【シネマモード】ユーモアの溢れる北欧雑貨ワールドへ…『シンプル・シモン』

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『シンプル・シモン』
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北欧と言えば、インテリアや雑貨が思い浮かぶ方も多いことでしょう。雄大な自然の恵みを感じさせる温もりのあるデザインとシンプルながら機能性の高い北欧モノ。映画では、『ロッタちゃん』シリーズや『かもめ食堂』などで、北欧らしさが存分に楽しめるおしゃれな作品は、女性に人気が高いですよね。

映画界で北欧といえば、骨のある個性的な映像作家たちを生んできた地域。スウェーデンのイングマール・ベルイマンやラッセ・ハルストレム、フィンランドのミカ&アキ・カウリスマキ兄弟とか、デンマークのラース・フォン・トリアー、スザンネ・ビア、そして私が大好きなベント・ハーメルはノルウェー出身。彼らの作品を思い浮かべれば、その多彩な魅力に驚きますよね。もちろん、作風はそれぞれですが、淡々と人々の姿を描き、その周りで巻き起こった出来事にそっと寄り添っていくという共通項もあるような。

そして、そこで描かれるのは、頑固でマジメなのに、とぼけた様子が魅力的な人々であることが多いよう。私にとって永遠のお気に入り映画のひとつ『キッチン・ストーリー』(ハーメル作品)や『過去のない男』(アキ・カウリスマキ作品)などはその好例。これらとよく似た香りを放っているのが、公開中の『シンプル・シモン』でした。

シモンは、アスペルガー症候群の青年。両親とはウマが合わず、唯一の理解者である兄のサムと一緒に暮らすことになりますが、サムには恋人・フリーダがいるのです。3人の共同生活が始まると、毎日、秒刻みでスケジュール通りの生活を送るシモンのせいで、サムとフリーダはぎくしゃく。そして、別れることに。落ち込んだサムは余裕がなくなり、シモンのペースを守ってやることができません。自分のペースが乱れることを嫌う傾向にあるのがアスペルガー症候群。そこで、元の生活に戻りたい一心で、シモンは兄にぴったり合う恋人を探し始めるのです。

そもそも、新しいことが好きではないシモンですが、この“恋人探し”の途中で、人と関わるということ、恋するということ、人生とは思い通りにいかないということ、だから素晴らしいということを覚え始めるのです。これは、シモンのちょっとした成長物語。一生懸命な人だけが醸し出すことのできる、温かな可笑しみや人間の愛しさがぎゅっと凝縮されたような作品です。

愛すべきシモンの成長ぶりだけでなく、ぜひ注目していただきたいのがインテリア。調和と不変を好み、混乱と変化を嫌うシモンが大好きなのは、宇宙と円形。彼の生活は、規則正しい秒刻みのスケジュールと丸に彩られています。

「ブルーと丸が好きなんだ」という彼の部屋は、青地に丸いモチーフが描かれた壁紙、丸い壁掛け時計、丸いスケジュールボード、ドラムセットで構成されていて、考えごとをするときはフラフープを手で回します。

お皿も、テーブルももちろん丸。食事は曜日ごとにメニューが決められていて、月曜にはソーセージとマカロニ、火曜はパンケーキ、水曜はチーズトースト、木曜はポテトパンケーキ、金曜はタコス、土曜はピザ、日曜はズッキーニスペシャル。もちろん、すべて円形に調理されています。

ひとりの人間の住む世界を、これほど緻密に徹底的に演出するとはお見事。アンドレアス・エーマン監督はこう語っています。「滑稽で単純なのにとても複雑というまったく違うタイプのキャラクターを、きわめて視覚的な世界に結びつける機会を得ました。この映画はシモンについての物語であってほしかった。私たちに彼の視点で世界をみる機会を与えてくれる映画であることだけを望みました」。

監督は、私たちに、シモンが暮らすアスペルガーの世界に、視覚的に入っていくためのドアを開いてくれました。そこに用意されていたのは、ちょっとレトロなデザインと褪せたような色の風合いと組み合わせが効いた、とてもおしゃれでユーモアの溢れる北欧雑貨ワールド。難しいことは抜きにして、ちょっと個性的な彼らの世界に、親しみやすさを覚えさせてくれるのです。

物語の秀逸さはもちろん特筆すべきですが、雑貨店を訪れたようなわくわく感もあるのが嬉しいところ。見どころ、楽しみどころ満載の『シンプル・シモン』。北欧好きはもちろん、そうでもない方もきっとお気に召すと思いますよ。
《text:June Makiguchi》

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