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【MOVIEブログ】2016東京国際映画祭 Day5

29日、土曜日。週末だ! 5時寝9時起のペースに慣れてきたのか、9時のアラーム直前に目が覚めて、よっしゃと外へ。まずまずの天気に戻っていて、秋の空気が気持ちいい。

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(c)2016TIFFJP
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29日、土曜日。週末だ! 5時寝9時起のペースに慣れてきたのか、9時のアラーム直前に目が覚めて、よっしゃと外へ。まずまずの天気に戻っていて、秋の空気が気持ちいい。

六本木ヒルズに到着してみると、ハロウィン仕様のキッズたちで溢れている。今年も盛り上がるのかな。

コーヒーでサンドイッチを流し込んで、10時に劇場に行き、日本映画スプラッシュ部門『かぞくへ』の上映前舞台挨拶司会から、本日はスタート。春本雄二郎監督の長編デビュー作となる本作は、今年のスプラッシュ部門の台風の目になるかもしれない作品。友情と愛情のはざまに揺れる孤児院出身の青年の苦悩に、胸が締め付けられる感動のドラマ。見事な脚本と、素晴らしい役者。主演の青年ふたりの姿を思い浮かべると、いまでも胸が熱くなる。絶対に観客の胸に突き刺さるはずと、確信を持って選んだ作品だ。

春本監督、主演の松浦慎一郎さん、親友役の梅田誠弘さん(このコンビの素晴らしさは旋風を巻き起こしてもおかしくない)、主役の婚約者を演じる遠藤祐美さん、そしてトラブルの発端となる男を演じる森本のぶさんが揃って登壇。一言ずつご挨拶の言葉を頂き、監督には1本目にかける情熱を語ってもらい、あとはQ&Aでじっくりお話しを伺うことにして舞台挨拶終了。

上映後の熱い空気を想像するとQ&Aが本当に楽しみだ! と事務局に戻って終演何時だっけと確認したら、なんと上映後のQ&A司会は僕では無かったことに気づき、激しく落ち込む…。他作品とバッティングして、どうしてもQ&Aに出られないということになっていたのだった…。ああ、無念すぎる。あの場に立ち会えないなんて…。

自分のバカさ加減にあきれながら、早めに弁当を食べて(和風オムライス!)、EXシアターへ移動。

コンペ『ビッグ・ビッグ・ワールド』のQ&A司会。レハ・エルデム監督をまたまたお迎えできることは、大きな歓びだ! 来日したばかりなので、壇上で久々の再会。映像美に関しては本作がコンペ中ピカイチと語ってきたけれど、観客の反応もとてもいい。みなさん想像力と感受性を全開にして、体中の細胞が刺激を吸収している音が聞こえるよう。

たくさん登場する動物など、メタファーに溢れていると思わせる作品だけれども、監督としては、解釈は完全に観客に委ねていて、メタファーに関する質問には、そういう意図はないと答える。でも、それは間違っているわけではなくて、そういう解釈でも構わないということのはず。とにかくオープンな作品であることに、会場全体で納得する。

僕も、おおと思わされた質問が、劇中に出てくる川が、三途の川のように生死の境目にある川なのではないかという指摘で、監督もこの視点は初めてだと感心していた。それを肯定することは無かったけれども、まんざら遠くはないのではないか? と僕は思う。明言を避ける監督が、唯一具体的に語ったのは、劇中の森は、夢の森かもしれないということ。森の存在はアジア映画ではとても重要であることもあり、どうしてエルデム監督の作品には森が多く登場するのかという質問には、「私は都市が怖いのかもしれません」。

実に面白い。とてもハイクオリティーなQ&Aになった。こういう抽象度の高い、でも極めて美しい作品に、しっかりと反応してくれる観客がいてくれるということは、東京は幸せだ。

13時15分に終了し、一度事務局に戻り、パソコンを叩いていると次の予定に遅れそうになり、ダッシュでEXシアターに向かう。ヒルズがちびっこで溢れているので、走っていると踏んづけてしまいそう。細心の注意を払いながら、小走り。

14時10分から始まるコンペの『ミスター・ノー・プロブレム』の一般上映を鑑賞へ。この美しい作品を大画面で見る機会がいままで無かったので(上映素材の到着がギリギリで事前に試写が出来なかった)、唯一の機会がこの上映。モノクロ映像の美しさ、カメラの距離感、寓意に富んだ物語。品格のある極上のアート映画を見る至福感に包まれる。

そのままQ&Aの司会へ。メイ・フォン監督はじめ、製作の中心となった北京電影学院の方々も登壇。これは正直言って時間が足りなかった! 製作過程と、撮影に関して、そして原作の老舎に触れたところでタイムアップ。作品の中身に踏み込むに至らず、んー、無念。2回目の上映ではもう少しコンパクトに誘導せねば。

最大の収穫は、メイ・フォンという監督の人柄に接することができたこと。この人の下で学びたいと思わせる、知性と寛大さを備えた人格者(まだそれほど接したわけではないけれど、即座に確信)。メイ・フォン監督を迎えて別枠で1時間くらいのシンポジウムを企画すればよかったといま更ながらに思いつき、んー、さすがに間に合わないか…。

17時半に事務局に戻り、まずはここで夜1個目のお弁当。明日以降の上映で確認すべき作品があったのでDVDで視聴し、18時45分にシネマズへ移動。

スプラッシュ部門『At the terraceテラスにて』のQ&A司会へ。山内ケンジ監督、石橋けいさん、古屋隆太さん、岩谷健司さん、師岡広明さんが揃って登壇。山内監督は昨年の『友達のパパが好き』に続いての登場で、底知れないセンスと才能の持ち主(と僕が軽々しく書くことは憚られるけれど)とお付き合いできることは本当に光栄で嬉しい。『テラスにて』は、大人が楽しめる、文句のつけようがない娯楽作品であり、そして映画の誕生期から存在する演劇の映画化というジャンルに新しい視点を与える意欲作だ。

