『麒麟の翼』阿部寛インタビュー 刑事・加賀を通して見る父への思い、後輩への思い

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『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』 阿部寛 photo:Naoki Kurozu
  • 『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』 阿部寛 photo:Naoki Kurozu
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阿部寛の一番の“ハマり役”は? そう聞かれても正直、困ってしまう。『チーム・バチスタ』シリーズの破天荒な官僚・白鳥に「TRICK」シリーズの自称天才物理学者・上田。ドラマ「結婚できない男」で演じたあの偏屈な主人公を推す人もいるだろう。たったひとつでもハマり役と言える役を持っているだけでも大変なことなのだが…。東野圭吾の人気連作をドラマ化した「新参者」で演じた刑事・加賀恭一郎も間違いなくハマり役のひとつ。クールさと優しさを併せ持った加賀を体現し、多くの原作ファンをも納得させた。ひとつひとつの作品で外見を大きく変えているわけではない。失礼な言い方だが、いずれも見た目は“阿部寛”そのまま。それでも全く異なる人物を不思議な説得力でもって浮かび上がらせ、「この人物をもっと見ていたい」と思わせる。この何とも説明しがたい魅力はどこから来るのか? 「新参者」からスペシャルドラマ「赤い指」を経て、映画『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』で三たび加賀に扮した阿部さんが、加賀という男の魅力、この役を演じることで自らの中に芽生えたある思いを明かしてくれた。

胸を刺された男性が、日本橋の翼を持った麒麟像の下で息絶えるという事件が発生。関係者の元を訪ね歩く加賀の足跡を通じて、死にゆく者が大切な人に残した“メッセージ”が明らかにされていく。

今回の劇場版で加賀を演じるに際し、過去のドラマ版の2作と比べ「より原作に近い形でやりたかった」と阿部さん。原作がある映画に出演するとき「僕自身が原作を読んで『これはいい』と思った部分は変えたくないし、原作を読んでいる方が『キャラが違う』と思うようなことはできる限りしたくないんです」と自らのスタンスを明かした上で、今回の加賀へのアプローチについて語る。
「ドラマのときはまず、どうやって加賀恭一郎を世間の人に紹介し、見てもらったらいいのかということがあり、そこは結構、難しかったんです。(放送の)時間帯にも合わせて原作にない部分やちょっと力を抜く場面を入れながらやっていました。それが次の『赤い指』ではすでに加賀という男の紹介は済んでいるので、より原作に近い形でやれた。(原作者の)東野さんが現場に寄ってくださったとき『(時系列的に)間に「新参者」が入りますが、今回の映画は「赤い指」の続編として考えてくださって結構です』とおっしゃってまして、やはり原作志向で行けるなと思いました」。

刑事・加賀の原点にあるのは同じく刑事だった父親の存在。その関係性や思いは「赤い指」で描かれているが、阿部さんはさらに、加賀が持つ独特の“優しさ”についても言及する。
「刑事として生き、家族を顧みなかった父への思いが小さい頃からあって、その真意を知るために彼も刑事になって追いかけている。そうした思い以外に、加賀はこの仕事で何かを背負っている気がするんですよね。それが何なのかは分からないんだけど…悲しさや孤独感を感じます。刑事という仕事の限界を知りつつも捜査し、だからこそできる限りのことをやろうとして、時間がないのに多くの人を救おうとしているように僕には見える」。
「赤い指」である種の“和解”を遂げたように見える父と息子だが、本作ではさらに深く、死の間際の父親の思いを加賀は思い知らされることになる。

少しだけ憂いの混じった表情を浮かべ「背中を追ってきた父のさらなる部分——父の哀れさ、息子に対する弱さがあったということは、加賀にとってショックであると同時に嬉しかったとも思う」と語る阿部さん。歳を重ねていく中で気づかされたという、寡黙なエンジニアだった自身の父親に対する思いを明かしてくれた。
「10代の頃は決して嫌いだったわけじゃないんだけど、ほとんど親父と話をした思い出はないです。僕も年が年だから…30代の頃かな、親父という存在をふり返って『強い父親だったんだな』と感じました。仕事一辺倒であまり話さない人だったけど、父としてずっと間違いのないことをやってきてくれた我慢強い人でした。病院での母との最後の8年間の苦労も…自分では何も言わないけど、毎日病院に通って。僕も背中を見ていたし、看護師さんからも聞かされてました。言葉ではなく行動で示すところは(加賀の父で山﨑努が演じた)隆正と重なるところがあります」。

同時にスクリーンから、そして阿部さんの口からこぼれる言葉から感じられるのは、若い世代への思い。ドラマに続いての共演となった溝端淳平に初共演となった松坂桃李、「ドラゴン桜」以来の共演となる新垣結衣など、多くの若手俳優たちが阿部さんから強い刺激を受けていることは間違いない。
「僕は聞かれない限り、現場でアドバイスしようというのはないですよ。若い俳優さんのこともみんな尊敬しているし、必死になってやってくれているから。ただ僕自身、(中井)貴一さんたちの背中を見てきたし、さらに上の世代の人たちがどう生きてきたのかを、後輩たちは見ているんですよね。そこで自分の可能性や『何年後かにこうなりたい』という思いを持つものなんです。自分もそういうことを大事にして演じていかなきゃいけないとは思ってます」。

後輩たちにその広い背中を見せつつ、誰よりも阿部さん自身が成長に対して貪欲である。演じることの楽しさはどこにある——? こちらのそんな問いに、今年48歳を迎える男はいたずらっ子のような笑みを浮かべてこう語る。
「毎回、いろんな難しさがあるけど、年を経るにつれてより深く人間を出していかなくちゃいけなくなる。自分の人間的な成長と肉体的な変化が追い付いているのか? そこは難しいところなんだけど、その難しさが面白い。自分が成長してるのか? 何が足りないのかを自分で測れたりするわけです。先輩の役者さんを見ていると、ずっと止まった芝居をする人もいれば動き続ける人もいる。そういうのを見て自分も挑戦してみたくなったりね。例えば、柄本明さんは紫綬褒章をもらうような俳優さんなのに、『妖怪人間ベム』で顔を真っ赤に塗ったくった敵役を演じてたりする。普通、もうそういう役は避けてもいいのに敢えてそういう道を通ってるのを見ると嬉しくてたまらなくなるし、見習わなきゃって思うんです」。

あくなき向上心が新たな役を呼び込む。これだからこの男から目が離せない。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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