西島秀俊×森山未來 『セイジ』で共演、役柄へとたどり着く深遠なる旅路

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『セイジ−陸の魚−』西島秀俊×森山未來 photo:Ryo Uchida
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俳優の伊勢谷友介が8年ぶり2度目のメガホンを取った『セイジ−陸の魚−』。辻内智貴の同名小説を映画化した本作に西島秀俊、森山未來という人気・実力を兼ね備えた2人がW主演で顔を揃えた。映画ファンならば期待せずにはいられない監督×キャストの化学反応は事実、観客の想像をはるかに超えるものとなった。伊勢谷監督からの熱烈オファーに「本当に行動力がある人」(西島さん)、「他人の巻き込み方がすごいんです(笑)」(森山さん)と応えた2人は、いかに本作と向き合い、伊勢谷ワールドの住人となりえたのか。

学生最後の夏休みを利用し、あてのない自転車旅行に出かけた“僕”(森山さん)は、山道で軽トラックと衝突。手当てを受けるため連れて行かれたドライブイン・HOUSE475には、雇われ店主のセイジ(西島さん)の姿があった。物静かだが、発する言葉は不思議な力を持ち、ドライブインに集う常連客からも慕われる存在だ。

「普通の人とは違った視点で生きる人間を演じてみたかった。セイジは僕らより、はるかにいろんなものを達観している人物だと思います」と西島さん。あえて演じる役柄に対し、理解や共感できる要素は求めなかった。「例えば、僕は殺人犯じゃないです(笑)。でも演じることはできる。その人物の奥底に潜む“何か”に触れてみたいという気持ちがあれば、演じられると思います」。セイジという人物に関しては、「特に彼が抱える心の闇を捕まえたかった。いや、捕まえられるという確信がありました。根拠はないんですけどね(笑)」。根拠なき確信。これぞ俳優にしか分かりえない、芝居の不可思議な魅力だ。

実は西島さん、本作撮影の前後にアミール・ナデリ監督の『CUT』にも出演していた。暴力にさらされながら、自らの映画愛を狂おしいほどに貫く映画監督・秀二を演じ、肉体的にも精神的にも追い詰められた状態だったという。「本来なら、絶対に時間を空けて取り組むべきなんですけど、今回は伊勢谷監督も『連続でやったほうがプラスなんじゃないか』と言ってくれて。設定は全然違いますが、何か自分よりも大きなもの、例えば罪といったものを背負ってしまった点はセイジも秀二も似ているかもしれない。確かに『CUT』で得た狂気のエネルギーを、そのまま『セイジ』に持ってきて、違う形で広げることができたと思います」(西島さん)。

一方、森山さんが演じる“僕”は、セイジと彼を取り巻く人々や環境を見つめる傍観者という立ち位置。演技にもまた、共演者との微妙な距離感が求められた。「“僕”自身、セイジが抱える背景は知らないし、ちゃんと向き合うこともしない。それに斜に構えた性格だから、セイジさんに確信的なことを言われると、しゃくに障るというか、腑(ふ)に落ちない…でも、やっぱり気になっちゃうというグルグルした感じですね」(森山さん)。そこでたどり着いた答えは「もう、ただただセイジさんや周りの人たちに振り回されればいいやって」という達観。単なる師弟の関係性で、セイジを慕うような“僕”にはしたくなかったという。

もちろん“僕”はただ振り回されるだけの存在ではない。森山さんは“僕”に近づく役作りの一環として、東京からロケ地となった栃木県・日光まで役柄そのままに一人自転車を走らせ、現場入りした。「まあ、そういうのはだいたい悪ノリですけどね」と森山さん(すぐさま、西島さんが「そんなことないでしょ」とツッコミを入れた)。「確かに自転車を走らせながら、“僕”を少しずつ作り上げた部分はありますね。正直、現場に行って“スイッチポン”で役に入れるタイプじゃないので、俳優である僕にとっては、必要なことだったと思います」。役柄へたどり着く旅路は、演じる俳優にとって千差万別。「正解はないんです」という森山さんの言葉が印象的だ。

果たして伊勢谷ワールドの住人となった西島さんと森山さん。シンプルでどこか牧歌的な空気が流れる前半から一転、凄惨な事件によって、すべての歯車が狂い始めると、2人の演技はより深遠に、そして予想不可能なベクトルへと歩み始める。傷ついた魂の救済を目指すセイジ、もはや傍観者ではいられない“僕”が出した答えとは? 決して言葉では説明できない決断が、俳優2人の演技によってのみスクリーンに結実する瞬間は、映画ファンに苦しくも至福の喜びを与えるはずだ。

《photo / text:Ryo Uchida》

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