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【MOVIEブログ】ベルリン2015 Day2

6日、金曜日。曇り。6時半起床で、朝食をたらふく食べて、8時過ぎに外へ。曇天。気温は0度くらいで、寒いは寒いけど、まあ震えるほどではないかな。マーケット会場に寄って明日のチケットを確保して、メイン会場へ。

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6日、金曜日。曇り。6時半起床で、朝食をたらふく食べて、8時過ぎに外へ。曇天。気温は0度くらいで、寒いは寒いけど、まあ震えるほどではないかな。マーケット会場に寄って明日のチケットを確保して、メイン会場へ。

9時から、コンペ作品でジャファール・パナヒ監督新作『Taxi』へ。年初より「表現の自由」を巡る議論が欧米(日本も)で猛烈な熱を帯びている中で、数年前からその自由を政府によって奪われているパナヒ監督への注目度がさらに高まっているからか、会場は超満員だ。

そんな見る側の前のめりの姿勢を軽くいなすかのように、パナヒ監督新作は素晴らしく肩の力が抜けた傑作だった! パナヒ本人がタクシーの運転手に扮し、乗り降りする乗客とのやりとりを通じ、パナヒの見る現代イランの姿を伝えてくるドラマ。筆舌しがたい辛い状況に置かれているはずなのに、全編にユーモアが溢れ、しかしそれでもパナヒが抱いている想いやメッセージは確実に伝わってくるという展開の巧みさに、舌を巻くばかり。

画面に映るパナヒの表情が、実に生き生きとして豊かなものであることが、見る者の胸を熱くする。表現者たるものの矜持を見た思いがする。そして、この作品を映画祭の序盤に持ってきたベルリン映画祭の姿勢も、素晴らしいの一言だ。

続いて11時15分から、「パノラマ」部門に出品されているセバスチャン・シルバ監督新作の『Nasty Baby』へ。NYで暮らす男性のゲイのカップルが子どもを作ろうとして、友人の女性と共同作業を試みるものの、事態は思わぬ方向へ転がっていく、というドラマ。NYのアーティストの暮らしを軽やかに描くセンスのいいアメリカン・インディー作品と思わせつつ、事件が起きる終盤での突然の転調に面食らってしまう不思議な展開。去年からずっと見たいと思っていた作品で、やはり見過ごせない出来だ。

上映終わり、簡易ランチを食べて、午後は映画会社とのミーティングへ。あらかじめブッキングしたものと、飛び入りで話をしたものを含め、今日は4社のみ。少ないけど、結構な収穫もあったので、充実。

16時半から上映に戻り、「フォーラム」部門で『After Work』というドイツのドキュメンタリー映画。まずまず。

続いて18時からメイン会場の入場列に40分ほど並び、コンペでウェルナー・ヘルツォーク監督新作『Queen of the Desert』へ。主演はニコール・キッドマン、共演にジェームズ・フランコで、今年のベルリンの話題作の1本だ。

本作は、第一次大戦後の中東地図に対して影響を与えたとされる英国人女性のガートルード・ベルの姿を描くもの。これほどタイムリーな作品はないだろうという意味では、パナヒ作品に勝るとも劣らない重要な「現在性」をまとった映画である、はずだ。

しかし、現在の中東アラブ世界を読み解く鍵を本作が与えてくれることはなかった。そもそもヘルツォークの意図はそんなところにはなかったのかもしれない。ガートルード・ベルという聡明で勇敢な女性が無謀にも中東を旅する姿を描くもので、旅立ちの動機となった悲恋がドラマチックに物語られ、ニコール・キッドマンの美貌に対する賛歌とも呼びたくなる作品だ。ひねくれ者のヘルツォークの面目躍如と言えないこともない。

帝国主義列強諸国の中で、唯一アラブの民の信頼を勝ち取り、多大な影響を及ぼすに至ったガートルードという存在をアピールする内容ではあるものの、どうして彼女だけにそれが可能であったのかは、説明されない。絶世の美女だったから? 勇敢で、高圧的な男社会に負けない度胸を備えていたから? 実際にそうであったのかもしれないけれど、それだけではないだろう、という見る者の疑問に対する答えは、ついに与えられることはない。

もしかしたら、そんなことが分かるくらいだったら現在こんなに苦労しないはずだ、というヘルツォークからの深淵なる答えだったのかもしれない。現在の世界が直面している状況において、あまりにものんきな作品であると思うべきか、それともバカ正直に正面から向き合うだけが能じゃないはずだと思うべきか、どことなくヘルツォークの手のひらの上で踊らされている気にもなるけれど、いずれにしても賛否両論が分かれる作品になるはずだ。

「表現の自由」のパナヒと、「中東情勢」のヘルツォーク。映画への評価は分れるかもしれないけれど、社会派たるベルリン映画祭の、これこそ面目躍如であることは間違いない。

続いて22時から、これもコンペ部門で『45 Years』というイギリスの新人監督による作品。結婚45周年を迎える夫婦の物語で、結婚前の夫の秘密が明らかになることで親密だった夫婦の仲が揺らいでいく様を描くドラマ。脚本が秀逸で、主演のシャーロット・ランプリングも素晴らしい。これは収穫。

ただ、渡欧直後で22時台の上映はなかなかしんどい!上映終了し、宿に戻り、なんだかんだで既に2時。パナヒ作品もヘルツォーク作品も、もっとちゃんと書きたいのだけれど、とりあえず朦朧としながら第一感想だけ書いて、今夜は限界。おやすみなさい!
《矢田部吉彦》

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