【MOVIEブログ】2015 東京国際映画祭作品紹介(ラスト)

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『シーズンズ 2万年の地球旅行』
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22日(木)に開幕する東京国際映画祭で上映される作品の紹介ですが、いよいよ最終回になってしまいそうです。もっとたくさん書きたかったのですが…。なので、これだけは触れておきたい、という作品について短めに書いていこうと思います。

『シーズンズ 2万年の地球旅行』
「特別招待作品」部門の1本で、東京国際映画祭での上映がワールドプレミアです。圧巻のネイチャードキュメンタリー。僕は先日試写で拝見し、「まったくもうどうやって撮っているんだ~?」と驚愕してばかりの映像でした。2万年前の地球からスタートし、地球全体の進化や人類の登場とともに、森の動物たちの暮らしがいかに変わってきたかを描いていきます。もう、森のありとあらゆる動物が、ありとあらゆる「演技」をするのですが、いやあ、まあ、本当に素晴らしい。僕はバイソンが大好きなので、たっぷりバイソンを見られたことにも大興奮であります。

製作チームは『WATARIDORI』や『オーシャンズ』で、既にこのジャンルの第一人者としての名声を確立しているジャック・ペランとジャック・クルーゾのコンビ。最新技術を駆使して、ド迫力の映像を実現させていますが、やはり最終的には、想像を絶する過酷な自然環境の中に身を置いて「その瞬間」を待つという、体力と忍耐力と運の勝負であろうということが強く伺える、奇跡の映像の連続です。これはとにかく大きなスクリーンで見るべし! ですね。

それにしても、ジャック・ペランがこのような人になるとはなあ。僕はいまだに驚いていますが、多くのフランス映画ファンが同様なのではないかな。人のキャリアというものは、本当に分からないものですね…。

というのはどうでもいいとして、とにかく家族連れでもカップルでも、もちろんひとりでも、楽しめること間違いなしの作品です。

『KAMPAI! FOR THE LOVE OF SAKE』
良い意味で僕の事前の予想を裏切ってくれたのが『KAMPAI! FOR THE LOVE OF SAKE』です。日本酒の魅力を伝えるドキュメンタリーだろうと思って見始めたのですが(それだけでも十分に魅力的ではあるのですが)、実に豊かな人間ドラマであったのです。

映画は、3名の人物に焦点をあてていきます。ひとりは、全く日本酒と関係のない理由で来日し、ふとしたきっかけで日本酒の魅力にはまり、やがて英語で日本酒のガイドブックを刊行し、いまや「日本酒の伝道師」と呼ばれるアメリカ人の男性。ふたり目は、全く日本酒と関係のない理由で来日し、ふとしたきっかけで日本酒の魅力にはまり、やがて京都の酒蔵で酒造りに関わるようになるイギリス人の男性。そして3人目が、岩手の酒蔵「南部美人」の若き杜氏の日本人男性。

この3人の話が、実に面白いのです。ガイジンがいかに日本酒にはまっていくか、その過程がとても興味深いし、見ているこちらは、なんというか、感謝の念みたいなものがふつふつと湧いてくるような気がするのです。これまでの人生を語る岩手の杜氏の語りも、これがまた感動的なのでした。そして何よりも、めちゃくちゃ日本酒が飲みたくなる。たぶんお酒を飲まない人も、飲みたくなってしまうのではないかな。日本酒の魅力を十分に伝えつつ、そこに関わる人間も十分に描いていくという、うん、これは本当にいいドキュメンタリーです。

監督の小西未来さんは、LAの大学で映画を勉強した方で、10数年来雑誌「CUT」での連載を愛読していた人も多いのではないかな。僕もそのひとりでした。今回このような素敵な映画を作られたということで、お会いするのがとても楽しみです。

さらに! 本作の上映は25日(日)の午前10時半ですが、上映後、六本木ヒルズのアリーナで、日本酒のイベントがあるそうです! 前述の通り、作品を見たら絶対に日本酒が飲みたくなるので、これは絶好のイベントになるはずです。アリーナに設置される「東京映画食堂」と連動したイベントになるとのことで、日曜日のランチは幸せなことになるはず!

