「随所にパンキッシュなメッセージがこめられている」実在のボクサーを演じた武田真治

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『子猫の涙』 武田真治 photo:Yoshio Kumagai
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  • 『子猫の涙』 -(C) 2007「子猫の涙」製作委員会
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1968年のメキシコオリンピックのボクシングバンタム級で銅メダルを獲得した森岡栄治。その後栄光の人生を辿るはずが、妻には逃げられ、借金を背負い、娘には嫌われ…。それでも飄々と自身の人生を生きたデカイ男、栄治の破天荒な人生を描いた『子猫の涙』。森岡栄治氏の実の甥である森岡利行が、原作、脚本、監督を務めた本作で栄治を演じた武田真治に話を聞いた。

実話を映画化することについて、「マイナスにもプラスにも取れると思った」と言う武田さん。
「原作では森岡栄治さんの破天荒な部分がもっと掘り下げられているんです。その原作『路地裏の優しい猫』(監督が主催する劇団ストレイドッグにて舞台化)と、映画の脚本、それから監督も担当していらっしゃるのが栄治さんの甥の利行監督なんですよね。原作はもう何年も前、栄治さんがご存命中に出版されているし、舞台などでの活動を利行監督がしてらっしゃるということは、親族の方みなさんが知っているんです。だから、この原作を映画に落とし込むという作業については僕がビビることじゃないなって。まして、この物語の体現者でもある森岡監督が、僕を選んだんだから、むしろ、“何が起きても僕のせいじゃないや”って(笑)」。

本作の冒頭にボクシングシーンがある。武田さんは、このシーンを見事に演じきった。
「趣味の範囲でボクシングをやっているんですが、オファーがあったのは2005年なんです。で、撮影は去年。オファーがあった時点では、どこかで(自分がボクシングをやっているところを)見せていたわけではないので、多分、その匂いというか、雰囲気みたいな部分でオファーをいただいたことは素直に嬉しかったです。脚本を読んでみると、ボクシングシーンは数分だけで、ボクサーのサクセスストーリーではなかったので、やれるかもと思ったんです」。

本作は栄治の娘である治子の目線で描かれている。治子にとって父・栄治は“アホでスケベなエロ親父”だ。
「原作が治子の目線で、『子猫の涙』という脚本に書き換えられたことによって、男女問わずに楽しんでいただける内容になったんじゃないかと思います。脚本の段階では、制作会社の女性に、このままでは何も共感できないっていう指摘された部分もあったそうなんです。栄治さんの愛人と治子の関係だったり、家族の関係だったり…。確かに治子にとっては、理想的な成長過程、生活環境じゃないんですが、理想的な生活環境を与えられなかったから成長したらいけないのか、成長しなくていいのかといったらそうじゃない。栄治さんについても、オリンピックにしてもちょっとずつ生活が崩壊していく過程にしても、経済力はないし、父親として理想的では決してないけど、じゃあ、生きてて悪いのかって言ったら、そうじゃないという、逞しさ、それは開き直るってことに限りなく近い逞しさなんですが、その中でも人と人との絆が静かに描かれた作品になったと思います」。

“アホでスケベなエロ親父”であっても、真っ直ぐに、そして逞しく成長する治子を演じた藤本七海ちゃん。思春期ちょっと手前の女の子の父親との微妙な距離感がとてもリアルだ。
「七海ちゃんは、まったく懐いてくれなかったんですよ。だから映画の中の、あの距離感は本物です(笑)。嫌われてたわけじゃないんだと思うんですけどね…。監督の膝とかに乗っかって、モニターを一緒に見ていたりするんですよ。でも僕の場合は、肩についていたゴミを取ったくらいで「キャー!」みたいな(笑)。撮影中もボクシングのトレーニングで朝や夜に走り込んだりしていたので、『恐いオーラが出てるんじゃない?』と監督に言われました。『ちょうど思春期の女の子には、ちょっと受け入れてもらえないのかもね。気にしなくていいよ』って。でもやはり軽く傷つきました(笑)」。

「この映画の恋愛の部分は、女性として異性を意識して、異性への憧れとか理想とは違った、受け入れなければならない現実を知った人は面白いと思うけど、『恋とはなんぞや?』と思っているようなピュアなティーンエイジャーには理解してもらえないかもしれない」と本作を分析した武田さん。
「でも、理想的な自分とか、理想的な家族関係、理想的な恋愛がなくても、それは生きる権利を奪われることとは違うんだっていうことが全編に散りばめられている作品だと思います。たとえ娘と上手く絆を築けなくても、その関係が切れるわけじゃないし、理想的とは言えない愛人との関係に生涯の絆を築いちゃったり、オリンピックのメダリストでありながら理想的な経済社会での立ち位置を得られなくても、人生を楽しむ権利を奪われることとは違うんだと、清々しく開き直れる映画に仕上がってます。実はパンキッシュなメッセージが随所に散りばめられているので、それをクスクスと楽しんでいただきたいなと思いますね」。

《photo:Yoshio Kumagai》

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