「大ヒットがなかったからいまも役者でいられる」『ゼロ時間の謎』メルヴィル・プポー

その85年の生涯で、膨大な著書を残したアガサ・クリスティー。中でもクリスティー自身が生涯のベスト10の1作として選んだ「ゼロ時間へ」をパスカル・トマ監督が映画化したのが『ゼロ時間の謎』だ。本作でハンサムなテニスプレーヤーのギョームに扮した、フランスを代表する若手演技派のメルヴィル・プポーに話を聞いた。

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『ゼロ時間の謎』 メルヴィル・プポー photo:Yoshio Kumagai
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その85年の生涯で、膨大な著書を残したアガサ・クリスティー。中でもクリスティー自身が生涯のベスト10の1作として選んだ「ゼロ時間へ」をパスカル・トマ監督が映画化したのが『ゼロ時間の謎』だ。本作でハンサムなテニスプレーヤーのギョームに扮した、フランスを代表する若手演技派のメルヴィル・プポーに話を聞いた。

たくさんのキャラクターが登場する本作。主役だからこそ全体のバランスを考えて演技をしなければならない。
「原作がアガサ・クリスティーですし、シナリオもとてもよく書かれていました。監督が狙っていたのは、キャラクターの一人一人が立っている、つまりあいまいさがないキャラクター造形だったんです。奔放な女の子は奔放、暗めの女の人は暗めと、ルックスからして一目瞭然。つまり観客が見て『ああ、こういう人なんだ』と一目でわかるんです。誰に嫌疑がかかって、誰が無実かを観客が推理していく物語ですから、誰が誰だか分かりにくくなると観客も飽きてしまう。そういう手法はどちらかというとフランス映画では古典的ですね。僕自身、この映画は子供でも観られると思ってます。それくらい物理的な面でも精神的な面でもキャラクターの造形がしっかりしていたので、演じるのはそれほど難しくはありませんでした。僕自身は良家のお坊ちゃんを演じることに徹すれば良かったんです」。

「この映画は観客がそれぞれ、『これはこういう手がかりがあるから、ひょっとしたらこの人が犯人なんじゃないか?』と犯人を見立てて、客席で犯人捜しのゲームに参加するという、みんなに受け入れられる映画じゃないかと思います」と本作を解説する。
「パスカル・トマ監督がこのギョームというキャラクターに関しては、『エレガントで貴族的な教育を受けてきた良家の子息というイメージでやってくれ』と言っていたので、スーツもシャツもオーダーメイドで仕立てて、テニスのチャンピオンであるということにも信憑性を持てるように筋肉もつけてスポーツマンの感じで…。しかも、フランスの貴族でスポーツをするとなったら騎士道精神でフェアプレイ、という感じなんです。まさに観客が『この人は犯人じゃない』と思ってくれるような非の打ちどころのない人物なんですよ」。

メルヴィルは9歳から俳優活動をスタートさせた。子役は大人になって、いろいろな意味で苦労することがあるが、メルヴィルにはそんな心配は不要だったようだ。
「いまもこうして役者として活動できている秘訣と言えば…大ヒットがなかったことかな(笑)。僕が出演してきた作品は、その多くが作家主義的な──例えばラウール・ルイスとか──知る人ぞ知る映画だったんです。作品が大ヒットしてしまうと、子役だろうと何だろうと、その役のイメージが俳優自身にオーバーラップしてしまうことがよくあるけど、幸いにして僕の場合その心配がなかった。だから、ティーンエイジャーから青年へと成長するごとに違う役割をしても、『あ、また新しいことをやってるな』という目でしか見られない。だからこそ、いま自分が本当にやりたい方向でやれてるんだと思います」。

「いまに至るまでは修行時代だったと思ってるんです。すぐに観衆やメディアの目にさらされて存在がパブリックなものになるのではなく、人知れずスターシステムの外でコツコツと重ねてきました。未だに自分はスターシステムやショービジネスの世界とは違うところに身を置いていると思ってます」。そう語る通りジャン・ベッケル監督の『エリザ』やエリック・ロメール監督の『夏物語』、フランソワ・オゾンの『ぼくを葬る』など作風に特徴のある監督と仕事をしてきた。
「作品を選ぶ決め手は監督。もちろん、その知名度ということではなくて、その監督と自分の波長が合うか? 彼がやりたいと思ってることに対する情熱がどれほどなのか? こうしたことが決め手となります。あとは、シナリオだったり、キャラクターだったりとありますけど、やっぱり一番の決め手となるのは監督のモチベーションと相性です。『ぼくを葬る』の後、2年間くらい何も撮らなかったんですね。いまは少し多作になってきていますけど、いろんなタイプの監督と仕事をしたいと思っているんです。パスカル・トマだったら家族を扱った映画、アルノー・デプレションだったらフランスの伝統的、作家主義的でインテリな作品。あるいはN.Y.でカサテベスが撮ったロマンティックでかわいらしい、ちょっと遊び心のある作品、イギリスならスリラー的な作品…。そうやって監督もジャンルも国も変えていろんなものを吸収していきたいんです」。

《photo:Yoshio Kumagai》

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