産業発展の果てを撮り続ける写真家エドワード・バーティンスキー来日!
産業の発展とともに変化を強いられた風景を世界中で撮り続けてきた写真家、エドワード・バーティンスキー。そんな彼が、成長著しい中国の産業発展の痕跡を被写体に選び、彼の中国での撮影を追ったドキュメンタリー映画が『いま ここにある風景 エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ「CHINA」より』である。7月の公開を前に、このたびバーティンスキー本人が来日を果たし、6月9日(月)に記者会見が行われた。
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本作について「人間というものが、環境に対してどれだけの影響を与えてきたか——。僕自身の旅路を追いながら、その部分を描いた作品です」と語るバーティンスキー。3年間で5回、中国を訪れたというが「毎回1か月ほど滞在するのですが、この3年の間にも水や空気の汚染が進んでいくのを目の当たりにしました。映画のラストは決してハッピーエンドとは言えませんが、この変化を目撃したショックと悲しみがそうさせたと言えます」と説明した。一方で「この作品は、あくまでひとつの例として、今日の消費社会の姿を中国の中に見ているのであり、決して中国を指差して糾弾するというものではありません。中国が、先進国で消費される製品のリサイクルの場としての役割を担っているという側面もあるのです」と力説した。
写真と映画という異なるメディアでの表現の違いについては「写真は言葉を持ちません。ただ、静かにそこに存在し、観る者の解釈によって初めて完成するものではないかと思います。自身のアイディアを写真に込めることは可能ですが、当然のことながら観る人によって解釈は異なってくるわけです。写真とは対照的に、映画には時系列や物語、言葉があります。つまり観客が、いまどの地点にいるのかという文脈が与えられているのです。今回の映画でも冒頭で、人間と自然の関係についてが前提として語られています。そして、時間や音楽、空間が観客の解釈を導き出すのです。つまり、写真と比べ映画の方が観客をナビゲートしやすいと言えます」と語った。
バーティンスキー自身はお気に入りのシーンとして、冒頭で8分間ノーカットで工場を映し出すシーンを挙げる。「僕がこの工場を写真に収めたのは、産業がここまで大きく成長してしまったということを見せるためです。映画のオープニングで8分間にもわたってこの部分を見せたのは、ジェニファー・バイチウォル監督と撮影のピーター・メトラーの素晴らしいアイディアの賜物です。最近の映画はカット割が多く、スピードも速いので、観ているうちに『いつまで続くのかな…』と落ち着かない気持ちになってしまうでしょう。この映画を決定づけた8分間であり、個人的には非常にワクワクさせてもらいました」と明かした。
そして、バーティンスキーは「日本での公開はアジアで初めての劇場公開となるわけですが、これをきっかけにほかのアジアの国々、中国でも公開されることを願っております」と訴えかけた。
『いま ここにある風景 エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ「CHINA」より』は7月12日(土)より東京都写真美術館ホール、シアター・イメージフォーラムにて公開。