【MOVIEブログ】2017東京国際映画祭 Day9

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『スパーリング・パートナー』
  • 『スパーリング・パートナー』
11月2日、木曜日。今年の映画祭もいよいよ大詰め、あと2日!

昨夜は5時からとりあえず1時間半仮眠し、6時半に起きてゲストの宿泊するホテルへ。朝7時に一部のゲストが帰国してしまうので、どうしても挨拶がしたい。こういうモチベーションだと普通に起きられるのが不思議で、7時前にはゲストのホテルに着き、再会を約束しながらゲストとお別れ。ああ、ついに終わってしまうのだなあ…。

と感慨に浸っている場合ではまったくないのだ。本日は盛り沢山の一日なので、気合いを入れ直す! とはいえ、このままでは持たないので、いったん帰って3時間ほど再仮眠。

11時半に事務局に行き、予定を確認したりしてからシネマズへ。

12時からコンペ部門『スヴェタ』の2度目のQ&A司会。1度目よりもスムーズな進行になって、ジャンナ・イサバエヴァ監督と主演のラウラさんの出会いや、監督の過去作から共通するテーマなどについて語ってもらう。手話に関する質問も多く、作品論にも触れられるようにバランスを取ることを目指したけれど、どうしても時間が足りなくなってしまう。今日は作品の上映間隔が詰まっていて余裕がなく、あともう少し続けたい、というところで残念ながらタイム・オーバー。

ラウラさんや共演のロマンさん、そしてもちろんイサバエヴァ監督にもまだまだ聞きたいことはたくさんあるので、何とかこれから日本公開が決まり、再び語り合える日が来ることを願うばかり。映画祭会場で会った人のほとんどが『スヴェタ』を絶賛していることで僕も確信を深めたけれど、イサヴァエヴァ監督の才能に疑いはなく、俄然新作を心待ちにする監督のひとりになった。次作でもお迎えできますように。

事務局で13時から1件打ち合わせ。某海外向けテレビ放送の取材が入り、僕にミニ密着して映画祭での業務の様子を撮影したいとのこと。なんとも恐縮すぎる話で、ほとんど壇上に立っているだけの僕の姿を撮って何かの使い物になるのだろうかと心配になりつつ、よろしくお願いしますということになった。

シネマズに戻り、13時45分からのQ&Aの登壇者と打ち合わせ。そこに取材のテレビカメラが入り、打ち合わせの様子を撮っている。いきなり動きがぎこちなくなってしまい、我ながら情けない…。

というわけで、ワールドフォーカス部門『サッドヒルを掘り返せ!』のQ&A司会が開始。ギレルモ・デ・オリベイラ監督とプロデューサーのルイザ・カウエルさんが登壇し、この感動の作品の舞台裏を話してもらう。

『サッドヒルを掘り返せ!』が抜群に面白いということをことあるごとに言っていたのだけど、1昨日の1回目の上映の反響はかなりよかったみたいで、見に行った人の話を聞いたり、ツイッターを見たりすると大絶賛の嵐だ。やっぱりね! ただ、スクリーン7はちょっと大きすぎたかな。こんなに面白いのだから満杯になるはずだと信じ込んで大キャパのスクリーンで上映しようと言ったのは自分なのだけど、もうひとプッシュだったか…。情報が届いてなくて見逃した人がいたとしたら、あまりにももったいない。ああ、公開されますように。

僕は昨日ギレルモさんとルイザさんから、素晴らしいという言葉では言い尽くせない驚愕のプレゼントを受け取っており、それはこの映画を知っている人がそれを見ただけで泣いてしまうというくらいのインパクトを持つもので、実際に登壇前に通訳の方にお見せしたら、本当に感動して涙ぐんでいた。僕は昨日落涙した。果たしてそれが何なのか…。引っ張ってすみません、後日写真をアップします!

15時からコンペ部門『アケラット-ロヒンギャの祈り』の2度目のQ&A。エドモンド・ヨウ監督と、主演のダフネ・ローさんが登壇。前回のQ&Aではロヒンギャを中心にした社会問題に関する話題で終始してしまったので、今回はこの作品が持つ2部構成について、あるいは詩的な部分にも触れてみたかった。

前半は、やはりロヒンギャの人々の話が中心となり、丁寧に取材を重ねたことや、彼らの安全を確保するために実際のロヒンギャ難民は撮影に動員していないことなど、アクチュアルでデリケートな主題に対し、いかにしてエドモンドが取り組んだかが伺える興味深い内容。

そして、2部構成にも触れ、前半と後半で物語も雰囲気も変わる本作の特徴について、ふたつの世界が地続きなのか、それとも別の世界の物語なのかは観客の感覚にまかせたいと監督は語る。自分は使命を帯びた活動家ではなく、答えも持っていない。「ロヒンギャの状況を描くことで、観客がロヒンギャの人々や彼らの人生に思いを馳せるきっかけになればいい」と語り、改めてエドモンドの懐の深さに感銘を受ける…。

ダフネさんからも役への取り組みなども話してもらい、全体として(映画の主題はヘヴィーだけど)リラックスしたQ&Aになった。硬軟取り混ぜた雰囲気がとてもよかった。アジアの期待の大器、エドモンド・ヨウ。いかなる高みにまで行きつくのか、彼ともずっと並走していきたい。

16時40分から、コンペ部門『最低。』の2度目の上映前舞台挨拶。15分で終えて、17時から1件打ち合わせ。

17時半から、中国のWEB媒体の取材を受ける。日本語を話す中国の記者からの取材。とってもナイスな方で、選定について、日本映画について、プレミア作品を招聘することの難しさについて、などなど、聞かれるがままにどんどん話してしまって、とても楽しい取材だ。そういえば「ヤタベさんは中国の映画ファンの間で知られているのですよ」と言うので、「へ? どういうことですか?」と聞くと、記者さん曰く「『山田孝之のカンヌ映画祭』を見ているからです」。な、な、なんと!!

