「国境なんて必要ない」イヴァーン・フェニェーが語る『君の涙 ドナウに流れ』

ソ連の衛星国として共産主義政権下にあったハンガリーの市民が自由を求めたハンガリー革命、そしてオリンピック史に残る“メルボルンの流血戦”と呼ばれる水球のハンガリー×ソ連戦…。1956年はハンガリーという国にとって、大きな意味のある年だ。この1956年のブダペストを舞台に水球選手・カルチと女子学生・ヴィキの愛を描いた『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』。本作で主演のカルチを演じたイヴァーン・フェニェーに話を聞いた。

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『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』 イヴァーン・フェニェー photo:Yoshio Kumagai
  • 『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』 イヴァーン・フェニェー photo:Yoshio Kumagai
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ソ連の衛星国として共産主義政権下にあったハンガリーの市民が自由を求めたハンガリー革命、そしてオリンピック史に残る“メルボルンの流血戦”と呼ばれる水球のハンガリー×ソ連戦…。1956年はハンガリーという国にとって、大きな意味のある年だ。この1956年のブダペストを舞台に水球選手・カルチと女子学生・ヴィキの愛を描いた『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』。本作で主演のカルチを演じたイヴァーン・フェニェーに話を聞いた。

ハンガリー史においても大きな意味を持つ本作への出演についてイヴァーンは、「こうした大規模の映画に出演することができて、とても嬉しく思っています。ある意味、新しい世代の人たちにとって1956年のハンガリー革命のシンボル、象徴になると思うんです。それはとても光栄です」と語る。
「1956年のハンガリー革命という歴史は、とても繊細な問題なんです。だからそれをどう描くか、どう伝えるかということにとても気を遣いました。それは自分の国のディテールをどう伝えていくかということですから。撮影の前に2か月の準備期間がありました。そこで水球のトレーニングと監督とのリハーサルをしたんです。僕自身は本をたくさん読み、多くのドキュメンタリーを観ました」。

ハンガリーが共産主義から民主主義へと移行していったのは80年代に入ってからだ。そしてイヴァーンが生まれたのは1979年。
「実は、この時期についてはあまり触れられることがないので、あまり知られていないんです。確かに学校で勉強はするんですが、細かい部分まで教わることはなくて。そして私たちの世代の人間が過ごしたのは共産主義から民主主義へと移行する時代。これは89年のことです。それまでは大きな声でそのことを話すことができなかったので、おそらくそのために曖昧にされてきたのではないでしょうか?」

イヴァーンが話す通り、あまり表立って語られることのない史実だけに詳しく知ることは難しかったと言う。
「実際にそういう方たちと話をする機会がなかったんです。“あなたはどうだったんですか?”と聞くわけにもいかないし、どこで誰と話せばいいのかも分からなくて。だから自分の親と祖父母に話を聞いたんです。当時はまだ子供だった両親は、あまりよく憶えてなかったので祖父母に話を聞くと、彼らも当時はあまり外出しなかったと言っていました。撃たれる可能性があるし、危険だったからと、家にこもっていたそうです」。

イヴァーンは、ブダペストでも伝統のある劇場で舞台俳優として活躍した後、いくつかの映画出演を経て、サム・メンデス監督の『ジャーヘッド』に出演したという経歴を持つ。本作について「自分のターニングポイントになった作品」と言う彼の今後が気になる。
「ハンガリー映画のマーケットというのはあまり大きくないので、いまはハンガリーの外を見て、インターナショナルな作品にどんどん出たいと思っています」。このインタビューの数日後には「またL.A.に行ってミーティングです。この夏にもロンドンに行ってミーティングをしたり、今年はいろいろなところで、いろいろやってきたので、これからどんどん繋がっていけばいいですね。僕にとっても『ジャーヘッド』の撮影は、とても良い経験になりました。僕はハンガリー人だし、故郷はハンガリー。そのことは決して忘れません。でも国境とか境界線なんてものは必要ないと思うから、日本も含めて世界中を回りながら、自分のやるべき仕事をやっていきたいですね」。

「監督のクリスティナ(・ゴダ)とも話していたんだけど、東京でも撮影したいですね。僕は8歳の頃から柔道を習っていたんです。今回初めて日本に来たんですが、日本の文化にはとても興味があります。神社とかお寺にも行ってみたいです。食べ物も好きです。寿司は最高です!」

その端整な顔立ちから出てくる言葉はどれも真摯で、イヴァーンの真面目な人柄が感じられた。今後の活躍に期待したい。

《photo:Yoshio Kumagai》

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