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ドイツの新鋭A・フェーリング 30歳のいまだからこそ演じられた、23歳のゲーテ

「事情により私は本日婚約しました」——。そう綴られた手紙によってもたらされたひとつの恋の終わりが、ドイツを代表する文豪を誕生させた。男の名はゲーテ。彼の名を一夜にしてヨーロッパ中に知らしめた小説「若きウェルテルの悩み」の誕生の裏にある、ゲーテの青春の日々を描いた映画『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』がまもなく公開となる。若き日のゲーテを演じたのは、ドイツ国内での活躍はもちろん、クエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』にも出演するなど国際的な注目を浴びる実力派の新鋭アレクサンダー・フェーリング。映画の公開を前に初めての来日を果たした彼に話を聞いた。

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『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』 アレクサンダー・フェーリング photo:Naoki Kurozu
『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』 アレクサンダー・フェーリング photo:Naoki Kurozu
  • 『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』 アレクサンダー・フェーリング photo:Naoki Kurozu
  • 『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』 アレクサンダー・フェーリング photo:Naoki Kurozu
  • 『ゲーテの恋 〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜 』 -(C) 2010 Senator Film Produktion GmbH / deutschfilm GmbH /Warner Bros. Entertainment GmbH / SevenPictures Film GmbH / Erfttal Film- und Fernsehproduktions GmbH & Co. KG / Goldkind Filmproduktion GmbH & Co. KG / herbX film Film
  • 『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』 アレクサンダー・フェーリング photo:Naoki Kurozu
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「事情により私は本日婚約しました」——。そう綴られた手紙によってもたらされたひとつの恋の終わりが、ドイツを代表する文豪を誕生させた。男の名はゲーテ。彼の名を一夜にしてヨーロッパ中に知らしめた小説「若きウェルテルの悩み」の誕生の裏にある、ゲーテの青春の日々を描いた映画『ゲーテの恋〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜』がまもなく公開となる。若き日のゲーテを演じたのは、ドイツ国内での活躍はもちろん、クエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』にも出演するなど国際的な注目を浴びる実力派の新鋭アレクサンダー・フェーリング。映画の公開を前に初めての来日を果たした彼に話を聞いた。

ゲーテと聞いてなかなか日本人にはピンと来ないが、アレクサンダー曰く「何でも知っているユニバーサルな天才というのがドイツ人の持っているイメージ」。今回、映画で描かれた若き日の恋や自らの才能について懊悩するような部分はあまり知られていないそう。
「演じる上で、映画を観る人が僕の表情からゲーテの内面を理解できるような芝居を心がけました。『若きウェルテルの悩み』もまさにそうだけど、彼は自分の作品の中で自身を表現する人。自分の内なるものを隠そうとはしないんです。だから僕も同じように内面を感じてもらえるように努めました。そこから、のちの偉大なる文豪・ゲーテの片鱗を感じてもらえたらと思います」。

「好奇心やエネルギー…意外に無防備に何でも行動に移してしまうところは僕自身に似ているところかもしれない」とアレクサンダー。特に役柄に彼自身が投影されている部分は?
「シャルロッテと(ゲーテの上司である)ケストナーが実は婚約していることを知ってしまうシーンなどは演じていてすごく感情が高ぶりました。自分の経験、ハートから来る感情で演じていましたね。恋愛のスタンス(笑)? 映画の中では勇猛果敢に何も考えずに進むようなところと、ゲーテもシャルロッテも互いに相手の手紙を待ち続けて不安になる様子が描かれていますが、僕自身も同じです。積極的にアタックすることもあるし、かといって相手に何かを強制できるものでもないので、じっくり待つこともときに必要だと思います。日によって、自由気ままに行動できるときもあれば、不安に駆られて躊躇してしまうこともあります。両方の要素を持ってるんですね」。

劇中のゲーテは23歳。演じたアレクサンダーは今年30歳。実に7歳の年の開きがあったが、今回の役柄に関してはその差がうまく作用したようだ。
「確かにいまふり返ってみて、もしも役柄と同じ23、4歳の頃にこの役を任されていたとしても、演じきることはできなかったと思います。演じるにあたって自分自身の経験を反映させた部分が大きかったので、まず人生経験が足りなかっただろうということ。そして何より俳優としての技術や経験の不足という点。演技の中での自由度というのは、何年もの積み重ねの中で培われていく。いまこの年齢だからこそ、23歳のゲーテを演じることができたと改めて思います」。

元々、10代前半の頃から劇団に所属していたというアレクサンダー。「舞台に立ち、注目を浴びることが好きだった」とふり返るが、大人へと成長していく中で職業としての俳優というものを意識し始め、自らの足りない部分を補うべくベルリン演劇大学へと進学。少しずつ頭角を現していく。

映画の中で父の反対に遭って詩人の夢をあきらめようとするゲーテに対し、シャルロッテは「自分を信じなさい」と叱咤する。才能と努力、そして挫折を自らの内に積み重ねていくが、同じ表現者としてアレクサンダーは挫折を何より成長の糧として大切にしてきたという。
「壁にぶち当たる瞬間は常にありますよ。そこで自分の実力や才能に疑いを抱いてしまうんです。でも、そういう気持ちになることが大切なんだと思います。そうした瞬間があるからこそ、自分と向き合い、自分自身に問いかける時間を持つことができるんです。自分に問いかけることがなくなれば新しいことは学べません。そして自己満足に陥ってしまうものです。だから落ち込むことも必要ですよ」。

冷静に、そして貪欲に——彼の仕事に対するそんな姿勢が垣間見える。2009年にはタランティーノの目にとまり『イングロリアス・バスターズ』に出演したことで新たなステージを切り拓いた。だが、当のアレクサンダーの口からは「ラッキーだったんです」という言葉が…。
「あの作品に数名のドイツ人俳優が出演することが決まって、オーディションに行ったんです。そしたらタランティーノ監督の“何か”に引っかかった。それが飛躍のきっかけになったことは間違いないですが、自分の中では本当に幸運なことだったと捉えてるんです。今後も海外の作品には出たいですね、ハリウッドだけでなくいろんな作品に。例えば、オーストリアのミヒャエル・ハネケ、香港のウォン・カーウァイ。だからと言って焦って何かするというのではなく、チャンスが来たときにいつでも受けられるように準備を整えていきたいです」。

では最後の質問。ゲーテはシャルロッテとの恋に破れ、「若きウェルテルの悩み」を刊行。史実ではその後、数十年の時を経て、60歳を超えてシャルロッテと再会を果たしたという。もしもアレクサンダーがかつて愛した人と時間をおいて再会を果たしたら、どんな言葉を交わしたい?
「難しいな…(笑)。相手に言ってほしいのは『元気そうね』という言葉かな。久々に会って相手がすっかり変わってるということもあるし、そうなるともう分かりあうことはできず『あれはもう過去の終わったことなんだ』と認識する場になるかもしれない。逆に長い時間を経て再会しても、まるで昨日まで会ってたかのように会話が弾むかもしれない。だから一口に言うのは難しいけど…僕なら『本当にあのときの君なの?』って語りかけるかな」。

愛の喜び、胸が張り裂けんばかりの失恋の痛みは偉大なる才能を花開かせたが、この天才の感情を表現し、追体験したアレクサンダーにはどんな新たな世界が待ち受けるのか? さらなる飛躍を期待したい。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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