ビートルズに乗せて綴られる愛と苦悩に時代を超えて共感『アクロス・ザ・ユニバース』
故郷・リバプールに別れを告げ、まだ見ぬ父親を捜すべくアメリカにやって来た青年の名はジュード。そんな彼と出会い、やがて愛し合うようになるアメリカ人女性の名はルーシー。ビートルズの熱狂的なファンでなくとも、思わず微笑まされる名前の主人公のふたりが、恋を知り、友情に突き動かされ、60年代という時代の波に翻弄されつつも愛で打ち勝つ本作は、全編にビートルズ・ナンバーを配したミュージカルだ。ジュードとルーシーをはじめとする登場人物たちが、自身の心情をビートルズ・ナンバーの歌詞とメロディに託しながら、物語を紡いでいく。
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監督のジュリー・テイモアはビートルズを愛しているのだろうが、観る者はビートルズや60年代のアメリカに対してノスタルジックになる必要はない。兄の徴兵に心を痛め、反戦運動に傾倒していくルーシーの純真も、変貌する彼女を前に無力さを感じるジュードの憂鬱も、そんな彼らを丸ごと包み込む感動のクライマックスも、驚くほど今日的で、時代を超えた共感を呼ぶものとなっている。
ジュードとルーシーを演じるのは、『ラスベガスをぶっつぶせ』が記憶に新しいジム・スタージェスと、実力派の若手美人女優エヴァン・レイチェル・ウッド。みずみずしさが魅力のふたりが、ジュリー・テイモア節炸裂のカラフルでヴィヴィッドな映像世界に清涼感をもたらしている。