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【美的アジア】『あなた、その川を渡らないで』チン・モヨン監督が語る、愛することのヒントとは?

現在公開中の『あなた、その川を渡らないで』の2人が羨ましい!! 「理想の夫婦」、「憧れの夫婦」と誰もが思うであろうこのふたりを、一番近くで見続け、撮り続けてきたチン・モヨン監督はどのように感じたのか。当時のふたりのこと、作品についてお聞きしました。

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『あなた、その川を渡らないで』(C) 2014 ARGUS FILM ALL RIGHTS RESERVED.
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  • 『あなた、その川を渡らないで』奥原しんこによるポスタービジュアル(C) 2014 ARGUS FILM ALL RIGHTS RESERVED.
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――作品の中のおばあちゃんはなんだかとてもお茶目で、おじいさんはそんなおばあちゃんを優しく見守っているという構図がとても素敵です。

監督:これは笑い話なんですど、撮影が終了して最後に「私を末の息子にして下さい」とおばあさんに言ったところ、「息子はダメ。息子はあまり親孝行をしないから」と言われました(笑)。その代わり、私の妻をすごく気に入ってくれて、「彼女を私の娘にするから、あなたは娘婿になりなさい」と言ってくれました。おばあさんもおじいさんも撮影期間中、本当の息子のように優しく接してくれました。今も久しぶりにおばあさんと再会すると、抱きしめてくれます。そして泣かれるほど喜んでくれます。

――それだけ密な関係を作ってこられたからこそ、おじいさんとおばあさんは監督の前で本当に日常の姿を見せられているのでしょうね。

監督:私自身は監督なのでカメラを持っている限り、一個人としてふたりを見ることは出来ませんでした。ただ、私がカメラを持っていない時に見た夫婦の姿と、カメラを通して見る夫婦の姿はまったく同じでした。常にふたりはいつもと同じ様子で、カメラがあろうがなかろうが同じだったということです。

――おじいさんの看病をしながら眠ってしまったおばあちゃんの頭を、おじいさんがそっとなでる、というシーンで完全に涙腺が崩壊してしまったのですが、監督自身は、おふたりから何を得られましたか?

監督:私自身も、彼らの人生を通じて「愛というものに関するヒントを得たい」という気持ちがあったので、撮影しながらもふたりの様子をつぶさに観察していました。ご夫婦はそれをひとつひとつ余さず私に見せてくれました。そしてわかったのは、「愛はすごい」、とかそういったものではなく、この老夫婦にとっては日常のとても些細なこと。その些細なことひとつひとつに真心が込められていたということでした。それがある意味ではこのふたりの凄かったところだと思います。

――「美的アジア」の読者は結婚を考える年代でもあります。観客にどのようにこの作品を見て欲しいと思われますか?

監督:私は愛の専門家ではないですが…(笑)、最近は100歳時代とよく言われていますけど、人間は生まれてから死ぬまでひとりで人生を過ごす時間よりも、誰かと一緒に過ごす時間の方が非常に長いというふうに思います。この老夫婦の場合は76年間をひとりではなくふたりで暮らしてきたのですが、どうせ一緒に長く暮らすなら、長ければ長いほど幸せでなくては暮らせないというふうに思います。おふたりの間でも色々なことがかつてはあったんでしょうけれども、やはり愛の中で、愛するという行為の中でふたりが生きていたということを感じていただければと思います。もし愛がない中でふたりが生きていたとしたら、ふたりで暮らしていたとしたら、それは非常に不幸なことになってしまうと思います。

――「愛」ってなにげない光の中に、実は大きく存在するものなのかもしれないですね。

監督:よく「私はこの人にこれだけ愛されて幸せ」というような言い方をされる方がいますが、本当の幸せというのは「愛されたから幸せというのではなく、自分が愛したことによって幸せになるもの」じゃないかとおふたりを見て改めて感じました。人を愛するということは、自分自身を尊重するということにもなってくると思います。お互いが愛し合っていい関係を作るためには、愛することによって自分自身を尊重し、お互いの思いやりを維持する、これが本当の「愛するという行為」なのだと思います。なんだか哲学的になってきましたよね(笑)。私が好きな詩の中で、「我々は偉大なことを成し遂げるのではなくて、小さなことを最後まで続けていく、それが人生というものなのだ」というような趣旨の詩があるんですけども、このふたりがまさにそうで、熱烈な愛を貫き通したのではなく、日々の小さな愛の積み重ねが結局は長い愛に繋がったというふうに思います。

――この作品を観ることで結婚していない人もすごくいいヒントをもらえそうですね。

監督:ぜひ、どんどん結婚してお子さんが生まれるようになるといいですね(笑)。

――ちなみに、この作品では、自分の祖父母のことを重ねて観てしまったりもしたのですが、監督はおじいさんやおばあさんとの思い出はありますか。

監督:実はですね、母方の祖父が唯一私が10歳の時まで生きていたんですけど、他の方は私が生まれる前に亡くなっているんです。私にとっての祖父との思い出はよく私の家に遊びに来て手土産に必ず同じキャンディを持ってきていたことです。キャンディの中にピーナッツが入っているもの。それが鮮明に記憶に残っています。しかもこの作品のおじいさんのように昔の韓国の伝統衣装を着ていたんです。この映画も、夫婦の愛を描いているわけですけど、結局いまおっしゃられたように、家族に対する想いというものを改めて思い起こさせるような作品だとも思っています。おじいさん、おばあさん、もしくは年老いた両親を思い出す人もいるでしょうし、結婚した子供を持つ親御さんが観れば「あなた達もこの夫婦のように末永く幸せになって欲しい」と思う方もいらっしゃるでしょう。実際に結婚したお子さんたちにこの映画を勧めてくださった観客の方もいらっしゃったそうです。あらめて家族について考えさせる、そういった作品にもなったのではと思います。
《text:Tomomi Kimura》

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