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【インタビュー】MIYAVI、アンジー監督作『アンブロークン』で迎えた“試練”

戦争で直面した苦難を強い精神で生き抜いた元オリンピック選手にして、元米兵のルイ・ザンペリーニ。彼の実体験をもとに、47日間の漂流と2年間の捕虜収容所暮らしを経て、…

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『不屈の男 アンブロークン』MIYAVI/photo:Nahoko Kosugi
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戦争で直面した苦難を強い精神で生き抜いた元オリンピック選手にして、元米兵のルイ・ザンペリーニ。彼の実体験をもとに、47日間の漂流と2年間の捕虜収容所暮らしを経て、一人の男が到達した赦しの境地を、アンジェリーナ・ジョリー監督が描くヒューマンドラマが『不屈の男 アンブロークン』です。

ルイが身を以って示す不屈の精神と正面から対峙することになるのが、日本軍の収容所長・渡辺伍長。映画の中で演じるのは、ギタリストのMIYAVIさんです。インタビューのため目の前に座っている彼は、劇中、軍服姿でサディスティックかつ冷酷な表情を見せる人物とは打って変わり、アーティストらしい華やかさと人懐っこい優しい表情を同居させた好青年。世界デビューを果たし、世界約30か国で250回以上もの公演を行ったアーティストながら、今回、初の映画出演を果たし、しかも冷酷無比な日本軍人という難しい役を演じました。それについて、MIYAVIさん自身は、挑戦ではなく“試練”と表現しています。

「実在の人物を演じる責任をすごく感じましたし、日本人として、自分の生まれた国のネガティブな面を表現することのためらいは正直ありました。なので最初は受けるつもりはなかったんです。でも監督であるアンジーと話をして、ルイのメッセージ、生き方、最終的に人を赦すことに至る境地、人としての強さを伝えるためなら、とても意義のあることだと感じました。単なる戦争映画ではなく、ナショナリティを超えたヒューマニティを伝える作品にしたいと伝えられました。」。

ルイ本人、そして収容所で過酷な暮らしを経験した元米兵たちにも会ったといいます。「彼らの中にも日本食が好きだったり、同じ収容所の中にも日本兵と友達になった人や、日本女性と結婚して家庭を築いた人もいる。ルイとの会話や、今回の撮影を通じて、戦争で人間は過ちを犯したけれど、それを乗り越えて、未来のため、次の世代のために生きていくという人間の強さを感じました。ルイはアメリカンヒーローではなくて、国も言葉も文化も全部超えて、ひとりの人間としての手本になる人。たまたま今回は、舞台が日本だっただけで、同じようなことがアメリカの日本人収容所や世界中の至る所で行われていた。そして今も世界のどこかで起きている。何よりも、同じことを繰り返さないという事。それを次の世代に伝えていく為であればそこに意義はあると思い、出演を決心しました」。

アンジーと話をして出演へ心が動いたとはいえ、映画はできてみないとわからないもの。「不安はありましたよ。それでもアンジーを信頼できた理由は、彼女の人柄やこれまでの活動ですね。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と一緒に世界中の難民の人たちのために活動し、ずっと支援をしています。ていうか、日本語だと名前が難しいですよね(笑)。僕も彼女に紹介してもらいレバノンに行かせてもらい、シリアの難民の人たちと一緒に時間を過ごしました。彼女はそういう活動、サポートを何年もずっとしている。未来に貢献するためアクションを起こしている。今回の作品も彼女のミッションのひとつだと感じました。最初にお会いした時にはブラッドもいて、“What’s my name, what’s my name”って僕の曲を歌ってくれて(笑)ライブにもよく来てくれます。彼らはもちろんスターではあるけれど、親として、人間として本当に勉強させられます。今回、打ち上げのときに、“MIYAVIのパフォーマンスをみんなに見せたい”と、日本からクルーを呼んで、共演者や関係者の前でライブを企画してくれました。みんな、軍服姿のMIYAVIしか知らないだろうからって(笑)撮影中は、他のキャストとは距離を置いていましたが、撮影を終え、一緒にセッションをやったり乾杯できて楽しかったです」。

きっとアンジーにとって、信頼して誰かと仕事をするということは、人としても惚れこむということ。仕事が終わってからの付き合い方にも、彼女の人柄が表れています。「映画作りは、僕が音楽でしていることと共通するんです。音楽なら、メロディがあって、ドラムやギター、オーケストラならヴァイオリンやチェロがあって、みんなが自分たちの役割を持ってハーモニーを作り、ひとつの作品を生む。そうやって作品の一部になる。それと同じだと感じました。役どころは難しいものだったけれど、自分が役に徹するほど、この作品のメッセージは浮き彫りになる。ならば意義はあると思い挑戦させてもらいました。」

狂気の中に色気すら漂う渡辺伍長。自らがキャスティングされた理由をどう考えているのでしょう。「役者でなく、ミュージシャンであるということ。表現するという意味では、ステージでパフォーマンスするのも、カメラの前で演じるのも同じこと。アンジーはこの役のキャスティングにエキストラが大勢いる中で、その場を支配する力を求めていたと聞かされました。実際に、ライブにも来てくれたり、ひとりのアーティストとして評価してくれたのは嬉しいことです。今回、オーディションというオーディションらしきものも受けなく、リハーサルもほとんどなくて。ただ、アンジーとは人物像について話し合いました。彼女もとても慎重でした。渡辺伍長をよくある悪役にはしたくないとも言っていました。戦時中において、ひとりの人間としての葛藤、脆さ、弱さを表現できれば、彼を含めた、全ての戦争の犠牲が浮き彫りになると考えました。圧倒的に優位なポジションにいるのに、心は満たされておらず、常にルイを意識して憧れているようでもある。そして、ルイも同じような感情を渡辺に抱いている。そんな複雑な関係性を表現できていれば、成功なのではないかと思います。できることはすべてやりました」。

実は、アンジーからは演技についてのアドバイスは一切なかったとか。「そのかわり、現場で僕たち演じる側がどう感じるかをすごく敏感に感じ取ってくれました。彼女自身、女優ということもあり、こちら側の気持ちに立って導いてくれました。クライマックスではセリフがない中で、感情の推移を表現する必要がありました。ルイへの憎しみ、焦りが、怯え、恐怖に変わり、渡辺が崩れていくシーンがあったんです。それが難しくて。二日間にわたる撮影でしたが、1日目が終わった時点で、感情的になって涙も全部、出つくしちゃったんです。カメラチェンジの間もずっと泣いていて(笑)、2日目は逆にそこにいけなくて。キャストもエキストラもスタッフふくめ何百人も待っているのに、どうしてもセットに入れなくて。僕はプロの役者ではないので、それまでずっとオンにしていたものが、ふっと切れてしまったんです。そうしたら、アンジーが“MIYAVIのタイミングでいいから”と言ってくれて。でも、それが逆にプレッシャーになりました(笑)。彼女は、ただ映画を作っているのではなく、メッセージを伝えるというミッションを持っている。それが未来にとって、世界にとってプラスになるという信念を持って突き進んでいる人。それを感じることができて沢山のことを学ばせてもらいました。より多くの人に届くことを願っています」。

大きなメッセージを運ぶ、壮大なるヒューマンドラマ『不屈の男 アンブロークン』。MIYAVIさん渾身の熱演により、未来への伝言はよりはっきりと輪郭を見せています。彼が披露した不屈の精神も、ぜひ劇場で目撃してみてください。
《text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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