【MOVIEブログ】2016ベルリン映画祭 Day7

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「パノラマ」部門の韓国映画『The Bacchus Lady』
  • 「パノラマ」部門の韓国映画『The Bacchus Lady』
17日、水曜日。映画祭も後半戦、というか終盤戦。今朝も6時半起床、8時に外へ。青空が広がっている! 気持ちいい冬の空が戻ってきた。

毎朝恒例の9時からのコンペ部門の上映で、アメリカの『Zero Days』という作品へ。現代サイバー戦争の最前線を描くドキュメンタリー作品で、ウルトラ超高度のサイバー・ウィルス兵器をアメリカとイスラエルが共同で開発し、イランへ攻撃を仕掛けた事実を暴くことを軸に、新しい戦争のあり方を考察していく内容のもの。

各機関の重要人物から証言を引き出し、機密事項に迫っていく展開は驚きの連続で、とても勉強になる。映画としてどうこうというよりは、とにかく出来るだけ分かり易く内容を伝えていこうという「トーキング・ヘッズ」(=様々な人物がカメラに向かって語る)中心のアメリカン・スタイル(というドキュメンタリーのスタイルが存在するわけではないけれど)の作品。通常であれば特別招待部門で上映されるタイプの映画だけれど、コンペに入ったということは、ベルリン映画祭ならではのメッセージなのかもしれない…。

続けて12時から、コンペ部門で、トーマス・ウィンターベア監督新作の『The Commune』。いまだ本命不在の今年のベルリンコンペにおいて、期待が高まるばかりだった本作、僕も気合いを入れて臨んだものの、んー、残念な結果であった!

70年代を舞台に、大邸宅で共同生活を始める大人の男女たちを巡るドラマで、家の持ち主である夫婦の関係の危機を軸に進行する構成。60年代的ヒッピー共同体への幻想を引きずった大人たちが陥る罠、というプロットに興味は持てるものの、展開がどうにも作為的で映画に入っていけない。『セレブレーション』を筆頭に、感情移入などは出来ないけれども力づくで映画には引きずり込まれてしまうというのが、ウィンターベア(や、もちろんトリアーも)の魅力であるはずなのに、そのマジックが本作では全く不発。

何よりも残念なのは、本作の脚本をウィンターベアと共同執筆しているのが、デンマーク新世代の旗手、トビアス・リンホルムであるということ。彼は(手前味噌で恐縮だけど)東京国際映画祭のコンペで紹介した『シージャック』(12)や、ロッテルダム映画祭のコンペだった処女作の『R』(10)などで、残酷でスリリングなリアリズムに抜群の手腕を発揮する監督。いま最も注目すべき才能のひとりであると、僕も『シージャック』のときには紹介したものだったけれど、最新監督作『A War(原題)』が今年のアカデミー賞の外国語映画賞の最終ノミネートに見事に残っている。

なので、そのトビアス・リンホルムとトーマス・ウィンターベアがタッグを組んだ作品があると知ったときには、期待で胸が躍ったのだけれど…。期待が高すぎたのだろうか。いや、例えそうだとしても、それでもこのふたりが産んだ脚本としては、刺激が無さ過ぎる。ネガティブなことをもっと書きそうなので、もう止めておこう。残念。

14時過ぎに会場を出て、無念の思いを抱きながら、好物のソーセージとベイクドポテトを食べながら頭を整理する。

その後、少しだけミーティング。マーケット関係者はほとんど帰国してしまっているので、数件のみ。

17時45分に上映に戻るべく外に出ると、雪だ! 朝は青空だったのに、夕方から雪。雪は大歓迎なので、興奮しながら劇場へ。

見たのは、「パノラマ」部門で韓国映画の『The Bacchus Lady』という作品(写真)。これはとてもよかった! 中年の女性娼婦がヒロインで、彼女の道程を追いながら、韓国における移民問題や、そして何よりも高齢化社会の実体に迫っていく切実な人間ドラマ。切実ではあるけれど、ただ辛いだけではなく、映画としての面白みも存分に備えた作品で、役者もとてもいい。パノラマでなくて、コンペでもよかったくらい。

続いて20時15分から、同じく「パノラマ」部門で、デンマークの『Shelley』という作品。これは、アート系ホラー、と呼んでいいのかな? 北欧は、コンスタントに美しいホラーを生み出しているので、期待しながら見てみたら、きちんと美しく怖かった…。マタニティー系ホラー。自分のお腹の中にいるのは、一体何者なのだ…? ああ、なかなか気持ち悪い…。上手い。

上映終わってダッシュでメイン会場に移動し、22時から「アウト・オブ・コンペティション」部門の『News From The Planet Mars』というフランスのコメディードラマへ。監督はドミニク・モル(『ハリー、見知らぬ友人』の監督)、主演が現在大人気のフランソワ・ダミアン(『エール!』のお父さん)、共演にこれまた数年前からフランス映画に痛快な新風を送り込んでいるヴァンサン・マケーニュ。

この組み合わせは相当期待が持てるはずだと思っていたら、今回は大当たり。フランソワ・ダミアン扮する父親に次々とふりかかる災難に、会場は大爆笑。僕も気持ちよく大爆笑。下ネタもあるけれども下品に堕ちず、危機に陥った家族の再生の物語にもなっていて、ドミニク・モル監督、快心の出来栄えではないかな。この作品の笑いは国際的に通用する気がするので、日本でも見られるようになるといいのだけど…。

ふうー。22時台にナイスなコメディードラマがあると、足取りも軽い! 雪は小雨に変わってしまって、少し残念。ホテル戻って0時半。メールを確認して、ブログをいじって、今日もそろそろ2時。明日は大変な1日になるはずなので、寝なくては!
《矢田部吉彦》

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