【MOVIEブログ】2016東京国際映画祭 Day3

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(c)2016TIFF
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27日、木曜日。決死の思いで8時半起床。外に出ると、快晴の強風。とにかく晴れていれば気分は上々。

本日は朝から稼働で、10時20分から「日本映画スプラッシュ」に出品された今泉力哉監督新作『退屈な日々にさようならを』の上映前舞台挨拶司会。さすが群像劇の今泉組で、登壇人数は総勢13名。時間が15分しかないので、全員から一言だけ頂いて、フォトセッション。

15分の舞台挨拶が終わり、いったん登壇者のみなさんは退出、それからほぼ全員が映画を見るべく再入場。僕は事務局に戻ろうとすると、今泉監督がポップコーンを買って入場していた。自分が作った映画をポップコーンとともに見るなんて、なんと素敵なことだろうと、思わずうっとりしてしまった…。

早めの弁当を食べて(ドライカレー!)、12時からコンペのイラン映画『誕生のゆくえ』のQ&A司会へ。モーセン・アブドルワハブ監督と、主演女優のエルハム・コルダさん、そしてエグゼブティブ・プロデューサーのアリ・アスガル・ヤグウビさんの3名が登壇。アブドルワハブ監督は、優しい紳士だけれど、怒ったら怖いだろうと思わせる鋭いまなざしの持ち主。イランでは法律的にも宗教的にも禁止されている中絶を映画で取り上げているだけあって、硬派監督と呼んで間違いない。

僕も聞きたいことがたくさんあるのだけど、どこまで聞くことが許されるのか、どこからがタブーな質問になってしまうかの判断で迷ってしまう。欧米社会では合法とみなされることが、イランでは違法であり、その「理不尽」を描いているのではあるけれど、だからといって「欧米的目線」の質問ばかりすることも品がないというか、芸がない気もする。

その点、お客さんは聡明で、一人目の息子の存在について、女優さんの意識の持ち方について、そして生まれてくる子どもの名前の由来について、さらには次世代の映画人に対するメッセージが託されているかどうかなど、適格性と意外性に富んだ素晴らしい質問をして下さった。充実の30分。

10分後に、『退屈な日々にさようならを』の上映が終わったので、スクリーンを移動して、今泉監督とのQ&A司会へ。主演の内堀太郎さん、プロデューサーの市橋さんも加わって、作品の本質に迫ってみる。今泉監督とは、『サッドティー』、『知らない、ふたり』でもお付き合いしてきたけれど、僕が壇上トークを最も楽しみにしているお相手のひとり。毎回、目から鱗がおちるような話をしてくれる。それは、映画の内容についてであったり、演出についてであったり。今泉監督は、あまり正面から話をしなさそうな独特のルックスなのに、トークは直球なので、そのギャップがたまらない。

恋愛群像劇を得意としてきた今泉監督が、いかにして新作で死生観というテーマを取り上げるに至ったか、実家とその周辺で撮影したことをエゴだと語るその真意について(あまり突っ込んで聞けていないので、次回にもっと聞くつもり)、黒味の使い方、非常識的な設定を演じるにあたり、どのようなディスカッションを俳優と行ったのか、シリアスなテーマとユーモラスなパートを融合させるためにはどのような点に気を付ければいいのか(これももっと聞きたい)、今泉流セリフの作り方、などなど。

どうして今泉さんとのトークが楽しいのかというと、話していると転がるようにもっと聞きたいことが出てくるからで、でも司会が延々質問しているわけにもいかないので、そこがつらいところ。ともかく、今年も本当に楽しく、30分がまさにあっという間に過ぎてしまう。

本日は、本来であれば許されないハシゴの綱渡り。それぞれに失礼になってしまうのだけど、ごめんなさい。今泉組がフォトセッションに入った瞬間に僕は退出して、森ビルの51階にダッシュ。トーク終了が13時27分で、次の予定が13時30分という、そもそも無理な予定なのだけど、んー、すみません。