ということで、おそらくこのイベントの司会、僕がやります。ハハ。午後にもたくさん司会があるし、本当は飲んじゃだめですけどね。ひとなめだけ、許してもらおうかな。

『ジョーのあした -辰吉丈一郎との20年-』
これまた、実に前例のないようなドキュメンタリー作品です。あの坂本順治監督が、日本ボクサー界最大のスターのひとりである辰吉丈一郎に、自発的に(つまり仕事ではなく、というか、誰に頼まれたのでもなく)インタビューをし続けており、映像で記録していたようなのです。そのインタビューは実に20年の長きに渡って行われており、この度ついに1本の映画作品としてまとめたというのが、『ジョーのあした -辰吉丈一郎との20年-』なのです。

もう、この説明だけで、付け加えることは何もないですよね。饒舌とはほど遠いはずの不屈のファイターと、日本映画界が誇る実力派映画監督との奇跡的な出会いと、絆。いや、阪本監督が『どついたるねん』('89)と『鉄拳』('90)というボクシング映画でデビューしたことをすぐに想起するファンにとっては、両者の出会いは奇跡ではなく必然であるでしょう。中身については触れません。一時代を築いた(そして現在進行形でもある)ボクサーの人生の軌跡を、とくと目撃されたし。

ドキュメンタリーが続きましたが、他にも『イザベラ・ロッセリーニのグリーン・ポルノ』『イングリッド・バーグマン(仮題)』や、『WE ARE Perfume - WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』『わたしはマララ』(いずれもパノラマ部門)などもあって、今年の東京国際映画祭はドキュメンタリーがなにやら賑やかですね。『わたしはマララ』は、17歳でノーベル賞を受賞したマララさんの姿を描くもので、現在彼女は自由に表舞台に出ることがままならない状況にあるだけに(その理由は映画を見れば分かる)、映像でその素顔を見ることが出来るのはとても貴重です。

アイドルドキュにしても、過去には『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』('11)のような快作の例もあるので、全く気が抜けません。PERFUME作品は僕もまだ見ていないので、とても楽しみにしています。

んー、紙面が、というか時間が尽きてきた! 最後もう少しだけ。

『告別』
「アジアの未来」部門を全然紹介出来ていなくて悔やまれるのですが、『告別』に触れないわけにはいきません。新人女性監督による長編デビュー作で、実に心に染みる完成度です。北京で暮らす内モンゴル出身の家族の物語。監督の自伝的作品で、病気の父と時間を過ごすために実家に戻る娘の役を、監督自らが演じています。

内モンゴル出身ということから連想されるような素朴な暮らしを送る家族ではなく、プルジョワというか、新興富裕層の家族であるという設定が現代的で新鮮です。しかし作品は中国への同化の難しさや消費経済の矛盾を描くものではなく(深い根底にあるかもしれないとしても)、父と娘の間に流れる複雑な感情の描写を軸にした、普遍的な家族の物語です。

病気の身である父のガンコで繊細な人物像がとてもいいし、ここでは書かないけれど、父の職業が作品に思わぬ奥行をもたらして感動します。監督にとって本当に大切な作品であることが、手に取るように伝わってきます。まさに『告別』は小さな宝石のような作品であり、今回の映画祭で数多く上映される中国映画の中でも、出色の出来の1本だと思います。

『ボディ』
「ワールドフォーカス」で紹介しきれませんでしたが、今年のベルリン映画祭で監督賞を受賞した『ボディ』も必見の作品です。見てもらえば、さすが監督賞と納得してもらえるはず。とてもセンスと才能に恵まれた監督であることが伝わってくる鮮やかな作品で、人を喰ったようなブラックユーモアをまぶせ、病んだ心と肉体(ボディ)の関係を、スピリチュアルな要素も含みながら描いていきます。これも、何とかして見て頂きたい…。

さて、映画祭開幕2日前で、現在午前3時40分。準備作業の傍らで作品紹介をちびちび書いていましたが、文章も雑になってきたので、作品紹介はこれにて打ち止めにしますね。

明日からは、映画祭日記をアップしていくつもりです。紹介した作品が(紹介していない作品でも)面白かったと言ってもらえることを夢に見つつ、これから本番に突入していきます。がんばります。
《矢田部吉彦》

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