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「彼はどこにでもいる普通の人」グリーナウェイ監督が『レンブラントの夜警』を語る

門外不出の名画「夜警」を描き、美術史に燦然と輝く画家・レンブラントの栄光と、転落の謎に迫った映画『レンブラントの夜警』。本作の監督を務め、美術作家としても活躍するピーター・グリーナウェイに話を聞いた。

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『レンブラントの夜警』 -(C) Nightwatching B.V. 2007
『レンブラントの夜警』 -(C) Nightwatching B.V. 2007
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  • 『レンブラントの夜警』ピーター・グリーナウェイ監督
  • 『レンブラントの夜警』ピーター・グリーナウェイ監督
門外不出の名画「夜警」を描き、美術史に燦然と輝く画家・レンブラントの栄光と、転落の謎に迫った映画『レンブラントの夜警』。本作の監督を務め、美術作家としても活躍するピーター・グリーナウェイに話を聞いた。

レンブラントの人生を描く上で、監督は彼を「どこにでもいる普通の人」としてとらえていたという。
「まず、彼の育ったオランダは北ヨーロッパで初めての共和国です。レンブラントも共和国人でした。つまりそれは、選択する自由をもたされた国民であり、権力がシェアされているということ。レンブラントも、この国にいるとても普通の人だったのです。だから栄光の座に就く、スーパーな、神のような人物として描きたくはなかった。オランダ人は現実的でもありますし、彼の普通の人となりを描こうと思ったんです。この映画を作るにあたり、レンブラントについての書籍を300冊くらい入手し脚本を書き上げました」。

一方で監督は、レンブラントが魔法のように操る“光”に注目し、彼のなした数々の仕事に映画製作との共通点を見出す。
「レンブラントは光のマジシャンです。あの時代、家庭でもろうそくが使えるようになりました。弱い光ではありましたが、それは絵描きにとっては視覚の革命とさえ言えるでしょう。私は、“映画とは人工的な光をいかに操るか”が重要だと考えていますが、そうした意味でレンブラントは最初の映画監督だと思っています。もし彼が現代に生きていたなら、絶対にハイビジョンで映画を撮っていたでしょうね(笑)」。

本作のタイトルは、絵画の名前そのままに『Nightwatching(=夜警)』。監督がそこに込めた想いは強い。
「もちろん、『夜警』という特別な絵画が世界的な注目を集めているからですが、、このタイトルこそが彼に関連する全てのことにマッチするんです。文字通り“夜を見る”、“闇を見る”という行為、光と対象をなす闇に関係しているだけではありません。この映画は『見ること』そのものにも関係しています。“Nightwatching”はもちろん英語ですが、夜を見る者という意味です。それは物理的な行為のことではなく、例えば自分の心の闇を見つめることも指します。レンブラントの人生にはもちろんいくつかの悲劇がありました。彼の全ての子供たち、全ての女たち、妻たち、伴侶たちは彼より先に死んでしまいました。でもこういった不幸や悲しみがあっても、彼は西洋世界で最も重要な画家の一人になったのです。思えば、これは多くの場合アーティストが覚悟しなければならない要素と言えるのかもしれませんね。アーティストは、私生活での失望から得られるものがあるのかもしれません」。

「私はイメージを作る者」と自身を表する監督。その気持ちは本作にも大いに表れている。
「“絵はこういうもので、映画はこういうもの”という固定観念があるとするならば、私はそういうものを引き出して、新たに別のものを作り出したい。そういった思い込みが視覚的なものを豊かにすることはありませんから、私はそれを打破したいと常々考えています。テキストと映像をいかに融合させるか、映画はそれが可能なのですから、そこが一番重要だと思っています。私たちは夢を見るために映画を利用する必要があるのです。だから私が作りたいのは──もちろん誰もが理解できるようにはしますが──人工的な作品です。私がいつも興味を持つのはとてもバロック的な、極端な映画です。そして私はありとあらゆるテクノロジーと可能性を使い、素晴らしい脚本を基に映画を作ることを心がけています。この『レンブラントの夜警』を作るにあたり、私がレンブラントに敬意を表すためには、私自身が彼の表現方法を理解する必要がありました。彼は光で遊びました。映画もまた光で遊ぶものです。この映画を観れば、映画制作は絵画の制作とあまり離れたものではないことが分かるのです。私は、このような結びつきを繰り返してコンスタントに映画を作り続けています」。
《シネマカフェ編集部》

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