映画祭に合わせて来日してくれている海外のマスコミのみなさんから、合同インタビューを受けることになっていて、会場に5分遅刻で到着。フィリピン、ベトナム、ブラジル、トルコ、ラオス、ギリシャ、などなど多くのみなさんから、ラインアップについて、そして各々の自国の映画について僕がどう思っているかについて、いささか怪しい僕の英語でお話しする。もう勢いで話すしかないのだけど、伝わったのだろうか? でも、各国からマスコミに来ていただけることは、映画祭としてはこれ以上重要なことはないので、懸命にお話しする。

1時間で終了し、14時30分。次の司会が14時35分。はい、本当によくないですね。(あ、誤解のないように付記しておくと、この詰め込み予定は誰かに強制されているのではなくて、自分がやりたくてやっている…。)

駆けつけたのは、日本映画スプラッシュ『ハロー・グッバイ』の舞台挨拶。菊地健雄監督、主演の萩原みのりさん、同じく主演の久保田紗友さん、主演級のもたいまさこさん、そして音楽と出演の渡辺シュンスケさんの5名がご登壇。菊地監督は、最も注目すべき才能のひとりなので、今回お迎えできて本当に嬉しい。もたいまさこさんに、「菊地監督を叱咤激励してもらえますか?」とお願いしてみると、「出来上がった作品を見たら、こんなセンスを持っているのかと、とてもびっくりした」とおっしゃって、菊地監督が恐縮していたのが楽しい。

怒涛の綱渡りを無事(?)終えて、事務局に戻って一瞬休憩。小トラブルが起きており、その説明を受ける。んー、大したことがないといいのだけど。思えば、昨年の映画祭では前半戦で面倒ごとが2件あり、無駄な時間をとられてしまったのだけど、その点僕の周辺はいまのところ何とか順調。昨日の『シェッド・スキン・パパ』を乗り切って、もはや後半戦くらいの気分なのだけど、実はまだ2日目だ。気を引き締めていこう。

16時に劇場に戻り、『ハロー・グッバイ』のQ&Aへ。菊地監督とサシでトーク。これまたとてもとても面白かった。あるメロディーをキーとした、若い女性ふたりの微妙で繊細な「友情」の物語。友だちのあり方に悩む若い世代の気持ちを丁寧に汲み取った、小さい宝石のような作品。堅実でほころびの無い菊地監督の演出には、美しい職人の風格が感じられ、本当に今後の創作が楽しみな存在だ。

例によって、僕からいくつか質問をしてしまう。キャスティングについて、主演ふたりの微妙な距離感を作るためにこらした工夫について、まだ存在しない(作曲されていない)メロディーをイメージしながらの脚本執筆について…。聞きたいことは後を絶たない。客席からは、「どうして3人なのか」という菊地監督の前作『ディアー・ディアー』から引き継がれる主要登場人物の人数について、階段と坂道の多用の意図についてなど、実に鋭い質問が出る。菊地監督もトークに淀みがない。撃つと響く。時間が足りない!

んー、実に面白い。16時40分に終了し、Q&Aには登壇しなかった女優さんお2人にご挨拶し、またダッシュで移動。17時から、海外のメディアから10分間のショート・インタビュー。海外メディアだけど日本語で答えてよかったので、少し楽だ。動画インタビューで、いったい自分はいまどんな顔をしているのだろうかと心配になる…。

17時半に、事務局で来訪者とミーティング。15分ほど、映画祭後半に予定されているイベントについて打ち合わせ。

18時にお弁当。ハンバーグのキノコソース。おいしい。ここで一瞬時間ができたので、メールの返信を少しして、ブログを少し書く。

19時半にEXシアターに移動して、コンペティションのフィリピン映画『ダイ・ビューティフル』のQ&A司会。感動の大きさとしては今年ピカイチと触れて回っていた作品、果たしてみなさんの反応はどうだろうか? 期待と不安を抱きながら、上映終了を待つ…。

客電上がり、ゲストを壇上に呼び上げる。ああ、やばい。大拍手の中、ヒロインのパオロ・バレステロスの涙が止まらない。今回初めて完成した作品を見たとのことで、主演俳優としてだけでなく、メイクも全て担当し、あらゆる感情が押し寄せたみたい。そして客席を見ると、多くの人が涙を拭っている。もうダメだ。僕も目の前がかすんだ。

