山田孝之インタビュー 「夢はない。でも、芝居は楽しくて仕方ない」

2011年は6本の映画、3本のドラマに出演。この数字からも俳優・山田孝之がどれだけ求められている俳優かは明らかだ。俳優の道をスタートさせてから12年、傍から見れば一歩ずつ着実に夢を叶えているかのように映るが、当の本人は「いまも小さい頃も夢という夢はないんですよね。でも、芝居は楽しくて仕方ない。だからどんな役でもどんな作品でもやりたいんです」。少し意外なコメントだ。夢はないけれど芝居は楽しいという、彼のその正直な言葉は、未来ではなく“今現在”を精一杯に楽しんでいる、そんなふうにも受け取れる。そして、新たに手にした役柄は、スケートリンクで転んで頭を打ち、恋人の記憶だけをなくし、彼女だと名乗る3人の女性の間を行ったり来たりする独身男子・片山輝彦。彼がプロポーズするはずだった女性を探すこのラブ・ファンタジー『指輪をはめたい』を、山田孝之はどんなふうに楽しんだのだろうか──。

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『指輪をはめたい』 山田孝之 photo:Toru Hiraiwa
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2011年は6本の映画、3本のドラマに出演。この数字からも俳優・山田孝之がどれだけ求められている俳優かは明らかだ。俳優の道をスタートさせてから12年、傍から見れば一歩ずつ着実に夢を叶えているかのように映るが、当の本人は「いまも小さい頃も夢という夢はないんですよね。でも、芝居は楽しくて仕方ない。だからどんな役でもどんな作品でもやりたいんです」。少し意外なコメントだ。夢はないけれど芝居は楽しいという、彼のその正直な言葉は、未来ではなく“今現在”を精一杯に楽しんでいる、そんなふうにも受け取れる。そして、新たに手にした役柄は、スケートリンクで転んで頭を打ち、恋人の記憶だけをなくし、彼女だと名乗る3人の女性の間を行ったり来たりする独身男子・片山輝彦。彼がプロポーズするはずだった女性を探すこのラブ・ファンタジー『指輪をはめたい』を、山田孝之はどんなふうに楽しんだのだろうか──。

「本人的には不幸なのに、客観的に見るとすごく面白い」ツボ

ふわぁっとしたラブストーリーに棘と毒がこれでもかと絡み合う。そんな「切ないのに笑える感覚がたまらなく面白い」と声を弾ませる山田さん。輝彦はかなり気に入っている役柄のよう。もちろん男としての共感もあった。それは、自分の前に現れたツンデレな年上彼女、セクシーな彼女、守ってあげたくなる彼女、3人の女性に翻弄される輝彦を通じて考えたという男の結婚観。
「三股をしていなかったとしても、彼女がいてもいなくても、輝彦みたいに結婚するならきれいな女性がいいかな? かわいい女性かな? それとも…、そんな理由で結婚相手を選べるわけないのは分かっていても、浅はかでくだらないことを誰でも一度は考えると思うんですよね。しかも、輝彦は3人の彼女たちのことを本気で知ろうとして、月火水木金…夢のようなスケジュールで、順番に彼女たちと会って楽しむ。で、結局うまくいかなくて修羅場になる。あんな修羅場で本人的には不幸なのに、客観的に見るとすごく面白いんです。そういう面白さを映画としてみんなに提示して、笑ってもらいたいなって思ったんですよね」。真面目さゆえの笑い、悲しみゆえの笑いが山田さんのツボだった。そのツボを引き出したのは、本作が劇場長編2作目となる岩田ユキ監督。元々デザイナーだった経験を活かし、レトロでポップな世界観を生み出している。