山内監督ご本人が醸し出す独特の雰囲気を表現する語彙を持てない自分を責めるしかないけど、もうQ&Aも「山内ワールド」であるという陳腐な言い方しかできない。それほど、特殊な空間。演劇と映画の演出や演技の違いというベーシックな質問から、作品で「富裕者」を取り上げた背景、フェティシズム的なことに対する関心、特定の役者を想定して脚本を書く「あて書き」についてなど、様々な面からの質問に答えてもらう。聞く側が(主に僕だけど)どこまで真面目に聞くべきか、そしてどこまでふざけていいのか、いま一つ判断しがたいところが山内監督のQ&Aのスリリングなところで、そこがまさにたまらない。満喫。

映画祭でのチケットが売り切れてしまったけれど、『At the terrace テラスにて』は映画祭閉幕直後の11月5日(土)から公開なので、必見でお願いしたい次第!

すぐにEXシアターに移動して、コンペのルーマニア映画『フィクサー』のQ&A司会へ。発見してもらいたい才能! と喧伝して回っていたアドリアン・シタル監督をついにお迎えできる喜びに浸る(ちょっとダジャレ)。

上映が終わり登壇してみると、会場が熱い。おお。シタル監督と、主演のトゥドル・アロン・イストドルさんが登場し、Q&Aスタート。ラストシーンの話題から始まり、その演出について話が及ぶと、会場の温度がさらに上がった気がした。ヨーロッパの闇を覗く作品の終盤に待っていた意外な感動に、僕を含め皆が包まれている。

大きな社会問題と、パーソナルな物語を融合した作品であるけれど、監督が本作で意識したのは「虐待」を描くことだったと語る。我々がいかに、日常的に無意識に人を虐待しがちであるか。監督の思考と行動はとても繊細で、キーとなる少女の起用についても細心の注意が払われ、その注意は主演のトゥドルさんへの演出にも適用される。映画を見たあとに、作家の細やかな意図がじわりと胸に迫ってくる感動のQ&Aだった。今年のベストQ&Aのひとつかもしれない。

脚本や役者や演出などの中で、良い映画にするための最も重要な要素は何かという質問に対し、監督は「描きたいことが、本当に心の中から出てくるものであること」。今日の上映に参加した観客は、アドリアン・シタルという名前に今後必ず注目に違いない。

続いて事務局に戻って、本日夜の2個目のお弁当(余っていた)。揚げ物弁当で、900キロカロリーくらいあってビビったけど、たぶんかなりのカロリーを1日に消費しているであろうと開き直り、2分でペロリ。美味です。

弁当が速攻でエネルギーに転換され、シネマズに移動して、スプラッシュ部門の『プールサイドマン』のQ&A司会へ。渡辺紘文監督は、東京国際映画祭への参加が3回目となり、僕が偏愛する存在のひとりだ。もっとも、偏愛するのは僕ひとりではなく、特に海外のマスコミ関係者にも渡辺ファンは多い。突出した個性を無視するのが難しいのだと思う。美学は一貫していて、その上で1作ごとに変化し、進化し、深化している。

今年も多くの日本映画を見ているけれども、海外の優れた作品が、世界で現在起きていることに意識的であるのに対し、現在の世界に対する自分の位置を意識した作品を日本映画でみかけることは、極めて少ない。その数少ない例外のひとりが渡辺紘文であり、そのあまりにも正しい(しかし孤高な)姿勢に、僕は最大級の賛辞を捧げたい。

『プールサイドマン』は、様々な解釈が出来る作品であって、考え、そして感じる作品だ。前作の『七日』に通ずる、淡々とした日常の反復は、現実そのものでもあり、一方でシュールでもある。現実とシュールの境目をスタイリッシュに描くセンスが突出する中で、現在の世界を揺るがす情勢が、ストレートな形で挿入される。それは、「大田原愚豚舎」という渡辺監督たちの製作集団の名前に似て、まさに愚直なまでにストレートだ。しかし、笑わば笑え。やらなければならないことは、やらなければならないのだ。

というような文章を、映画祭前に書くつもりでいた。ブログの更新が遅れてしまって書けなかったけど、今日のトークで渡辺紘文の真意(の一部)は聞けた気がした。そしてそれは上記の文章とそんなにずれていなかった。現在の日本のインディペンデント映画において突出した個性を誇る渡辺作品が、一層の飛躍を遂げますように。

ああ、これを書いている時点で、4時を回ってしまった。少し筆が滑っているかな? 夜中にラブレターを書いてはいけない、との鉄則に反するけれど、これもライブ記録なので、このままアップ申請してしまおう。

本日の緊張物件の話が、これから。23時から、コンペ『パリ、ピガール広場』Q&A司会。レダ・カテブさん、初来日!! マジで、カッコいい。醸し出す色気がハンパではない。アメ監督とエクエ監督のコンビも、凄みのあるカッコよさ。

Q&Aの詳細を伝える力が尽きてきたけれど、会場を一気にヒートアップさせてくれた素晴らしいお客さんの協力と、そして何よりも貴重なゲストの魅力のおかげで、とても素敵な場になった…!

緊急のサイン会を行って、終了したのが0時半。遅くまでお付き合いいただいたみなさま、ありがとうございました! 本日はそろそろ上がってダウンします!

(写真は『パリ、ピガール広場』。左でポーズを決めるのがアメ監督、その右がエクエ監督、レダ・カテブさん、そしてプロデューサーのブノワ・ドヌーさん)
《矢田部吉彦》

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