさしいシロモノではない。異彩、違和感…いや異物感? 10代にして染谷将太と二階堂ふみは、ほかの同世代の俳優たちにはない、形容しがたい“何か”を身にまとっている。そしてそれは映画『ヒミズ』において、鬼才・園子温の手を介して化学変化を遂げ、衝撃と共に観る者の心を貫く。彼らの叫びは、言葉にならない魂の咆哮は、痛みはどのように生まれたのか? 2人に話を聞いた。

「行け!稲中卓球部」などのギャグ漫画で知られる古谷実が笑いを封印して送り出した異色の漫画作品を原作とする本作。一切の夢も希望も持たず、ごくごく普通に生きることだけを望みつつも、そんな思いとは裏腹に絶望的な非日常に巻き込まれていく住田と彼を慕ってやまない茶沢の壮絶な青春を描き出す。さらには3.11の東日本大震災発生を受け、設定を「震災後の日本」に変更し、全ての撮影が終わった後で被災地での撮影が敢行された。

少年は佇む。雨の中に、崩れ落ちた被災地の静寂の中に。もがき、這いずる。泥の中を。住田という役を演じる上で、園監督に染谷さんが与えられたのは、ただひたすらの“自由”。だが、自由に演じるほど難しいことはない。
「(脚本の)ト書きがないんです。いや、あるけど関係ない。無視して勝手に動いて、セリフも自分が言いたいように変えながら演じました。でも単に『自由に』と言われてもできなかったですよ、最初。一番初めのリハーサルなんて(二階堂さんと)2人で突っ立ってただしゃべってるだけでしたから。確かにそれじゃ面白くないですよね(笑)。自由にやらせてくれるんですが、自由にやれるように園さんはリハーサルを何度も重ねてくれたんです。そうやってリハーサルを重ねるにつれて体が軽くなっていくのが分かりました」。

本作に限らず、ひと癖もふた癖もある役どころを演じることが多い染谷さん。役柄へのアプローチについては「毎回、監督によって違いますが…」と前置きし“捨てること”の重要性を説く。
「調べ物をして知識を蓄えたり、用意したりするんですが、常に一貫しているのは、クランクインしたときにそれらを全て一度、捨てるんです。正確に言うと捨てざるを得ない。(蓄えてきたものが)無意識に出ること? はい、それはありますよ。でも意識すると出過ぎちゃう。なるべく影響されないように…と言ってもどこかしらで影響されるものなので。何て言うか…やってみたら分かるんですよね」。

二階堂さんは時に強烈なパンチを浴び、河原を転げ落ちながら、突飛で破天荒でひたむきな茶沢を体現した。「基本的にあまり考えるタイプではないので、いわゆる“役作り”はしません」。真っ直ぐな瞳でこちらを見つめながら茶沢になりきっていく過程を明かしてくれた。
「特に今回は現場で感じたままをそのまま出すのがいいかなと思いました。とにかくやってみようと、現場でのテンションや雰囲気、空気感を大切にしました。役柄に関してはどんな役もやっぱり私自身だから、演じながら『この子はこういう子だな』とか感じたりすることはほとんどないんです。その中で今回、茶沢になって、ものすごく住田が好きで、『守ってあげたい、守りたいよ』という気持ちが素直に込み上げてきましたね。クランクインしたその日から、自分が茶沢としてそこに立っているというのがすごく感動的でした。茶沢として成長するというよりも、私にとっては住田との距離を縮めていくということが何より重要でしたね。2人の距離が茶沢に直結しているというか…日に日に住田との距離が近くなっていくのをひしひしと感じていました」。

「住田と茶沢の若さがエネルギーの塊だったと思う」(二階堂さん)、「人間力…人の力ってすごいなというのをこの映画に関わる役者や全てのスタッフを見て感じた」(染谷さん)と、2人はこの作品の根底にある“強さ”を分析する。特に観る者の心に突き刺さってくるのが、ヴェネチア国際映画祭でも反響を呼んだという、茶沢による「がんばれ住田!」の連呼。汗と涙にまみれながら茶沢は住田を励まし続ける。気安く言われたら腹が立つ「がんばれ」という言葉だが、少女の叫びは素直に心に響くと同時に一緒に叫び出したくなるような衝動さえももたらす。
「心の底から…本当に嘘のない『がんばれ』を言いましたね。セリフではなく自然と出てくる言葉でした。ラストがああいう形で本当によかったと思うし、私自身もあのシーンでオールアップだったんですが、ものすごく感動しました」(二階堂さん)。

役柄やシーンについて2人で話し合うことは「全編を通じて一度もなかった」(染谷さん)という一方で、撮影の合間には他愛もないおしゃべりで盛り上がることもあったとか。映画の中でこれだけの“化学反応”を見せている2人が普段はどのように絡み、互いをどのように見ているのか気になるが…。染谷さんが明かす。
「ふみちゃんはイタズラっ子ですね。どんなことされたか? いや、特にイタズラされてないかもしれないんですが(笑)、何かイタズラっぽい悪い顔をするんですよね。(二階堂さんを指しつつ)ほら、こういう顔です(笑)」。

一方の二階堂さんは染谷さんについてしみじみとこう語る。
「お父さん…ですかね(笑)? 父親のように見守ってくれます。前世ではきっとお兄ちゃんですね。兄妹だったんじゃないかって思ってます」。

ここに描き出されるのは底なしの絶望でも単純な希望でもない。生と死、肯定と否定、愛と憎悪が入り混じり、3.11以降の新しい世界を静かに照らし出す。2つの若き魂が引き起こしたディープインパクトを肌で感じてほしい。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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