女性監督の映画は初めてだという山田さん。オファーを受けたときは「女性監督は大変かな…」という先入観を抱いていたそう。その理由は? 「女性って(いざとなると)言うところはズバッと言うし、したたかだし、だから大変なのかなって。まして、映画業界で監督としてのポジションがあるということは、(実力と強さを)持っていないとできないことで。でも、実際に仕事をしてみたら男も女もなかった。まあ、男の人でもウジウジしている人もいますからね(笑)」と敬意を表し、三股をかけていても何故か愛されキャラの輝彦を演じるうえでは、監督のふわぁっとした雰囲気に助けられたと明かす。
「輝彦というキャラクターは、ちょっとでもシャキッとしてしまうと悪意を感じてしまうし、ファンタジックに見えなくなってしまうんです。とにかく力を抜いてふわぁっとした感じにしたくて。そのふわぁっと感が出せたのは監督のおかげですね。監督自身がふわぁっとした人で、しかも現場全体もそのふわぁっとした空気に飲み込まれていました。どんなに純粋なラブストーリーを撮っていても、現場はどこかリアルなものなんです。けれど、今回の現場はふわぁっとしていてすごくやりやすかった。あと、スケジュールがかなりハードで睡眠時間が少なくて、疲れてくると自然とぼーっとなる。ああ、このぼーっとした感じが輝彦の感じだなと、そのまま役に取り入れました」。どんな状況も演技の糧にしてしまうのはさすが。ちなみに、撮影の合間に聴いていたのはジャック・ジョンソンの曲。もちろん、ふわぁっと感に浸るためだ。

突然訪れた、「芝居が楽しい」という気持ち

そんなふわぁっとした輝彦をめぐって、後半は3人の彼女がはち合わせてしまう修羅場も登場する。「女優さんたちのアドレナリンが分泌されていたシーン」だと苦笑いしながらエピソードを楽しげに語る。「(3人の彼女がやりあっているとき)輝彦は指輪を探していたので、直接そのバトルを見ることはできなかったんですけど、シチュエーションとしてはかなり楽しかったですね。あんな修羅場、(現実では)なかなかないですから。ただ、演技とはいえ何度もできるシーンではないので、入念に打合せをしました。何人かはそのシーンでクランクアップだったので、女優3人は、遠慮なくやってください! 1発でOKもらいましょうね! って。そう言ってるのを傍で聞いていて、この人たち本当に遠慮なくやるんだろうな…と(笑)。みなさん、アドレナリンが分泌されて高騰としていたのは面白かったです」。

取材中、何度も「面白くて」、「楽しくて」という言葉を口にしていた山田さん。彼が心底、面白がり楽しむことが、ハマり役となる決め手なのかもしれない。そして「芝居が楽しい」と実感した瞬間は、いまから約11年前に突然訪れたと昔の記憶を呼びおこす。
「17歳のとき、NHKの朝ドラ(「ちゅらさん」)をやっていたときですね。NHKの廊下を西口に向かって歩いていて、ふと、ああ…芝居って楽しいかもって思ったんです。その日の撮影がどうだったとか、何かやり甲斐を感じた出来事があったのか、それとも『クソッやってやる!』と思ったのか、どういう状況だったのかは分からないけれど、芝居自体を楽しいと思ったのはそのときからですね」。

「この役を山田孝之にやらせたら…って、すごく幸せな言葉」

こうも言う。「自分自身は何も求めていない。待っているわけでもない。ただ、何でもやりたいんですよね」と。繊細な役、ハードな役、エキセントリックな役、どんな役にでも染まり、次々とイメージを覆しては観客の期待をいい意味で裏切ってきた山田さんは、そのイメージという言葉ですらも「色々な作品に出させてもらっているけれど、僕のすべての出演作をすべての人が観るわけじゃない。人それぞれ印象に残る作品も違う。イメージは人が作るものだと思っているから」と、はね除ける。何でもやりたいけれど、何色にも染まりたくないと言っているようでもあり…。だからこそ観客は、いったい次はどんな役で驚かせてくれるのかと期待をしてしまうのだ。それは、作り手も同じ。
「どの作品だったのかは覚えていないけれど、あるプロデューサーに、何故この役を僕にふってくれたんですか? って聞いたら、『キャスティングを決めるとき、こういう役はこういう人というのがあるけれど、そうではなくて、この役を山田孝之にやらせたらどんなふうにやってくれるんだろうって、やらせてみたくなる(俳優な)んだ』と言ってもらえて。すごく嬉しかったんですよね。この役を山田孝之にやらせたら…って、すごく幸せな言葉」。

好きこそ物の上手なれ。山田孝之が芝居を好きでいる限り、私たちは彼をスクリーンで見続けることができるはず。そして、驚くはず。というわけで、まずは『指輪をはめたい』の愛すべき三股独身男・輝彦をスクリーンで。


Hairmake:ISINO(ROOSTER)/stylist:Kayoko Kubota
《photo:Toru Hiraiwa / text:Rie Shintani》

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