昨夜の『シェッド・スキン・パパ』もすごかったけど、今日の『ダイ・ビューティフル』も永遠に記憶に残るQ&Aになった! パオロの涙が落ち着くのを待ち、感動的な雰囲気から徐々にリラックスした雰囲気に移行し、そして日本とフィリピンにおけるセクシャル・マイノリティーの境遇に関するシリアスな報告や、ジュン・ロブレス・ラナ監督の演出やフラッシュバックの使い方に対する考えなどが語られ、硬軟混じった素晴らしい雰囲気。パオロ本人のセクシャリティについての驚愕の事実も披露され、ああもう、時間が止まればいいのにと思うほど楽しい。

僕は途中からある質問を思いついて、最後にパオロに聞いてみようと狙ってみた。時間が来て、その最後の質問をパオロに投げかけると、場内大爆笑! ウケた! それが英語に訳されると、ジュン監督もパオロも爆笑で、最高のリアクションを見せてくれた。いやあ、気持ちよかった!

初めて見てから約2か月、生の肯定を高らかに歌い上げる『ダイ・ビューティフル』の感動を、ようやく多くの人と共有することができて、これほど嬉しいことはない…。

外で即席サイン会が始まったみたいで、僕もその場に立ち会いたかったのだけれど、次の予定があるので、またまた小走りで移動。六本木ヒルズ内のバーで、日本映画スプラッシュ部門の出品監督たちを中心にしたプライベートな飲み会を企画したので、幹事の僕が遅刻するわけにいかない(結局遅刻した)。

前々から実施したいと思っていたカジュアル・プライベート飲み会が実現して、初めての試みだったのでうまく行くか分からなかったのだけど、狭いスペースにぎゅっと集まれて、これはなかなか成功だったのではないかな? オープニング・レセプションは規模が大きすぎて全然会話ができないし、作品間の横のつながりがカジュアルな形で生まれづらいのがトーキョーの弱点なので、何とか一矢を報いたいと思った次第。みなさん交流していたし、僕もウーロン茶片手が恨めしいけどお話ししたかった面々と話せたし、充実の2時間。

先に抜けてごめんなさいと挨拶をして、22時45分に移動。23時にEXシアターに戻って、ドイツのコンペ作品『ブルーム・オヴ・イエスタディ』のQ&A司会へ。こちらもシリアスなテーマとユーモラスな描写が同居する素晴らしい作品。クリス・クラウス監督は、本日夕方に来日し、強行スケジュールの中でQ&Aに直行してくれた。

ユーモアのある作品ではあるものの、コアとなるホロコーストのテーマは監督個人の家族にもまつわるものであり、トークのトーンはシリアスに。ただ、客席から出たふたつの質問が、いずれも極めて正直で真摯なものだったので、シリアスではあるけれど、キリっと身が引き締まる、良い緊張感に包まれたトークになった気がした。

どうしてドイツではナチズムを扱う作品を、ここまで多く作ることができるのか。それを一般のドイツ人はどう受け止めているのか。我々がドイツ人に聞いてみたいけれど、なかなか聞けない質問に答えてくれる。そして、会場の雰囲気としては、明らかに「どうして日本では話題に出すことさえもためらわれてしまうような空気が出来てしまったのだろうか」との自問自答が渦巻いているのがわかる。

深い余韻を残すQ&Aを終え、23時45分。昨日も書いたように、やはりこの終演時間だとつらいお客さんが多いですね。でも、映画の長さや、ゲストの来日スケジュールにも決定的に左右されるし、どうしようもないときは、本当にどうしようもない。でも最善の形はいつまでも追及し続けます。

事務局に戻り、余っていた弁当を連続で2個食べ、本日どこで何が起きていたかを同僚たちと報告し合って、みんな呆けたように笑い、そして静かに深夜業務に突入していく…。僕はブログを書いて、もうすぐ3時。今日は4時前に寝ることを絶対目標にしよう。それにしても、本日の充実ぶりもハンパでなかった…!

(写真は、素の姿で登場してポーズを決めるパオロ、最高の笑顔のプロデューサーのペルシ、そして左がジュン・ロブレス・ラナ監督!)
《矢田部吉彦》

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