18時50分から、上映が終わった『最低。』のQ&A司会。瀬々敬久監督、森口彩乃さん、佐々木心音さん、山田愛奈さんの4名が、舞台挨拶に引き続き登壇。一昨日に続き、実に楽しいQ&Aになった! 出演が決まったときの心境を皆さんに伺ったとき、山田愛奈さんが「3回オーディションしたのですが」と語り始めると、すかさず監督が「悪かったな!」と突っ込み、場内最初の爆笑。

テンポよく質問も出てとてもよい雰囲気。そして、楽屋で「ベテラン女優さんたちとの共演エピソードも話したいね」と話していたのを聞いていたかのように、ベストのタイミングでずばりこの質問をしてきた方がいたので、一同びっくり。まるで仕込んだみたいだ! 森口彩乃さんは江口のりこさんについて、佐々木心音さんは渡辺真起子さんについて、そして山田愛奈さんは高岡早紀さんについて、それぞれ共演した感想を語ってくれる美しい展開。

そして、瀬々監督の発言は全てカッコいい。自由であることの大切さについて、あるいは偏見を抑えてみようとする意志について、さらに、一般的に悪いとみなされがちなこと(例えばAVに出演すること)が本当に悪いことなのだろうかと考えてみることの重要性について。短い時間で放たれる瀬々監督の発言がすべてストレートで胸に刺さる。もちろんユーモアも決して忘れない。僕はもうため息をつきながら深く肯くばかり。さすが、こういう監督に人はついて行くのだろうと思う…。

監督含め、とてもよいチームワークが伝わってくる。『最低。』、タイトルに逆らって最高の展開となりますように!

事務局に戻り、1時間ほど明日のクロージングの準備作業を行う。

そして、EXシアターに移動し、21時半からついに今年最後となるコンペのQ&A司会。作品は『スパーリング・パートナー』。ああ、有終の美とはこういうことをいうのか、というくらい素晴らしいフィナーレだった!

サミュエル・ジュイ監督、主演のマチュー・カソヴィッツさん、そして元WBAスーパー・ライト級世界チャンピオンのソレイマヌ・ムバイエさんが前回に続き登壇。1回目は固さも見られたのだけど、2回目の今回はやんちゃなフランス男三人が仲良くじゃれ合う姿が魅力全開の盛り上がりで、会場の雰囲気の良さが半端でない。

最初に観客席から音楽について質問があると、音楽を手掛けたのは妻役を演じたオリヴィア・メリラティであるという答えから、僕が聞きたかった共演者たちの話に自然に流れて行き、早くも興奮。マチューさんは「ボクサーにとって家族はもっとも大事なもので、家族の支えなしにはボクシングはできない」と発言し、妻とのシーンの重要性を強調する。本作の夫婦の親密な様子の描写はさりげなくも感動的で、その象徴的な冒頭のシーンに痺れていた僕も身を乗り出して質問を重ねてみる。

ソレイマヌさんに「ボクサーとしてのマチューはどうなのですか?」と聞くと、監督は「それだけは聞いちゃだめ!」と爆笑するし、マチューはソレイマヌさんの発言を遮ろうとするし、後はもうやんやの盛り上がり。逆にマチューに「ソレイマンさんは役者として素晴らしいと思ったのですが、どうです?」と聞くと、「まあなかなかいいけど、ボクサーでいるべきだったね」とチクリと返し、ソレイマヌさんは憮然とした素振り。もう、僕はあまりの楽しさと幸せに恍惚とする思い。

そして、瞬時に見る者の心をわしづかみにするほど可愛らしい娘を演じた子役(10歳くらいかな)に話が及ぶと、マチューさんは「彼女は本当に素晴らしい。30年後も彼女は女優として輝いているはずです」。会場全体が一体となって深く肯く…。

これほど心が温まる映画と、完璧にして極上の盛り上がりを見せたQ&Aをもって今年のコンペを締められるとは、映画祭の神様が降臨したなあと、本気で思った。そして熱い客席に心の奥底から感謝!

『最低。』と『スパーリング・パートナー』、2本連続で充実した空気の余韻を噛みしめ、事務局へ。クロージングの準備作業に3時間ほど費やしてからブログを書いていると、本日も5時を回ってしまった! しかし多幸感が持続していて、元気な自分が怖い。

いよいよ明日はクロージング。1年で一番嫌いな日だけど、最も重要な日でもある。浮かれてばかりはいられないので、調子に乗らないように自分を戒めながら、最後まで安全運転でがんばろう。
《矢田部吉彦》

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