サミット開催にちなんでvol.2 “産業の風景”について『いま ここにある風景』

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『いま ここにある風景 エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープより』
  • 『いま ここにある風景 エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープより』
  • 『いま ここにある風景 エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ「CHINA」より』
  • 『いま ここにある風景 エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ[CHINA]より』
661。この数字、なんだか分かりますか? 今年の年末までに一般公開される予定の映画の数です。映画を観るのが仕事とはいえ、限られた時間の中、試写で観られない作品が出てきてしまうのは当たり前。そこで、気になった作品は劇場公開時にチェックしています。良い評判を聞いていた『いま ここにある風景』も、公開翌日の7月13日(日)、恵比寿にある東京都写真美術館ホールで観てきました。

これは、カナダの写真家エドワード・バーティンスキーが、中国の産業発展の様子をひとつの“風景”として捉えていく姿を追いかけたドキュメンタリー映画です。ユニークなのは、ビジュアルの迫力を最大限に優先させている点。データや情報を詳細に求める人には、物足りなく感じるかもしれませんが、いま、中国で起きていることの実態を、目で見て、自分の中で様々な感情を呼び起こしてほしいというエドワードの考えを尊重した、感覚に訴えかけるスタイルになっています。それは、メッセージを写真に託し、説明は短いキャプションのみという写真展に似たスタイルとも言えるでしょう。

映画の中では、急激な経済・産業発展により変化していく中国を直接批判するようなことはありません。エドワード曰く、「人間は自然の一部、それが、僕が世界を見る視点の基礎だ。そこで、僕らの時代の新しい風景について考えてみた。それが“産業の風景”だ」とのこと。

この言葉通り、彼は自然の一部である人間が生み出した様々な風景=ランドスケープを淡々と撮影するのみ。そこから何を感じるかはあなた次第なのです。そんな本作を観ていると当然のように思い出されるのは、先日行われたサミットのこと。主要8か国(G8)は、温室効果ガスの「2050年までの排出量半減」という目標を共有することで意見が一致しましたが、中国を含む新興国はこれを拒否。確かに、新興国にしてみればG8からの要求は“なんと勝手な!”と感じたことでしょう。自分たちは、発展するだけして、CO2を排出するだけ排出しておいて、いよいよ私たちの番というときになって厳しく規制するのか、と。これまでの気候変動の原因は主にG8の国々が生み出しているのに、と。

確かに、新興国にしてみれば、発展を阻まれていると感じるはず。「世界の国々の平等な発展は保証されなければならない」と念を押していることからも明らかです。でも、環境問題は中国やインドなど人口の多い巨大な新興国の協力と理解なしに、解決することなど不可能。それならば、G8は「自分たちの犯した失敗から学び、賢い発展を遂げてほしい」という想いと行動をもっと前面に出すべきなのでしょう。と、簡単に言うことはできても、様々な利害や思惑が絡み合った世界で起きている環境問題。一筋縄ではいきません。映画で紹介されている巨大工場や三峡ダムの建設現場など、すでに激しく回り始めている発展の歯車を目にしながら複雑な想いに心をザワつかせたのでした。

そんなとき思い出したのは、先日インタビューした環境活動家、セヴァン・カリス=スズキの言葉。彼女は、1992年、わずか12歳のときに参加したリオ・デ・ジャネイロの地球環境サミットで、「この星をこれ以上壊さないで」と伝説のスピーチをした少女。すっかり大人の女性となり、いまも環境活動家として世界を舞台にしています。彼女によれば、私たち全員が気候変動の原因であり、問題の一部であることを意識することが次なるステップとのこと。誰もが人のせいばかりにしているうちは、ドラマティックな解決などあり得ないのかもしれません。最後に、印象に残った彼女の言葉をご紹介します。
「環境活動家というと、まるでヒーローか何かのように思われがちだけれど、結局は自分たちのためになることをやっているだけ。それほどまでに、直接、自分に跳ね返ってくる事柄なんですもの!」

《text:June Makiguchi》

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